第69話 人魚の涙
スタート地点かつゴールの巨大筏の上で
相変わらず偉そうにでぇ~んと座っている。
「のんびりしていて大丈夫なんですか?」
『えぇ、心配はありませんわ。』
「カリトンを信頼してるんですね。」
『そんなわけありませんわよ。
この間知り合ったばかりですのに。』
「え?」
そーだよな~
身内と認めた者以外は基本的に信用しない。
裏切られても平気だし、利用するのも躊躇は
しないよねサーシアは。
「それにしては随分と余裕ですねぇ。」
『秘策がありますのよ。』
でたぁ~どうせロクでもないぞぉ~
「どんな秘策ですか?サーシア。」
『そうね、ルルナには教えてあげますわ!』
そー言って巾着袋の中をそっと見せる。
中には超特大の真珠貝がひとつ・・・
「それは?」
『昨日の内にオージーちゃんに採って来て
貰ったのよ。』
インチキじゃねぇ~かぁ~!
しかもそのサイズは例の禁漁区の~
荒らしたのかぁ~
監視が厳しくなったのはお前のせいかぁ~
ゴメンよぉ~ピピ~~~
「見事な貝ですけど、ちゃんと真珠が
入ってるかどうか分かりませんよ?」
『大丈夫!抜かりはありませんわよ!
最高級の大玉を仕込んでありますのよ!』
とことん汚ねぇ~
勝つためなら手段を選ばないなぁ。
逞しいよお前は。
「そんな真珠よく在りましたねぇ。
それもオージーちゃんが見つけたんですか?」
『いいえ、魔子から借りたのよ。』
「か、返してね!絶対、絶対、返してね!
とっても大切なの!
お、お父様から貰った・・・」
『ちゃんと返しますわよ、心配症ねぇ』
うわぁ~それ魔子のペンダントに嵌ってた
「人魚の涙」じゃんかよぉ!
なんて事するんだ、お前は!ヒトデナシ!
魔法少女のシンボルアイテムをインチキの
道具に使うなんて!
よくもそんな事が出来るな!
そりゃ~ただの設定に過ぎないって
言ってしまえば、それまでなんだけどさ。
精霊にとっては、その設定が全てなんだよね。
あいでんてて~なんだよ。
れぞんで~とるなんだよ。
それを・・・それをお前は・・・
まぁ・・・今更か・・・
真性サイコパスだもんな・・・
そうなっちゃったのも原因が在るしな・・・
「あれ?戻って来ましたよ?ピピですね。」
『まぁ!随分と早いですわねぇ。
まだ昼過ぎですわよ?』
「お願い!助けて!カリトンを助けてっ!」
***
「何て事だ・・・ホテイドンに・・・」
話しを聞いて長老達は動揺した。
最近でこそ膠着状態にあるけれど、かつては
血で血を洗う抗争が続いていたんだ。
争いに疲れ果てて話し合いが持たれ、
互いの領域に入らないと言う取り決めが
されているんだよ。
数十年ぶりに、それが破られた。
大事件だ。
「早く!早くしないとカリトンが!」
「残念じゃが諦めろピピ。」
「そんな!なんで!」
「ここで動いたら、また抗争になる。
また沢山の血が流れる。
カリトンの事は可哀そうじゃが・・・」
「カリトンを見捨てるの?嫌よ!嫌ぁ!」
「こ、これ!どこへ行く!」
「カ!カリトンの所よ!私だけでも!」
「お前が行ってなんになる!死ぬだけじゃ!」
「死んでもいい!カリトンと一緒に死ぬ!」
「ええ加減にせんかっ!」
その時!
すっくと立ちあがったサーシア!
おっ!動くのか?
義を見てせざるは勇無きなり!
悲に哀れを見ぬは情無し!
『オージーちゃん!タツノコちゃん!』
「グオォ~~~!」
「ピコ~ンピコ~ン!」
『カリトンを救出なさい!大至急よ!』
「ガォ~~~!」
「ピコ~ン!」
やる時はやるな!
見直したぞっサーシア!
『魔子!あなたも行きなさい!』
「いえす!まむ!」
『これを持って行きなさいな。
必要でしょう?』
人魚の涙を返して貰ったよ!
良かったね魔子!
『速やかに制圧しなさい!』
「いえす!まむ!」
『天地を貫く真理は海の底であろうとも
決して例外では無い事を示すのですよ!』
「いえす!まむ!」
いいぞっ!サーシア!
カッコいい~~~
「ピピ、安心しなさい。
サーシアがカリトンを助けて呉れますよ。」
「あぁ・・・ルルナ様・・・サーシア様。
どうか・・・どうか・・・カリトンを・・・」
大丈夫だよ、ピピ。
必ず助けるからね!
『ホテイだかホタテだか知りませんけれど、
私の邪魔をしたらどうなるか、
思い知らせて差し上げますわ!』
ただの腹いせかよっ!
感動を返せっ!
馬鹿野郎っ!
***
「ほう、聖女とタマクラ~ベをのぅ。」
「そうだ!」
「それで我らの領域で密漁したのか。」
「そ、それは・・・」
ホテイドンの族長から取り調べを受けている。
違うとは言えないよね、残念ながら。
可哀そうに、ボロボロじゃないか・・・
相当やられたな。
「不可侵の取り決めは知っている筈だな。」
「あぁ・・・」
「ならば殺されても文句は無いな。」
「・・・好きにしろ、でも俺だけでいいだろ!
ピピの事は見逃してくれ。」
「それは出来んな、引き渡しを要求する。」
「そんなに殺したいのかっ!」
「殺したく無いからだ。」
「何を言ってるんだ!」
「分からんか?」
「分かるもんかよ!」
「今回の件で甘い対応をすれば、また次が
出て来るだろう。
その先は再び抗争となる。」
「そんな事は---」
「無いと言い切れるのか?」
「・・・」
「戒めは時と共に薄れる。心に緩みが出る。
今回が良い例だ。」
「・・・」
「お前達の命を以って新たな戒めとする。」




