第83話 今度こそは・・・
『三人いっぺんに産みますの?
さすがに心配ですわね。』
出産経験が有ると言っても前世の話しだ。
今世では初産だからなぁ~
いきなり三つ子はきついねぇ。
「違うよぉ~四人だよぉ~」
『え?』
「え?」
え?
『今なんと?』
「ちゃんと説明しなさい!ハニー」
「アリーゼとアーミアとサラーラと
あともう一人いるよ。」
マジかっ!四つ子なのかっ!
こりゃ大変だ!
未熟児出産になるな~
保育器が必要だな!
「サーシア、もしかして。」
『えぇ、あの子ですわ・・・』
そうか・・・
システムはそれを選択したのか・・・
あの子をもう一度・・・
リコアリーゼとサラアーミアの間に
実はもう一人生まれてたんだ。
でも心臓に疾患があってね。
産まれて直ぐに死んでしまった。
外の世界に耐えられなかったんだよ。
『ラナエミール・・・あの子が・・・』
「戻って来たんですね。」
『えぇ、今度こそ・・・
今度こそちゃんと産んであげませんとね。』
産声も上げず、ぐったりと力なく。
そっと抱いた胸元で小さく燃え尽きた命に
ラナエミールと名付けた。
サーシアは覚えて無いけれど。
極たまに、うわごとに言うんだよ。
その名を呼ぶんだ。
辛そうに悲し気な声で。
そんな時はルルナが軽く揺すって止める。
怖くて放って置けないんだ。
追い駆けて行ってしまいそうで。
起きてしまったら、怖い夢でもみたのか?
と尋ねてみる。
いつも覚えていないと答えが返って来る。
それを聞いてほっとするんだ。
そんな夢は思い出さなくてよいと。
***
厳戒態勢が敷かれた。
四つ子出産対策本部が設置され、
ルルナをリーダーとした分娩チームが
結成されたんだ。
ルルベロ特性の保育器が具象化され、
温度、湿度、換気、除菌、等々。
調整は完璧だよ。
ベテランの産婆さんも五人態勢で臨む。
万が一に備えて帝王切開も視野に入れる。
執刀医はミサが担当する。
刃物の類はミサに任せて於けば安心だね。
多胎児、四つ子ともなれば早産になる。
時期も読み辛いんだ。
だから毎日が臨戦状態だね。
さぁ!いつでも良いよっ!サーシア!
『あ~~~、シャケが食べたいですわぁ~』
「シャケですか?」
『えぇ、トキシラズの干物~』
「そんなの有りませんよ~」
緊張感ねぇ~なぁ~
まぁ、のんびりしてるくらいの方が良いけど
「サケ科の魚なら北の大陸に居たぜ。」
「それは確かですか?モモ。」
「あぁ、イワンが釣り上げたよ。」
あぁ、あれか!
イトウモドキだな。
あれ釣り上げたって言うのか?
「すぐに獲って来てください。」
「え?今から?」
「もちろんです。」
「えぇ~~~言わなきゃ良かった~」
ルルナも言い出したら引かないよ?
あきらめて行ってきなさいよ。
「しゃぁ~ねぇ~なぁ~
ほら!行くぞイワン!」
「え?僕も?」
「あたりめぇ~だ!てめぇのカミさんが
食いたがってんだからな!」
『頑張って下さいましね、イワン。』
「う、うん、じゃぁ行って来るよ。」
「私がゲートを開きますね。」
サーシアは今大事な時期だから魔法は
控えてるのよ。
結構、精神的にも肉体的にも疲れるのね。
高度なやつなら特にね。
ルルナがゲートを開く。
過去の記憶データから検索した座標は、
例の鍾乳洞祭壇の入り口だね。
前世の時の話しなんだけどね。
アリーゼが生まれたときにね、
ちょっとした事情があってさ。
周りに内緒でアリーゼの精霊契約をしようと
当時、誰も住んでなかった北極圏に在る
洞窟の奥の祭壇を利用したのよ。
じゃぁ、いってらっしゃぁ~い!




