第42話 たびだちの歌
葬儀はしめやかに執り行われた。
若き族長の突然の死にダモンの里は沈んだ。
新しい軍編成についての会議中に突然
倒れたそうだ。
そう言う事になっている。
軍の幹部は全員が虎の穴のメンバーだ。
あの時、じっと見つめ合った父娘。
サーシアは待った。
僅かな望みに縋って待っていた。
「化け物め。」
駄目だった・・・
父は娘を憎んでいた。
族長とは名ばかりで、実際に皆が従って
いるのは精霊を率いている双子だ。
自分はただの飾りに過ぎない。
その思いは心を歪めて行った。
何の実績も無いのに形だけの族長。
却って惨めだったのかも知れない。
『えぇ、化け物ですわ。
あなたが私を愛さなかったように、
私もあなたを愛しては居りませんでした。
とても不思議でしたのよ?
何よりも家族が愛しい筈ですのに、
お父様だけは違いましたの。
理由は分かりませんが、腑に落ちましたわ。
私の愛するダモンに、あなたは不要ですの。
さようなら、お父様。』
「はは・・・何を言っているのやら・・・
口だけパクパク動いておぞ・・・ま・・・」
ルルナが命じ、ミサが脳神経を焼いた。
最後まで言う事を許さなかったのだ。
外傷は一切ない。
半笑いのままの表情が安らかにさえ見える。
サーシアはそれを寂しそうに見つめていた。
軍幹部を呼集して口裏を合わせた。
誰も説明を求めたりはしない。
絶対的な忠誠を誓っている。
式の間には見せなかった涙も、家に戻ると
止まらない。
頑張ったねイリュパー。
悲しみは大きいけれど、愛を信じて居られる。
生まれて来る子に話してあげたら良いよ。
とても立派な父だったと。
許してとは言えないけれどね。
サーシアは守ったんだよ。
父親の名誉をね。
ダモンの族長としてのカイザを。
新しい族長にはイリュパーが就任した。
とは言っても実際には無理だから、
実務は補佐役のトリオルが差配する。
トリオルは虎の穴の一期生だ。
妻子を家に残し3年間の修行を耐え抜いた。
サーシア直属の生え抜きだよ!
『貴方にボージャンガルの姓を授けます。
我がダモン家の護りをお願いしますわね。』
かつてレイサン家に仕え生涯の忠誠を貫いた
御庭番頭Mr.ボージャンガル。
懐かしい名の復活だ。
「ありがたき幸せに御座います!
我が一族は、この血の一滴に至るまで
ダモン家の為に在ると御誓い致します!」
しっかり役目を果たせよ!トリオル。
トリオル・ボージャンガル。
サーシア達が安心して旅路に着ける様に。
***
弟はカイザルと名付けられた。
将来は髭が似合いそうだな~
サーシアがね、もうベッタリなんだよ。
可愛くて仕方がないみたいだね~
ほら、前世では末っ子だったでしょう?
弟なんて初めてだから!
ニコニコしながら、オムツを替えてるよぉ。
そのうちパクっと咥えちゃうんじゃないか?
駄目だよ!それは駄目だからね!
ちゃんと止めなさいよ!ルルナ!
仕舞には出発を遅らせると言い出した!
『カイザルが大きくなってからでも
良いでしょう?』
一緒に遊んでやりたいのだそうだ。
さすがにルルナが説得したよ。
随分とゴネたけど、祭壇の再起動が済んだら
一旦ダモンに戻ると言う事で、
渋々納得したんだ。
こりゃぁ~かなりの強行軍になりそうだね~
機は熟した!
たびだちの歌を唄おうじゃないかっ!
乾いた~パンツ~に~♪
こびりついて~いるのは~♪
何だ~~~♪
お前の~目に~♪
焼きついた~ものは~♪
エロ動~画~~~♪
ハード~ディスク~が~♪
壊れ~たとき~に~♪
残さ~れたもの~は~♪
朝勃~ちの~ネ~タ~~~♪
さぁ~~~♪今っ♪
妄~想~の向こう~に~♪
飛んで~行け~~~♪




