第34話 サーシアとルルナ
『ねぇルルナ、聞こえてる?』
『えぇ、聞こえてますよ。』
『ちょっと早過ぎるのではなくて?』
『そうでもないですよ、確か一万年は経って
いる筈ですからね。』
『え?何の話ですの?』
『何のって、サーシアが言ったんですよ?
早過ぎるって。』
『私が言ってるのは、なんで意識が有るの?
って事よ。
まだ産まれる前じゃないの?』
『そうですね。胎児ですね。』
『でしょう?何にも見えないし、
しょっぱいし。』
『薄めの海水と同じですからね。』
『あら、そうなの?』
『えぇ、原始の地球ではこれくらいの
塩分濃度だったんですよ。』
『へぇ~そうでしたの~
ってそんなのどうでも良いですわよ!
生まれもしていないのに意識が有るのは
早過ぎるのではなくて?って言ってるの!』
『臨月なんだから意識くらいありますよ。
知能が育ってないから理解してないだけで、
胎児にも自我はあるんです。』
『あら、そうでしたのね。』
『私達は人格を転写したから状況判断が
出来ているんですよ。』
『そーゆー事でしたのね。
ところで一万年って何の事ですの?』
『前回死んでから一万年が経ってるって
事ですよ。』
『え?また同じ星に転生しますの?
何で?』
『トラブルが在ったようですね。
祭壇の再起動が今回の使命です。』
『そんなの一旦スイッチを切ってから
もう一度入れたら良いでしょうに。』
『パソコンじゃないんですから、
そんな簡単じゃありませんよ。』
『祭壇のスイッチ押す為に転生しますの?
めんどくさいですわぁ~』
『ほら出た、いつものが。』
『それはそうと、さっきから顔に当たって
いるのは足ではなくて?』
『狭いからしょうがないですよ。
お互い様ですね。』
『これが足なら、この辺かしら?』
『ちょっ!ちょっとサーシア!
どこ触ってるんですかっ!』
『いや~ちゃんと穴が開いてるかな?って』
『人間なんだから開いてますよっ!』
『精霊の時は無かったでしょう?
気になって~』
『だからって触っちゃ駄目ですよっ!
そこはデリケートなんですからっ!』
『ところでルルナ?』
『なんですか?サーシア?』
『何で逆立ちしてるの?ルルナは。』
『私は正常ですよ。サーシアが逆子です。』
『え?それって大丈夫なのかしら?』
『いやぁ、良くないですね。』
『ど、ど、どうしたら良いのかしら?』
『手足を動かして方向転換してみたら
どうですかね?』
『こ、こうかしら?』
(あ~!動いたぁ~!カイザ~動いたよ~)
(どれどれ~ほんとだ!元気一杯だねぇ~)
『何を呑気な!こっちは必死ですのよ!
手も足も小っちゃいから空回りするだけ
ですわよっ!』
『このままだと、かなりの難産ですね。」
『この紐がジャマなのよ!』
『駄目ですよ!切ったら!それ、
へその緒ですからね!死にますよ!』
『狭くてどうしようもないわね。』
『私が先に出るでしょうから、その時に
足を掴んで、くるっと回転して下さい。』
『そうね、それしかなさそうね。』
***
『ねぇ、なんかブルブルしてない?』
『収縮が始まりましたね。いよいよです。』
『やっと生まれるのね~待ちかねたわよ。』
『じゃぁ打合せの通りに上手くやって
下さいね。』
『分かってるわよ、足を掴むのでしょう?』
『そうです。あっ来ました!行きますよ!』
『私が妹なんて気に入らないわ。』
『今更なに言ってるんですか!ほら!
早く掴んで!』
『え?もう?ちょっと待って!足どこ?
これ?バタバタしないでちょうだい!』
ズルっ!
『あっ!離しちゃった・・・
ルルナぁ~?出ちゃったのぉ~?
おぉ~~~い!
・・・・・・
あらまぁ、どうしましょう?
・・・・・・
ヤバイですわよね~これ。
・・・・・・
なんかどんどん狭くなってませんこと?
押し出されてますわね・・・
うっ!
ジャマなのよね!この紐!
へその緒かなんか知りませんけれど、
うっとおしいですわっ!
あっ!か、絡まった・・・
首が・・・首が締まる・・・
・・・苦しい・・・ですわ・・・』
***
「まぁ!大変!息をしてないわ!」




