第48話 デンデスの怪物
『曾祖母様のお墓参りがしたいですわ。』
また始まったよ~
思い付きで計画に無い事を言い出すなよ~
お墓なんか残ってねぇ~よ~
とっくに崩れ去って、でっかい木が
ずどぉ~んと生えてるのがオチだって。
いやね、デンデス山脈を越えれば
旧ハイラム王国なんだよ。
その首都だった所の外れにヤンギーリ川
ってのがあってね。
その川の傍にサーシアの曾祖母の霊廟が
在ったんだよ。
政略結婚で恋人と引き裂かれてね。
オバルト王国に嫁いだんだ。
それでも王妃としての務めを果たしてね、
王の死後に故郷に戻って、ずっと待ち続けて
いた恋人と静かな余生を過ごしたんだ。
サーシアをとても可愛がっていてね、
その穏やかな終末はサーシアの憧れだった。
戦争でその望みは絶たれたけどね。
墓参りだなんて殊勝な心掛けだけど、
先ずは使命を遂行しようよぉ。
祭壇を再稼働させてさぁ。
魔法を復活させてさぁ。
それからで良いじゃん!
その方が楽じゃん!
空を飛んでも良いし~
転移魔法だって使えるじゃ~ん。
なんで今行くなんて言うかなぁ?
「サーシアが行きたいなら、行きましょう。」
ルルナぁ~~~
止めろよぉ!
甘過ぎるよぉ!
なんか酷くなってないか?
前世ではもう少し歯止めになってたよ?
人間になった副作用かなぁ?
サーシア愛が重症レベルだな。
肉体を持つと執着心が強くなるからなぁ。
秘密基地でも収蔵してあったロイペの茶器に
泣きながら頬ずりしてたもんなぁ~
長旅だしクッションの悪い車に揺られて、
万が一壊れたら大変だから置いて来たけどね。
あぁ、ロイペって言うのはオバルト王室
ご用達の磁器でね。
ロイヤル・テッペンハーゲン社の茶器なんだ。
ルルナのコレクションの中には、王家から
贈られた国宝級の逸品もあるよん!
伝説の名工6代目ヒューダリン・ジングロ作
「スリーピング・キャット」6客フルセット。
立派な宮殿が建つくらいの価値がある。
いや・・・あったと言うべきだね。
今やその価値を知るのはルルナだけ・・・
サーシアは無関心だからねぇ。
紙コップでも平気なんだから。
***
「悪い事は言わねぇよ。山越えするなら
あの道は止めときな。」
砂漠地帯を抜け、デンデスの麓まで来た。
ここまで来ると、そこそこ大きな集落が在る。
宿屋に泊って旅の疲れを癒す。
久し振りに広いベッドで寝たよぉ。
でもサーシアとルルナは一緒のベッドで
寝るから結局は狭くなっちゃうんだ。
寝る時は別々なんだけどね。
お喋りしている内にルルナが潜り込んで
来るんだよ。
サーシアに触れて無いと眠れないんだとさ~
もう依存症だな。
何よりも手の込んだ料理が嬉しいね!
旅の途中では焼くだけ煮るだけだもんね。
『あぁ!コンソメですわ~!
良いダシですわぁ~!
お肉も柔らかくて美味しいですわねぇ~』
「えぇ、美味しいですねぇ。
何の肉でしょうねぇ?」
それ聞いちゃう?
「気に入ったかい?お嬢ちゃん!」
「えぇ、とっても。
これは何の肉ですか?ご主人。」
「新鮮なケモンガの肉だよぉ!」
大蜘蛛だぁ~!
『おぉぉぉえぇぇぇ~~~』
サーシアが吐いた~
蟲は駄目なんだよ~
蟲だけは駄目なんだよ~
聞かなきゃ良いのに。
「あんた達、山越えするのかい?」
「えぇ。」
で、さっきの話し。
「出るんだよ。」
「何が出るのですか?」
「ヒマティーだよ。」
なんだ?そのプー太郎みたいなのは?




