第37話 面影
あぁ・・・カルアン・・・
また逢えましたわね。
えぇ、分かっていますわよ、
別人だと言う事くらい。
でもその顔はカルアンですわ。
細い目、小さな鼻、薄っぺらい唇。
幸運に見放された様な貧相な顔。
安心して下さいましな。
私が幸せにして差し上げますわ!
あぁ・・・カルアン・・・
私のカルアン・・・
***
『じゃぁ後はよろしくね、ルルナ』
「イワンの所ですか?」
『えぇ、今日は西門の周りの草刈りを
するのですってよ!
集落の出入り口を整備しますの!
とっても重要なお仕事ですわ!
私もお手伝いしませんとね!』
要するに雑用係なんだけどね。
雨漏りを直したり、荷物を運んだり。
何でも屋さんだね。
でも恋するサーシアの目には在りし日の
凛々しい姿として映っている。
凛々しかったかなぁ?カルアン・・・
ロリコンの変態ってイメージしか
無いけどな。
「家の用事もしないと、またお母様に
叱られますよ?」
『そんなの平気ですわ。いつもの様に
ルルナが庇ってくれたら良いのよ。
あんまりしつこい様でしたら、
また泣きまねをすれば済みますわよ。』
とんでもねぇ~な!
サーシアが言葉を話せない事に対して
イリュパーは負い目を感じてるんだ。
父親がダモンの男じゃ無いのが原因では
ないかと。
だから声も出さずに泣くサーシアを見ると、
何も言えなくなってしまうんだよ。
サーシアはそれを分かっているんだ。
クソみたいな猿芝居を平気でするんだよ、
サーシアは。
そーゆーやつなんだ。
『じゃぁ行って来ますわね!』
「晩御飯には間に合う様に帰って来て
下さいね。」
『分かっていますわよ。エドちゃ~ん!』
「ヒヒィ~~~ン!」
十二支精霊の午、エドちゃん。
サーシアの愛馬だ。
大きさはポニーくらいの可愛いやつ。
でもとっても速いよぉ。
飛ぶように駆けるよぉ。
実際、浮いてるし。
揺れないし。
お尻に優しいリニア式。
あっとゆーまに西門に着いた。
『イワン~!』
「やぁ、サーシア。」
『さっさと終わらせて、ピクニックに
行きましょう!』
「手伝ってくれるのかい?」
『えぇ!草刈りはラムちゃんが得意なの!』
お前がするんちゃうんかぁ~い!
会話が成立している様に見えるけど、
イワンにはサーシアの言葉は聞こえない。
パクパク動く口を見て、何となく
合わせているだけだ。
それが不思議と噛み合ってるんだな~
相性バツグン!
さすがだねぇ~
十二支精霊の未のラムちゃん。
それと丑のシモフリちゃんも呼んで
草刈り、と言うよりも食べてるよねそれ。
すんげ~ハイペースで食べてるよね。
あっとゆーまに終わった~
「いつもありがとう。サーシアが居ると
仕事が早く終わるから助かるよ。」
『当然ですわ!』
お前はエドちゃんの上でふんぞり返ってる
だけじゃねぇ~か!
仕事したぜっ!みたいな顔するなよな!
『さぁ!ミルベの丘でお昼にしましょう!』
「お弁当を作ってくれたのかい?」
『えぇ!』
ルルナがな!
ほんとに出来た子だよ、ルルナは。
「ちょっと待って、サーシア。」
って言って、急いで作ったんだよ。
それなのに感謝もしないで、
『早くしなさいよ。』
とか罰当たりな事を言ってたよな!
まったく、ルルナのパンツを煎じて
飲ませたいよ。
そうそう!
パンツと言えば、ハニーが例のお告げで
青きパンツを~とか言ったもんだから
サーシアは、おしめの時からずっと青色の
下着をあてがわれているんだ。
すっかり青きパンツの聖女伝説が広まって
いまさら撤回は出来ないからね~
サーシアも渋々受け入れている。
本当は白派なんだけど、色でパンツを
差別するのは主義に反するからね。
『すべてのパンツに愛を!』
朝早く起きて心を込めて手洗いするんだ。
そして日当たりの良い所に干す。
きまって物干し棹の右端。
こだわりの定位置!
それだけは面倒くさがらずに自分でする。
『パンツさん!いつもありがとう!』
感謝の言葉と共に。
ルルナに感謝せぇ~よ!




