第43話 ハニーへの祈り
あのひとの事を
私に語って下さい
ハニーよ
数多くの伝説を残した
あのひとの・・・
***
『もう少し早く走れませんの?』
「これが全速力みたいですね。」
『そうですの・・・』
イクアナだからね~
そうだな~例えるならママチャリくらい?
二匹のイクアナが曳く屋根付きの台車。
サーシアとルルナとイワンで一台。
随行者用が二台。
荷物用が二台の計五台。
イワンは随行者用の台車じゃないのかって?
あぁ、それなんだけどね。
サーシアがイワンも一緒じゃなきゃ
嫌だって、そー言うもんだからね。
じゃぁ~しょ~がないかぁ~って。
魚人の居るバルドーの海岸まで二年は
かかるだろうね。
随行者無しで十二支に跨って突っ走れば
もっと早く着く。
たぶん一年も掛からないんじゃないかな?
じゃぁなんで?
あぁ、それなんだけどね。
サーシアがイワンも一緒じゃなきゃ
嫌だって、そー言うもんだからね。
じゃぁ~しょ~がないかぁ~って。
さっきも同じ事を言ったな・・・
カイザルと長く逢えないのは辛いけど、
イワンと離れるのは耐えられないんだってさ。
前世でカルアンがあんな死に方をしたのは、
自分が側に居なかったからだと思ってるんだ。
消えない心の傷なんだよ。
それにさ~
サーシアって自分じゃ何もしないでしょう?
着替えだってルルナが手伝ってるんだよ。
食事の支度なんかする訳ないじゃん。
朝パンツを数枚洗って干すだけで、
『今日もたくさん働きましたわ!』
なんて満足そうな顔で言う奴なんだよ。
そもそもニート気質だったのが転生で
大貴族の娘になったでしょう?
すっかりその生活が染みついちゃってね。
今回の転生では状況が違うよって説明しても
改めようとはしないのよ。
ちなみに一日で最低5枚は履き替えるんだ。
朝昼晩で3枚でしょう?
それとトイレの度に替えるからね。
パンツへの拘りと執着は異常だよ。
怖いくらい・・・
ルルナもサーシアには甘々だからね~
むしろ喜んで世話を焼いてるね。
ダメ人間製造機みたいになってるよ。
そんなんだからね、随行者が必要だ!
ってなったんだよ。
今世ではルルナも生身の人間だからね。
一人ではこなしきれ無いよ。
過労死しちゃうよ~
護衛は精霊達が居るから充分だ。
身の回りの世話係を数人、選抜したんだよ。
トールも居るよん!
なにもバルドーまで行かなくても、
オバルトの海岸ならイクアナ車の速度でも
半年あれば行けるじゃん!
って思ったでしょう?
問題は船なんだよ。
大洋を渡る事の出来る大型船が無いんだ。
せいぜい沖合で漁をする中型船が在るくらい。
また遭難したら大変だからね。
魚人の力を借りて水先案内をして貰おう!
って事になったんだよ。
イリュパーの話しでは魚人達が居るのは
南の海域だけなんだそうだ。
北半球の海には狂暴な生物が沢山いて、
暮らせないってセイレンが言ってたんだって。
急がば回れって事だね~
で!
今はどの辺かとゆーとー
絶賛!寄り道中~
サーシアがね、昔住んでたレイサン家の
屋敷跡が見たいって言うから、
オバルト王都遺跡に向かってるんだ。
「お屋敷はとうに崩れ去っていますよ?」
『それでも良いわ。見たいのよ。』
「そうですか。サーシアが見たいなら
そうしましょう。」
『イワンにも見て欲しいの。
私の愛した人達の思い出がい~っぱい、
そこで眠っていますのよ。』
「うん楽しみだね。」
いやぁ~本当に良く噛み合ってるなぁ~
感心するよ。
イワンは生れた集落から半日以上南へは
行った事が無いから、
それが楽しみだって言ってるんだよね。
幸せそうだね、サーシア。
ルルナも満足そうに見ている。
取り敢えずは平穏な旅路。




