*第32話 訳あり物件
この立地条件で?
しかもこの間取りで?
なんでこんなに安いの?
俗に言う訳あり物件。
実は違法建築だったとか、
隣に暴力団の事務所が在るとか、
地盤沈下しているとか。
「出るんですよ・・・」
とか・・・
そんなのぜんぜん気にしないよ!
と言う人には、とっても有難い物件だ。
***
「嫌ですよっ!こんなとこっ!」
「えぇ~蛇も蟲も追い出したし~掃除もちゃんとしたよ~?」
「だからって、こんな山奥で生活するなんてまっぴら御免ですよっ!」
そこそこ大きい遺跡だ。
精霊殿も在る。
枯れたと言われているけれど、探せば未発見のお宝が出るかも知れない。
でも誰も寄り付かない。
危険生物の巣窟だったからだ。
城跡こそ奇麗に片づけたものの、周りは相変わらずの密林状態だ。
一番近い集落へ行くにも四日かかる。
「子供が生まれたって友達も出来ないじゃないですか!」
「どうせサーシアに友達なんか出来ないよ~ルルナが居るからそれで良いじゃ~ん」
「いったい私は何を産むんですかねぇ!とにかくっ!嫌なもんは嫌ですっ!」
さぁ困ったぞ!
イリュパーがゴネ出した~
でも気持ちは解る。
いくらラブラブな二人でも、旅をするのと定住するのとでは違う。
元々イリュパーは大きな集落で生まれ育った、今で言う所の都会っ子なんだ。
「え?圏外?スマホ使えないの?」
みたいな?
「ありえないんですけどぉ~」
的な?
「カイザも何か言ってよ!」
「あ、あぁ・・・そうだな・・・」
「ほらっ!カイザも嫌だって言ってますよ!」
言ってるのか?
「他にも人が居れば良いの~?」
「えぇ、まぁちゃんとした集落なら。」
「うん、分かったよ~」
そう言うとハニーは何処かへ出かけて行った。
どうするつもりかな?
***
「え?移住?」
「うん、最初は百人くらいで良いかなぁ~」
「廃墟の遺跡だろ?再建するなら二千人は必要じゃね~か?」
「じゃ~それくらいね~」
おいおい~
簡単に言うなよ~
庭の池でメダカ飼うんじゃ無いんだからな。
「だってよ、若くて元気なのが良いな。」
「任せて下さい!一万でも用意します!」
テレテンサはモモに絶対服従だな!
「兵隊が必要なら言ってくれ。」
「そう?じゃぁそれも。」
「承知した。」
アゴネスも積極的に協力する。
精霊様の要望だからね。
「イワン、お前も行くか?久し振りに里帰りでもしたらどうだ?」
「あ~そうだね~村長に水車小屋を直せって言われてるからね~」
覚えてたのか!
たぶん他の誰かが直してると思うぞ!
「じゃぁみんなで行こうよぉ。
イリュパーって子も見てみたいしぃ。」
ルルベロはイワンと離れたくないんだね。
祭壇が稼働したら契約しようね。
楽しみだね。
とゆ~わけでぇ~
護衛隊こみで三千人の移民団が編成された。
民族大移動だね!
到着は半年先かなぁ?
***
「って事だから~」
「ほんとですかぁ?」
「うん、ちゃんとした集落になるよ~」
「それなら良いです・・・けど・・・うっ・・・おぇっ・・・」
あれ?あれれ?
急にどうしたの?
もしかして~?
ひょっとしてぇ~?
オメデタかなぁ~~~?




