第65話 ゲルダの墓標
『退屈ですわぁ~~~』
シアラムの本流沿いに河口まで街道が
続いている。
中流域に入ると後はずっと平野部だから
旅も快適だね。
だもんだから、特に事件なんか起こらない。
朝起きて、ルルナに身支度を整えて貰って、
ご飯を食べて、出発の準備をボォ~っと見て、
車に揺られて、お昼には河原に降りて、
イワンの魚釣りをボォ~っと眺めて、
また車に揺られて、夕方になったら野営の
準備をしているのをボォ~っと見て、
晩御飯を食べて、水浴びをして、寝間着に
着替えさせて貰って、ルルナとおしゃべり
しながら寝る。
そりゃ暇だわな!
なぁ~んにもしねぇ~からな!
「そう言えば、もうすぐ2年になりますね。」
『まぁ!もうそんなに?』
「えぇ、14歳ですよ。」
『一年が早いですわねぇ~』
「ふふっ、まるで年寄りの会話ですね。」
『あら、年寄りですわよ。』
「体は若いですよ。」
『ねぇルルナ?』
「何ですか?サーシア?」
『退屈で死にそうですわ~』
「良い事じゃないですか、平和で。」
『性に合いませんのよね、平和って。』
「物騒な事言わないで下さいよ~
前は無難が一番って言ってたじゃ
ないですか~」
『そ-でしたかしら?』
「そーですよ~」
『ねぇ!こーゆーのはどうかしら?』
「どーゆーのですか?」
『オランに集落を襲わせるのよ!
それを私とルルナで撃退しますの!』
「そんなマッチポンプ嫌ですよぉ!」
『実はね、あれも持って来てるのよ!』
「あれって?」
『サファイアの衣装ですわ。』
「ズボンの騎士のですか?」
『えぇ!久し振りに着てみたいですわ!』
「着れば良いじゃないですか。」
『嫌よ、着れば良いと言うものではないの。
シチュエーションが大切ですのよ!』
「だからって事件を捏造しちゃ駄目ですよ!
それに今は人間ですから変身出来ませんよ。」
『大丈夫!ルルナ用にラピーヌの星を
用意して有りますわよ!』
「シモーヌが着てたやつですよねぇ?
サイズが合わないですよ~
彼女って結構大柄でしたよ?
マッハ・フミアキくらい有りましたよ?
嫌ですよぉブカブカのレオタードなんて~
そもそもレオタードじゃパンチラ出来ない
じゃありませんか~」
『・・・』
「サーシア?」
『スゥ~・・・スゥ~・・・』
「寝ちゃったんですか?」
『スゥ~・・・プフゥ~・・・』
「ふふっ、可愛い寝顔っ!」
***
精霊殿遺跡の裏庭に建てられた墓標。
ゲルダのお墓だ。
近隣の集落の者達が協力して手入れをしてる。
そりゃぁ~もう大歓迎だったよ!
イリュパーが盗賊退治をしてから15年かな?
青きパンツの聖女様が~!ってね。
みんな「ははぁ~~~」って拝むものだから
サーシアも気分が良くなってね。
『まぁ~少しくらいならサービスして
差し上げても宜しくてよ!』
って青いパンツ履いてクルっとターンなんか
したりしてね。
「おぉ~~~!」
拍手喝采で鼻血ブーだよ!
『お初に御座いますわ、ゲルダ叔母様。
ダモンの族長イリュパーが娘。
エルサーシアに御座います。』
「同じくイリュパーが娘。ルルナです。」
ゲルダの墓標の前に跪き哀悼の意を捧げる。
こーゆーのは真面目にするんだよサーシアは。
『叔母様、あなたのお兄様を殺しましたの。』
「それは私が---」
『いいえ、ルルナ。決断したのは私ですわ。』
「でも・・・」
『後悔はして居りませんの。
謝るつもりもありませんわ。
呪って下さっても宜しくてよ?
でも、これだけはお約束いたしますわ。
カイザルの事は私がきっと守り通します。
あの子こそが本当にお父様とお母様の子
ですもの。』
「・・・」
そう、システムによる改変を受けていない
自然のままの命。
正しく二人の血を受け継ぐ子だ。
『ですから例え叔母さまに呪われても
私はそれを跳ね返して見せますわ!
無駄な事はお止しになった方が宜しくてよ。
今日はこれを言う為に参りましたの。』
まったく素直じゃないねぇ。
お前の目はゴメンナサイって言ってるよ?
今にも泣きそうじゃないか。
『お慰みに歌をお捧げ致しますわ。』
え?
まさか・・・
『精霊歌 よの22番 真っ赤なブルマ~』
わぁ~!やっぱり~~~!
なんだぁ?そのタイトルはぁ~~~!
チャララ~~~ラ♪
ラ~ラ~ラ~~~♪
あの娘~が履いていた~♪
真っ赤な~ブルマぁ~♪
おいらの~カバンに~♪
入~って~いるのさ~♪
誰が~盗んだのか~♪
学級~裁判~♪
みんな~おいらを~♪
疑~って~いるのさ~♪
夜~中~の~♪
男の右手~には~♪
ロ~マ~ンの~♪
オカズが欲しい~のさ~♪
らららら~ららら~♪
らららら~ららら~♪
ら~ら~ら♪
真っ赤な~♪
ブ~ル~マぁ~~~♪
ジャァ~~~ン♪
『さぁ!出発ですわよ!ルルナ!』
「はい!サーシア!」
海まで一気に行くぞぉ~~~!




