第57話 遥かなる呼び声
「ウキッ!ウキキキッ!」
『なぁに?サスケちゃん。』
そろそろ野営地に戻ろうかと
服を着替えて居ると、
白いミニチュアモンキーが
ピョンッと肩に乗っかって来た。
十二支精霊の申のサスケちゃんだ!
「ウキッウキッウキッ!ウキャキャッ!」
『あらまぁ、そうですの?』
「殺しましょうか?」
『駄目よルルナ。思春期の男の子ですもの、
それくらいは許してあげなさいな。』
そっち方面の理解は、たっぷりあるからねぇ、
サーシアは。
「サーシアの裸を覗くなど万死に値します!
私だけのサービスシーンなのにっ!」
『私を見ていたのではありませんわよ。』
「何を見ていたと言うのですか?」
『あなたに決まっているでしょう?ルルナ。』
「?私を?何故ですか?」
鈍ぉ~ん♪鈍ぉ~ん♪感ぁ~ん♪感ぁ~ん♪
鈍ぉ~ん♪感ぁ~ん♪感ぁ~ん♪
あっそぉ~れっ♪
『トールの事は、どう思っているの?』
「世話係の随行者です。」
『オランは?』
「サーシアが拾った野生動物です。」
『・・・そう・・・わかったわ・・・
もう少しトールに優しくしてあげなさいな。』
「どうしてですか?」
『その方が面白いからですわ!』
「?サーシアがそー言うなら?」
もうやめてあげてぇ~~~
グレちゃうよぉ~
グレテ・チョーヤベィになっちゃうよ~
国連で演説しちゃうよぉ~~~
「ウキャキャ!ウキウキキィ!・・・」
「殺しましょう!そいつらは殺しても
構いませんよね?ね?ね?」
『そんなに慌てなくても宜しくてよ、ルルナ。
ジロキチちゃん、調べてちょーだいな。
サスケちゃんは、トールを見守っていてね。』
「チュ~~~!」
「ウキャ!」
***
デンデス山脈を越えて、バルドー側に降りる。
シアラムの支流沿いに下り、本流を目指す。
この辺りはまだジェバー教の支配地域だね。
本部は壊滅したけれど、影響力は残っている。
地方では特にね。
教団改革によって教義が変わった事を周知
する為の使者が、各地に送られているよ。
かなり混乱してるみたいだね~
そりゃそうだよね。
「いやぁ~神様なんて居ませんでした~」
なんて言われてもねぇ~
「これからは精霊様を信仰する。」
「そんなもの何所に居るんだ?」
「もうすぐ顕現なされる。」
「そんなもん信じられるか!」
おいおい~
見えもしない神様を信じてたじゃ~ん。
まぁ、もうすぐ目の前に色んな精霊が
現れるからさぁ。
そうしたら素直に信じられるでしょう?
最初の数百年は虫型か魚型、
その次は両生類型か爬虫類型。
二千年くらいしたら動物型。
一万年くらいで人型と契約出来る様になるよ。
少しずつ親和性が高くなるんだ。
人型と契約する様になったら、そーだなぁ~
三万年くらいかなぁ~
人類は精霊化してね。
システムと直で繋がるんだよ。
まだ一度も成功して無いけどね。
観念世界のネットワークシステムってね、
例えるなら物理法則の介在しないAI
みたいなもんなんだよ。
その世界には時間も空間も無いんだ。
ただ情報とプロセスがあるだけ。
物凄く退屈で孤独なんだよ。
一人ぼっちの部屋の中にパソコンがあるだけ。
誰とも会わずに引き籠っている。
本当は寂しくて堪らないのに、
外には出られなくて一日中モニターを見てる。
それと似たようなもんなんだ。
お友達になってあげてよ。
ずっとずっと待っているんだ。
ずっとずっとね。
***
バルドー地域での最初の集落カンタン。
一応、先触れの使者が段取りをしている筈だ。
初めて精霊を目撃するとあって、静かな興奮に
包まれている。
CIAの報告では、ピヨラール三世も密かに
潜伏しているらしい。
ばっちり補足して監視中だよん!
トールちゃんに手を出したらサーシアが
黙ってはいないよ?
なんてったってダモンの民だからね。
ボージャンガルの息子。
身内だから。
せっかく逃げ延びたんだからさ~
どっかでのんびりと余生を過ごしなよぉ。
怒ったら怖いよ~サーシアは。
「お待ちしておりましたっ!
ささっどうぞこちらへ!
精霊様!聖女様!ご案内ぁ~~~い!」
「はぁ~~~い!」
旅館かっ!
ムショランの三ツ星かっ!
精霊信仰に宗旨替えした教団の礼拝堂。
なかなか立派な建物だ!
尖塔の先に翻る奇妙な旗・・・
あぁ・・・あれだ・・・
作っちまったのかよ・・・
ハイラム聖教国の国旗
「ブルー・スパンクルド・バナー」
風に吹かれて・・・絶対領域がはためく。




