第64話 大聖女の行進
バカでかい斧を持った世にも恐ろしい怪物が
咆哮を上げながら飛び出して来た!
「悪いごはイネガァー!うがぁ~!おぉ~!
食っちまうぞぉ~~~!がぉ~~~!」
これもサーシアが教えたセリフだ・・・
「うわぁ~!バケモノだぁ~!」
「ひぇぇぇ~~~!」
「逃げろ~~~!」
『逃がしては駄目よ!捕まえなさい!』
精霊達が一斉に顕現して退路を塞ぐ。
十二支も最大化しているよん!
「な!な!な!」
オランにも驚いたけど精霊には胆が潰れた!
空っぽになった頭の中にルルナの声が響く。
「私の名を知りたいと言いましたね?」
「あ・・・あぁ・・・」
「教えてあげましょうか?」
「あぁ・・・」
「私の名はルルナです。」
「ルルナ・・・」
「満足しましたか?」
「あぁ・・・」
「では死になさい。」
「ひぃっ!た、助けて・・・」
ズキュゥ~~~ン!
おぉ!それはジェバー銃じゃんか!
持って来てたのね。
あれ?でも玉切れじゃなかったっけか?
「ルルベロ、照準がズレてるわよ。」
「メンテナンスは完璧だよぉ。」
「眉間を狙ったのよ?」
「ルルナがヘタクソなんだよぉ。」
あっ!そう言えばルルベロが作ったんだった!
弾丸を補充したんだね~
股間を撃ち抜かれて、泡を吹いて気絶した。
まぁ~男としては死んだね。
今日から君はビリージーンと名乗れば良いよ。
大丈夫!
案外良いもんだよ?
そっちの人生もね!
新~らし~い~♪朝~さが来た~♪
女装~の~♪朝~さ~が~~~♪
***
「ん~?なんだか南詰が騒がしいな。」
久し振りに客が来たと、弟から連絡を受けて、
今か今かと待っていたアイクなんだ。
「頭っ!大変だ!ビリーがやられた!」
「なんだとぉ!」
様子を見に行ってた手下が真っ青な顔で
戻って来た!
ガタガタと震えている。
お漏らしもしちゃった!
「せ、精霊だ!奴らが噂の聖女だ!」
「まさかっ!なんであっちから来るんだ!」
話しには聞いていた。
精霊が現れて北へ行ったと。
いずれ聖女と共に再び南下してくると。
でも道が違う筈だ。
北から降りて来る街道は、中流域で
合流している。
こっちには来ない筈なのに・・・
寄り道したんだよん!
「ビリーは?死んだのか?」
「わからねぇ・・・なんかすげ~音がして
股がピカ~ッって光って・・・」
「何言ってんだ?」
「俺にもわかんねぇ~よ~」
「と、とにかくみんなを集めろ!封鎖だ!
橋を封鎖しろっ!」
ダメだって~
何んにもしないで通り過ぎるのを待つのが
正解なんだってばぁ~
先頭は斧を担いだオラン。
そしてエドちゃんに乗ったサーシアと
ボタンちゃんに跨ったルルナが並んで続く。
その後ろには顕現したハニー達人型精霊。
巨大化した十二支がズラ~っと囲む。
水面からニョキっとオージーちゃんも
顔を出してるよっ!
全員集合!百鬼夜行だね~
昼間だけど~
軽快なディキーランドジャズが響き渡る!
ジャァ~~~ンカ♪
ジャァ~~~ンカ♪
ジャカジャン♪
ジャンジャカジャン♪
お椀出せ~~~♪
茶碗出せ~~~♪
早よ出せ~♪
お~待~た~せ~~~♪
若者~~~の街~♪
なんば~~~♪
みんなで~集~ま~れ~~~♪
イエ~ぃ!大聖女の行進だぁ~!
これやるのも久しぶりだねぇ~
あぁ~あの頃を思い出すよ~
懐かしいなぁ~
「ねぇ~通せんぼされてるよ?」
橋の北詰をオランが指差す。
三重に柵が張られている。
槍を持った男達が殺気立って睨んでいる。
『蹴散らしなさいな。』
「突破してください、オラン。」
「え?僕が?」
「えぇ、期待してますよ。」
「う、うん!頑張るよ!へへへ。」
顔が赤いぞ?オラン。
獰猛さが倍増するね~
もう赤鬼も真っ青だよ。
「うがぁ~~~!」
斧の一振りで柵は吹っ飛んだ!
人間だよね?
「うわぁ~!バケモンだぁ~!」
「弓だ!弓で射ろ!」
『ミサ!』
「承知!」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
「キャッ!ベッ!ジンッ!」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
「エッ!ビッ!オスッ!」
ヒュン!ヒュン!ヒュン!
「オゥッ!タイッ!サンッ!」
「あぁ・・・またつまらぬものを----」
ズキュ~~~ン!
ルルナが発砲~~~!
まだセリフの途中だったのに~~~
「うぎゃぁ~~~!」
「か!頭ぁ~~~!」
「頭がやられたぁ~~~!」
また股間を吹っ飛ばした・・・
今日から君はアイリーンだよ。
オランが攻撃されたから、ちょっとムカっと
したのよね。
自覚はしてないだろうけどね~
「やっぱり狂ってるわよ?照準。」
「違うよぉ、もう返してぇ。」
そうだね、ルルナに飛び道具は持たせない
方が良いね。
味方を撃っちゃうかも知れないもんね~
あははは
「----斬ってしまったわ。」
意地でも最後まで言ったね!ミサ!
***
ボンクラン兄弟、いや・・・もう姉妹だな。
まだ気を失ったままだ。
他の連中は全員ハニーが縛り上げたよ。
「さて、どうしますか?サーシア?」
『どうもしませんわ。』
「このまま放って置きますか?」
『えぇ、もう充分楽しめましたし。』
「そうですか、それは良かったですね!」
『あぁ、通行料を忘れないで頂戴ね。ルルナ。』
「えぇ、ちゃんと払いますよ。サーシア。」
真ん中の穴に紐を通して結んだ古銭銅貨
59枚・・・
橋の欄干にぶら下げた。




