第67話 ピピ
カリトンはピピが苦手だ。
嫌いでは無いけど、とにかくウルサイ!
あーしろこーしろと要求してくる。
いちいちマウントしてくる。
「ほら!私の言った通りじゃないの!」
とか
「なんで私に言わないの?」
とか
「やっぱり私が居無いとダメねっ!」
とかとか
いい加減うんざりする!
「うるさいな!俺には俺の考えがあるんだ!
放っといてくれよ!」
なんて言おうもんなら大変な事になる。
「あんたの考えってなによ!
言ってごらんなさいよ!
どうせロクなもんじゃないんだから!
いつだって失敗ばっかじゃん!
私が居るからなんとか成ってるんじゃんか!
こないだだってあーたらこーたらどーたら!」
四百倍くらいになって返って来る・・・
確かにそーゆー場合が多いけどね。
カリトンはちょっと考えの足りない所が
有るからねぇ。
周りを良く見ないで行動するから、
何度も危ない目に遭ってるんだ。
でもそんなカリトンがピピは大好きだ!
まだちっちゃい幼魚だったときにね、
ヤンキーウツボに絡まれてる所を
カリトンに助けて貰ったんだよね。
自分を逃がす為にボコボコにされてさぁ。
泣きながら大人を呼んで来たんだけどね。
もうボロボロになっててね。
それでも「タイマンなら負けねぇ!」
とか強がり言っちゃってさ。
右のエラヒレが半分千切れてるのは、
そのとき出来た傷なんだよ。
「男の勲章だっ!」ってね。
ニカッ!っと笑って見せるんだよ。
ホレちゃうよねぇ~
でも基本は馬鹿だからハラハラするんだ。
危なっかしくて見てられない。
ついつい口を出してしまうんだよ。
ピピも気の強い子だからさぁ~
一歩も引かないんだよねぇ~
だからいっつもケンカばっかりしてるんだ。
「どんな子かなぁ~?聖女ってくらだから
やっぱり奇麗なんだろうなぁ~
楽しみだなぁ~」
「ふんっ!どうせ人間でしょう?
ヒレもウロコも無いんだから大した事は
無いんじゃないの?」
魚人にとってはヒレの立派さや、ウロコの
ツヤとかも美しさの大事な基準だ。
「人間には人間の良さがあるんだよ。」
「ヘンなの~私には解んないな~」
で!
実際に見てびっくり!
なんとまぁ~美しい~
ルルナは太陽の様に輝いているし、
サーシアは星のキラメキの様だ!
ヒレもウロコも関係ないよぉ~
見惚れちゃうよぉ~
そっと磯の岩陰から覗き見してたピピ。
めっちゃ焦った~
ヤバイ~~~
カリトンが盗られる~~~
「私も行くから!」
***
イリュパーが使った大筏は、分解されて
大事に村で保管されていた。
組み上げるには数日かかるな。
「海で釣るのも久しぶりだなぁ~」
『足元に気を付けなさいなイワン。』
「浜で待っててねサーシア。
岩場は危ないからね。」
『えぇ、そう致しますわ。
もうその辺で良いのではなくて?
その潮溜まりにしなさいな。
ほら!滑りますわよ!
あぁ~もう!ハラハラしますわね!
モモ!ルルベロ!ミサ!
イワンに付いていなさい!』
「そんなに心配しなくても大丈夫だって~」
「過保護過ぎるよぉ。」
「信じて待つのも愛でござるわ。」
すっかりギョエモン風が気に入ったミサ。
『いいから行きなさい!』
「わーったよ~」
「はいはい。」
「承知したわ。」
「わざわざ釣らなくても魚なら俺が
獲ってやるぞ?」
「馬鹿ね、邪魔しないの。」
「邪魔なんかしてね~よ!魚獲ってやるって」
「それが邪魔なのよ。」
「なんでだよ!」
「ほんと馬鹿。」
「な!もう帰れよ、お前!」
「やなこった!」
サーシアにも、ルルナにも、
ちゃんと相手が居ると分かって、
少しだけほっとしたピピ。
でもカリトンが心配だから付いて行く事に
したよ。
カリトンはサーシアとルルナにメロメロで
二人に気に入られようとして、
何かと張り切っちゃうから、気が気じゃない。
ルルナは常に淡々としてるから良いけれど、
問題はサーシアだ!
面白がってわざと煽るような事をする。
躓いた振りして抱き着いたり、
じっと濡れた瞳で見つめたり~
もう真っ赤な顔でのぼせ上がるカリトン。
イライラしながら見てるピピと目が合うと
ニヤァ~~~っと笑う・・・
このロクデナシがっ!
(な!な!なによ!あのサーシアって子!
絶対わざとよね!
彼氏が居るのにカリトンを誘惑してっ!
まさか乗り換える気?
イワンって男、どー見てもブサイクよね。
カリトンの方が千倍男前だわ!
私からカリトンを奪い取るつもりね!
きぃぃぃぃ~~~!
何ぁ~にが聖女よ!
淫乱二股女じゃんか!
不潔よ!
負けるもんですか!)
いやぁ~御免ねぇ~ピピ~
ただ退屈しのぎでからかってるだけ~
もういい加減にしろよぉサーシア~




