第53話 わっかんねぇだろうなぁ
二つの内の一つが無くなると、
それは半分を失った事になる。
当たり前だけど忘れがち。
四つの内の一つであれば、
少しマシになる。
単純な事ほど見落としてしまう。
分母が大きいほど損傷率は小さくなり、
余裕を持つことが出来る。
落ち着きさえすれば。
恋愛に関して、それは顕著に現れる。
狭い行動範囲、少人数のコミュニティ内での
恋愛感情は激しく、多くは悲劇的だ。
だが、その輝きに勝るものは無い。
***
さて、サーシア達がこの集落に来て二日目。
しょっぱなでトラブルが発生したので、
周辺地域の事情を調査した方が良いと、
ルルナが提案したんだ。
ジロキチちゃん率いるCIAが調査中!
賢明な判断だね~
この辺りの住人は蟲食が中心で、それ以外の
肉は食べないんだ。
「鳥肉は無いのですか?トカゲとかは?」
って聞いたら
「え?そんなもん食うのか?」
うわぁ~って顔で言われた~
すっかりゲテモノ扱いだよ。
蟲肉が食べられないサーシアの為に、
何か代わりの食材をとルルナ自ら採取に出た。
悲しそうな顔でムシャムシャと蟲みたいに
葉っぱを食べてるサーシアを見かねたんだよ。
精霊達に任せても良いのだけどね、
「私が採った食材を!」って張り切って
いるんだよ。
「オラン、一緒に来て下さい。」
「うん、良いよ。」
ルルナが同行者にオランを指名したんだ。
狩りの経験値は高いからね。
「お!俺も行くよユーリ!」
「狩りなんかした事ないでしょう?トール。」
「でも!」
『連れて行ってあげなさいな。』
「そうですか?サーシアがそう言うなら。」
三角関係を面白がってるだけだろうが!
趣味悪いぞ、お前!
「俺、頑張るよっ!」
「そうですか。」
あっさりしてるなぁ、ルルナ。
トールの気持ち分かるかなぁ?
夕~焼けへ~♪小焼~けへ~でへ~♪
日がはぁ~暮れへ~てへ~♪
シャバドゥビダバ~♪
俺がぁ~昔ぃ~♪パンツだった頃ぉ~♪
父ちゃんはぁ~♪ふんどしでぇ~♪
母ちゃんはぁ~♪ズロースだったぁ~♪
兄ちゃんはぁ~♪ブリーフでぇ~♪
姉ちゃんはぁ~♪ノ~パンだったぁ~♪
わかるかなぁ~♪
オ~イェ~♪
わっかんねぇ~だろ~なぁ~♪
シャバドゥビダバ♪
ドゥビドゥビダバ~♪
イェ~~~イ♪
酔ってませんってぇ~
何回も言わせないでよぉ~
シラフだってドゥビダバ~♪
イェ~~~イ♪
***
水鳥が沢山いる池が在ると聞いてやって来た。
林の中を慎重に進む。
あぁ、あそこだな。
カモによく似た鳥が群れている。
「どうやって捕まえるのですか?オラン。」
「石を投げるんだよ。」
単純明快!
オランの怪力で投げたらすげぇ~だろうな。
「それくらい!俺にも出来る!」
「しぃ~~~、逃げちゃいますよぉ。」
「す、すまん・・・」
落ち着け、トール。
「じゃぁ先に投げる?」
オランが気を使ったみたいだけど、それって
あんまり良い結果にならないような・・・
「あぁ、任せろ。」
大丈夫?
結構な距離あるよ?
「うりゃぁ~!」
大声出すなって!
ポチャン・・・
届かねぇ~~~
バサバサバサバサ~~~!
ほらぁ~逃げたぁ~
あぁ~あ~
ビシュッ!
クェ~~~!
当たぁ~りぃ~~~!
ナイスフォロー!オラン!
やるじゃ~ん!
「やった!」
「すごいですね!オラン!」
「うん!取って来るよ!」
褒められて実に嬉しそうなオラン。
バシャバシャと水しぶきを上げて走る。
ルルナも花のような笑顔だ。
「・・・」
お~い、トール~
大丈夫かぁ~?
「サーシアが待ってるから戻りましょう。」
「うん!」
「ついでに木の実も拾って行きましょうね。」
「そうだね!」
「クッキーを焼きますね。」
「うわぁ~楽しみだねぇ!」
「・・・」
お~い、トール~
その目はやめろ~
ヤバイぞぉ~
殺意が揺らめいてるぞぉ~
***
ふっくらこんがり焼いた野鳥の肉と
どんぐりクッキー。
ハーブも摘んで来たので、お茶にした。
『はぁ~美味しいですわぁ~』
「良かった!オランが仕留めたんですよ!」
『そうなの?お手柄ね、オラン。』
「サーシアが褒めてくれましたよ!オラン。」
「あ、ありがとう。うへへへ。」
お~い、トール~
食べないのかぁ~?
まぁ、気持ちは分かるけどな。
クッキーだけでも食べなよ。
ルルナが焼いたんだぞ?
手でコネコネして焼いたよ?
美味しいよ?
<おやまぁ、随分としっかり仕上がって
しまいましたわねぇ~>
ヤバイってサーシア!
シャレにならないよぉ~
面白がってる場合じゃ無いよ~
嫉妬♪嫉妬♪ト~ルちゃん♪
嫉妬♪ト~ルちゃん♪
嫉妬~♪ト~~~ルちゃん♪
お~~~い!ト~~~ル~~~!




