第60話 風と共にシャリィぬ
「で?連れて来たと言うわけですか?」
サーシア達が逗留している礼拝堂の一室。
トールと泣き腫らした赤い目のシャリィ。
「この娘も一緒に!頼むよユーリ!」
何もかも正直に打ち明けたシャリィ。
始めは騙すつもりだったけど、今では
本気で好きになってしまった事も。
「もう家には帰れません!お願いです!」
まぁそーだろうね。
失敗した挙句に惚れましたなんて許されない。
ヘタすると殺されるかもね。
「どうしますか?サーシア。」
『中途半端は駄目ですわよ。
連れて行くなら夫婦になりなさいな。』
その覚悟が無いのなら諦めろと言う事ね。
身内になるのなら、とことん面倒を見る!
そーゆー事!
「どうなのです?トール。」
「わかった!夫婦になる!」
「いいの?トール?」
「あぁ!もちろんだ!」
「ありがとう!トール!」
良かったねシャリィ。
おめでとうトール。
ついこの間まで闇落ち寸前だったのにね~
人の縁の不思議さよ。
『ところでその薬とやらは、
まだ残っているのかしら?』
「薬はまだ持っているのですか?」
「はい、半分しか残ってませんけど。」
半分も溢したのか!30回分だな!
高いんだぞっ!それ。
用法用量を守って正しくお使い下さいね!
~青髭薬局~
結局は薬なんか必要無かったけどね~
あの後、しっかり・・・
『もう必要ありませんわよね!私が-----』
「私が預かります。」
「はい、ユーリ様。どうぞ。」
『ルルナには必要ありませんでしょう?』
「サーシアにだってありませんよ!」
『私にはイワンが居りますもの。』
「やっぱり使う気だったんですか!」
『例えばの話しですわよ。』
「祭壇の再起動が終わるまでは子作り禁止!」
うんうん、それでなくても遅れてるのに、
妊娠なんかしたら大変だよぉ。
本当にいい加減なやつだな。
「ところで、教皇とやらはどうしますか?」
『ん?あぁ、マヨネーズ3世とか言う者の事
ですわね?』
「ピヨラール3世ですよ。」
『放って置きましょう。』
「良いのですか?」
『えぇ、構いませんわ。』
「そうですか、サーシアがそう言うなら。」
シャリィが居無ければ、トールは潰れて
いたかも知れない。
今、護るべき宝を見つけたその眼差しは強く、
そして暖かい。
一皮ズル剥けたって感じ?
皮肉にも、その縁結びをしたのは他ならぬ
ピヨッちなんだよね。
それに免じて今回は見逃して、あ・げ・る!
でも次は容赦しないよ?
***
「何?シャリィが裏切ったじゃと!」
「は、はい猊下、やつらと一緒に集落を
出て行きました!」
「あの小娘が!誑かされおって!」
「如何いたしましょう?」
「えぇぃ!もう回りくどいのは止めじゃ!」
「では当初の予定通りに?」
「いや、一人は生かして置く。」
「殺さないので?」
「あぁ、精霊を大人しくさせる為の
人質にするのじゃ。」
「なるほど!」
「奴らの目的は魔法を復活させる事らしい。
聖女を捉え、我らが魔法を手にするのじゃ。」
「おぉ~!それは素晴らしい!」
うわぁ~
無知って怖ぁ~い。
トラとタヌキのかぁ~さんよって
ことわざ知らないの?
「どちらを人質にするので?」
「姉の方は厄介そうじゃな、
賢しい女は好かぬ。
妹の方が良い。
何も出来ぬ役立たずらしいからの。」
「一日中グータラしているそうですな。」
「おそらく白痴であろうよ。」
えらい言われ様だなぁ~
他所からはそー見えるのかぁ~
まぁ~心当たりしかないな・・・
でぇ~んとソファーにふんぞり返って、
あれこれとルルナに世話を焼かれて、
イワンにデレデレと甘えてさぁ~
どー見ても甘やかされて育った頭の足りない
世間知らずで、見た目だけが取り柄の
残念な美少女だもんな。
「躾が必要ですなぁ。」
「躾のぉ、其の方、顔がニヤケておるぞ。」
「猊下こそ。」
「うふ、うふふふふ。」
「いししししし~。」
とんだ性職者だよっ!
「人を集めよ、周りを囲んで一気に攻める。」
「御意のままに。」
ジャバー銃を持ってるからって強気になって
いるんだろうけどね。
そんなもの何の意味も無いよ?
まぁやってごらんよ。
エルサーシアとは、どの様な存在であるのか
教えてあげるから。
命と引き換えにね。




