第36話 面倒くさいですわねぇ~
「アジャ~!アジャパ~!」
両親からはミドルネームで呼ばれている。
サーシアは気に入らないようだけどね、
愛情たっぷりに育てられているよ。
「ユーリ、アジャはどこ行ったの?」
「イワンの所だと思います。」
ルルナは家事のお手伝いで洗濯物を
干している。
うんうん、良い子だね~
「もう!部屋の掃除もしないで!」
「あぁ、後で私がしときます。」
「駄目よ!そーやってあなたが
甘やかすからワガママなのよ!」
いやいや~奥さん、サーシアのワガママは
筋金入りでっせ!
今更どーにかなるもんやおまへん。
「まったく、あの子は!ユーリにばっかり
押し付けて!」
「私は構いませんよ。」
「ユーリ、妹が可愛いのは分かるけど、
あの子の為にならないわよ?」
「サーシアはあれで良いのです。」
「良くないわよ!あぁ、将来が心配だわ。
あんな調子で聖女になんか成れるのかしら?」
あんな調子だからこそ聖女なんですよ~
さてさて。
早いもんでサーシアとルルナは10歳に!
これまでの出来事をパラパラっと紹介するね!
まずはイワンの事なんだけどね。
やたらと精霊にすかれるなぁ~って思ったら、
なんとレイサン家の血統だった!
そう!前世のサーシアの子孫!
どうして解ったかとゆーとー。
双子の誕生を聞いた聖地モスクピルナス
(以下モスピ)
そのモスピで待機中の連中が訪ねて来てね。
その時、接待の手伝いに来てたイワンを
ミサが目撃したわけよ。
ほら、ミサはレイサン家専属だったじゃん?
だからピィ~ンと来ちゃったわけよ。
「うわぁ~まだ残ってたんだぁ!
この顔~!なつかしいなぁ~!」
言われてみれば特徴的なネズミ男顔は、
レイサン家直系男子の顔つきだよね。
すっかり忘れてたよ~
レイサン家は変わった家系でね。
女子は必ず聖女として生まれる。
しかも!とびきりの美少女ときたもんだ!
だけど男子は漏れなくネズミ男。
そもそも男子は滅多に生まれない。
三世代に一人くらいだったね。
だからとても大事にされたよ。
カルアンの再来!とか言われてね。
あぁ、カルアンってのはサーシアの夫。
サーシアが愛した男。
サーシアを愛し抜いた男。
目が見えるようになってから、
イワンを初めて見たサーシアは、
そりゃ~もう喜んでね。
すぐ解ったそうだよ。
さすがだね~
それからね。
ダモンの地は大発展したよ。
幾つもの集落が出来て、全部合わせると
人口は十万人を超える。
移民も多いけど、近隣の集落も傘下に入って
平野部にまで支配地域が広がったんだよ。
精霊の存在が大きいね。
ハニー、モモ、ルルベロの三柱に加えて、
ミサ、サリーちゃん、ミコ、魔子も来た。
みんな待ちきれなかったんだね。
精霊の守護する部族、ダモン。
その噂は遠くまで伝わっているよ。
それで肝心の祭壇の再起動なんだけどね。
実はまだなんだ・・・
ちょっと事情があってね。
サーシアとルルナは半精霊だから、
精霊契約が無くても魔法が使えるんだけど
今は駄目なんだよ。
セキュリティーロックが掛かっていてね。
二人の遺伝子情報とか肉体組成とかを
システムに登録しないと魔法が使えない。
登録する為にはスキャニングしないとね。
そのスキャナーが祭壇なんだよ。
え?ダモンの祭壇を使えば良いって?
それがね~
各地の祭壇は端末なんだ。
メインサーバーはモスピの祭壇なのね。
まずモスピの祭壇を稼働させないと、
ローカルの祭壇も動かないのよね。
だからそれまでは魔法が使えないのよ。
つまりね。
サーシアとルルナは延々と旅をして
モスピまで行かないと駄目なんだよ~
それを聞いたサーシアが何て言ったのか?
もちろん決まってるよね!
『面倒くさいですわねぇ~』




