第78話 ダモンの女
あちらこちらの集落から駆け付けた
縁戚者は60名ほどになった。
みんな我先にと自己紹介を繰り広げる。
「双子にしては似てないわね。
イリュパーにも似てないし。」
「はぁ、そうですか?」
「聖女って魔法が使えるんでしょ?
なんかやってみてよ。」
「いや、それはまだ先の話しですので。」
無遠慮に話し掛けて来たのはイリュパーの
姉達だ。
伯母にあたる姉妹だ。
「なぁ~んだ、使えないの?
先の話しっていつなのよ?」
「聖地へ行って復活の儀式をします。
魔法が使えるのはそれからです。」
「ふぅ~ん、そうなのねぇ。」
「ねぇ!魔法で宝石とか出せるの?」
「いいえ、そーゆーのは出来ません。」
「なぁ~んだぁ~、出来ないの~?」
いいかげんルルナも、うんざりしてるね。
サーシアもつまらなそうだ。
宝石を出せるかだって?
もちろん出せるよぉ~
ただし人型精霊と契約が出来たらね。
まぁ君達には無理だね。
そんな器じゃぁ無いよ。
それにさぁ、魔法で宝石を出したら
宝石は無価値になるよ?
貨幣としての値打ちが無くなって
経済が崩壊するよ?
だからタブーなんだ。
出来るけどやらない。
出来るとも言わない。
「どこ行ってたの!こっちへ来なさい!」
あっちこっちでつまみ食いしてた男を
伯母が手招きする。
「息子を紹介するわねユーリパー。
ほら!早く来なさい!」
はたち前くらいかな?
食欲に比例した体形だな~
「次男のグジェラちゃんよ!男前でしょ?」
「えぇ、そうですね。」
『おら~♪グジェラだどぉ~♪
うっひゃひゃひゃひゃ~~~♪』
「ぶわっはははははははははは!」
不意を突かれて大爆笑してしまった~!
油断大敵~~~
ギヤマン族はネタの宝庫だな!
「何がおかしいのっ!」
「あっ、すみません、ちょっとその・・・」
「グジェラちゃんは、あなたの夫になるのよ!
失礼はゆるさないわよ!」
「え?」
『なんですって?』
「おいおい、まだ決まったわけじゃ無いぞ。
タマドンも候補なんだからな。」
「わかってるわ兄様、なんなら共有しても
いいんじゃないの?」
「最初の子はうちで作るぞ。」
「えぇ、それでいいわよ。」
「あの、何の話ですか?」
「あら?父様から聞いて無いの?」
「タマドンかグジェラのどちらかと
結婚する事になったんだよ。」
「そんな話は聞いてませんよ!」
「そうか?でも、もう決まった事だから。」
「父様の決定は絶対なのよ。」
『却下ですわ~』
「お断りします!」
「それは許され無いよ。」
「家長の決定に逆らうって言うの?
なんて我儘な娘なの!
躾がなってないわね!
まぁ、あのイリュパーに育てられたから
常識知らずも仕方が無いわねぇ。
でも、これからは通用しないわよ!」
それまではルルナの後ろで様子を見ていた
サーシアが、叔母の前に進み出た。
あ~怒ってる怒ってる~
『撤回なさい。』
「ん?何よこの子、何?その顔は?
言いたい事があるなら言いなさいよ。」
うわぁ~喋れないの知ってるくせにぃ~
意地悪だなぁ~
『お母様はダモンの棟梁ですの。
お母様を侮辱する事は、ダモンを侮辱する
事ですの。
今直ぐに撤回すれば、一度だけ許して
差しあげますわ。』
一応は親戚だからねぇ。
赤の他人だったら、もう死んでるよ?
サーシアの前でダモンを侮辱して、
無事で済んだ者なんか居ないよ?
「え~~~?聞こえ無~い。何~?」
耳に手を当てて、わざとらしく前かがみ。
もう、知~らな~い。
「どうした?何を揉めているのじゃ?」
おっ!
一触即発の所でランバーンが割って入ったね。
命拾いしたね!
「父様!この娘が家長の命に従わ無いと
言い出したのよ!」
「ん?どーゆー事だ?」
「おじい様、結婚の話はお断りします。」
「それは、ならん。もう決めた事じゃ。」
「私には恋人が居ます。」
「別れればよかろう、問題ない。」
『妊娠してるって言いなさいな。』
「妊娠なんかしてませんよ、まだ処女です!」
『嘘も小便ですわよ。』
「方便です!」
「何をコソコソ言っておる。」
「わ、私、妊娠してるんです!」
「それは・・・まぁ良い。
産まれたばかりの赤子が死ぬ事は良くある。
ギヤマンの子は丈夫に育つぞ!安心しろ!」
価値観~~~
大昔のクソ田舎の価値観~~~
それが当たり前なんだろうなぁ~
それにしても、腹の子は殺すって言ってる。
法律が無いってこーゆー事なんだよね~
道徳は自然発生なんかしないのよん!
ぶちっ!
『キレましたわよ!全員~集合~!』
「ガオォォォ~~~!」
「シャァァァ~~~!」
「グルルルルルル~~~!」
「ワォ~~~~~~~ン!」
その他諸々~~~~~~!
十二支達を呼び出した!
『直ちに制圧なさい!手加減無用!』
ダモンの女を怒らせた~~~




