第75話 精霊ロザリン
雨季に入り暫くは天候不順で海が荒れる。
無理をせずに天気の回復を待とうじゃないか。
時間もたっぷりある事だから、
ティモちゃんとリリカの今後について、
どうすれば夫婦としての生活が成り立つか?
話し合いが持たれたんだ。
議長はサーシア、副議長にはルルナ。
書記はルルベロ、司会進行はハニーが務める。
「それでは始めたいと思いま~す!
では初めにティモーヤス、リリカ。
貴方達の意見を述べなさ~い!」
「はい!あ、あの、ね、寝る時は、あの、
その、お、お、お、おな、おなじ・・・」
『はぁ~?聞こえませんわよぉ~
なんですってぇ~?
はっきり言いなさいぁ~い!』
「サーシア、ヤジは駄目ですよ。」
『はぁ~い、ごめんなさぁ~い。』
完全に面白がってるな・・・
「ティモーヤス、大事な話しですからね。
ちゃんと言いなさい。」
「はい!一緒のベッドで寝たいです!
あと子供も欲しいです!」
だよね~
もう夫婦だもんね~
でもそれが難しいんだよね~
基本的に魚人は水棲動物だからね。
陸上での生活には無理があるんだよ。
まず呼吸がね、長時間陸上にいると
酸欠になる。
それから皮膚がね、乾燥に弱いんだよ。
それ以上に難しいのは子供だね。
異種交配になるんだけどさ。
染色体の数とか、種類とかの差異は
ある程度の範囲で許容されるんだ。
だから受精は可能だろうと思うんだよね。
問題は正常に細胞分裂して器官形成が
出来るかどうか?
だよね。
一番の問題は呼吸器官の形成だなぁ~
肺の代わりにラビリンス器官が有るんだもん。
中途半端なものだったら出産直後に窒息死
しちゃうよ。
要するにどちらかの遺伝子を変異させるしか
解決策が無いって事ね。
ティモちゃんを人間化させるか、リリカを
魚人化させるかの二択。
可能性が高いのはティモちゃんの人間化。
ラビリンス器官と皮膚を強化して、
長期の陸上生活が出来る様にする。
生殖細胞にその情報をインプットして、
子供に形質が受け継がれる様にする。
理屈はそうなんだけど、具体的にどうする?
「ロザリンを召喚したら良いんじゃなぁい?」
『誰ですの?それ』
「リチャードの契約精霊だった子なの。」
「では研究内容も把握しているでしょうね。」
「ゲライス家の魔法科学はロザリンが面倒を
見てたからねぇ。」
人型精霊ロザリン。
そのモデルは
女性物理学者ロザリンド・フランクリン。
DNAが二重らせん構造で有る事に、
最初に気が付いたのは彼女なんだ。
ところが同僚の研究者と仲が悪くてね。
その同僚が別の研究者と組んで彼女を
追い出したんだよ。
そして彼女抜きで研究成果を発表したんだ。
科学的に証明して、ちゃんとした論文に
まとめたのは彼らだから、盗んだわけでは
ないんだけどね。
横取りしたのは事実だよね。
当時、彼女はガンを患って居てね。
かつての同僚達がDNA構造の解明で
ノーベル賞を受賞した時。
彼女は、すでに故人となっていたんだよ。
『じゃぁすぐに呼び出しなさいな。』
「システムに申請しないと駄目なのよぉ。」
『じゃぁすぐに申請なさいな。』
「モスピの祭壇で手続きするのよぉ。」
『じゃぁすぐに行きなさいな。』
さっさと行けよ、ルルベロ。
サーシアは気が短いんだから~
ほら、眉間に皺が~
「い、行ってきまぁ~す!」
***
「まぁ!貴方がサーシアね!すごいわ!
本物だわ!本物の大聖女エルサーシアだわ!
きゃぁ~~~!素敵~~~!
会いたかったの~!
私が初めて召喚されたのって、
貴方が死んでから千年後だったのよ~
聖女の数はだいぶ増えてたんだけどね、
その分、みんな小粒でさぁ~
なんか迫力が無いってゆーかぁ、
お行儀の良い優等生ばっかりでさぁ~
やっぱり冒険しないと駄目よね?
進歩ってその先にあるのよ~!」
『なんかヤバイのが来ましたわね・・・』




