第51話 気になる二人
『居ませんわねぇ、ヒマティ~』
やっぱりな!
止めろと言われて、そうですかなんて
素直に聞くわきゃないよな!
『まぁ!怪物ですって?面白そうですわね!』
やめろっと言~わ~れ~て~もっ♪
パラパ~ララ♪チャッチャッチャ~ラッ♪
今では~遅っそす~ぎ~るっ♪
パラパ~ララ♪チャッチャッチャ~ラッ♪
激し~い好~奇心に~♪
巻き込まれたら最後さぁ~♪
ジャァ~~~ン♪
人型の怪物が居ると聞いて、
なんなら捕獲する気まんまんのサーシア。
エドちゃんの背中で、とっても偉そうに
ふんぞり返っている。
亥のボタンちゃんに跨ったルルナが、
そんなサーシアを愛しそうに見つめている。
小柄なエドちゃんと、大柄のボタンちゃんとで
ちょうど高さ的に釣り合うんだよね。
並んでお喋りするのには最適!
本当は二人乗りしたいんだけどねルルナは。
でもエドちゃんはサーシア以外の騎乗を
許さないんだ。
「十二支達に山狩りでもさせましょうか?」
やめてあげてっ!
そんな事しなくても居るから~
隠れてそっと見てるから~
山の小動物はオランの友達。
人が来たら教えて呉れるんだ。
「か、可愛いなぁ~あの娘。
お、お、お話し出来たら良いなぁ~」
え?どっち?
サーシアなら、悪い事は言わないから
やめときなさいオラン。
美少女の姿をした化け物だからね。
ルルナにしときなさいよ。
良い子だよぉ~ルルナは~
「ガルルルルル~~~」
「うわぁ~~~!」
ハリマオちゃんに見つかった!
音も無く背後に忍び寄る密林の帝王!
狩りのプロフェッショナル~
「ばっ!化け物だぁ~!」
「ガオォ~!」
初めて見た虎、巨大なホワイトタイガー。
さすがのオランも腰を抜かした!
「た!た!助けてぇ~!」
たまらず街道の方へ逃げ出してしまった!
倒木に躓いて転がりながら、
サーシア達の前に飛び出す。
『まぁ!出ましたわね!ヒマティ!』
「人間じゃないですかねぇ?」
『あら?そうですの?あれで?』
「えぇ、言葉を話してましたよ。
”助けて~”って。」
『言葉を話す怪物でしょう?』
いい加減にしろよ、お前~
人間だよ!人間!
ものすご~く人間離れしてるけど、人間!
ホモのサピエンス!
ホモサピエンス・オランシスだよ!
あぁ、ちなみにね、ホモ=人で、
サピエンス=知恵なんだってさ。
「知恵の有る人」
それがホモサピエンス。
地球人は本当にホモサピエンスだろうか?
なぁ~~~んてね!
ちょっと斜に構えてみました~
「しまった!こっちには人が居たんだ!」
自分のせいで旅人を危険に晒してしまった!
オランはそう思ったんだ。
反対側に逃げるべきだったってね。
本当に優しい子だよ。
と言っても、もう20歳なんだけどね。
心は少年のままなんだ。
「危ない!逃げて!早く!」
死ぬかも知れないけどボクが止めなきゃ!
あの人達が逃げ切れるまで・・・
オランは覚悟を決めた!
ストロングスタイルでハリマオちゃんと
対峙する。
「なんだコノヤロ~!」
おぉ~!言ったねぇ~!
狸木っ!ボンバイエッ!
そんなオランをヒョイっと飛び越えて、
サーシアにすり寄るハリマオちゃん。
ゴロゴロと喉を鳴らして甘える。
「ゴロゴロゴロゴロ」
『よしよし、良い子ね~』
「え?何?どーゆー事?」
***
「ジュウニシ?」
「えぇ、サーシアのペットですよ。」
『こんなに可愛いのに化け物だなんて、
失礼ですわよ!』
お前が言うな!
いつもと違ってオランを見ても怖がらない。
それどころか、とっても上から目線だ!
それが嬉しかった。
久し振りに人と会話する。
空き地でお昼ご飯を一緒に食べながら、
これまでの事を話したんだ。
「そうですか、それは不運でしたね。」
「元気かなぁ~姉さん・・・」
「会いたいですか?」
「うん、会いたいよ。」
『では会いに行けば宜しいのですわ。』
そんな簡単に言うなよぉ~
「こっそり会いに行ったらどうですか?」
「それが・・・」
オランが言うには、とにかく必死に逃げて
来たもんだから、帰り道が判らないんだとさ。
ここが何所かも分かっていないのだと。
『計画性がありませんわね~』
お前もなっ!
「それにね、姉さんが言ったんだ。
戻って来ては駄目だって。」
「そうですか。これからどうするんですか?
ずっとここに居るつもりですか?」
「う~~~ん?分からないなぁ~」
おや?
なんだか楽しそうだな?ルルナ。
サーシア以外と話す時には殆ど笑わないのに、
ニコニコしてるぞ。
目ざといサーシアが、それを見逃す筈が無い!
『一緒においでなさいなオラン。』
「私達と一緒に来ますか?」
「え?良いの?」
「えぇ、サーシアもそうしなさいって。」
「うん!行くよ!」
そのやり取りを横目で見ながら暗い表情を
しているのはトールだ。
気に食わない!
ユーリと楽しそうに話しやがって!
って感じだね。
目ざといサーシアが、それを見逃す筈が無い!
<これは、面白い事になりそうですわね~>




