*第31話 この広い野原いっぱい
やばいよ~やばいよ~
いや、なんとなく予感は有ったけどさぁ~
いざそうなっちゃうとね、やっぱり困る。
どうするかなぁ?
「ごめんなさい・・・ハニー様・・・」
「そ~かぁ~、しょうがないかぁ~」
初めてのお化粧に失敗して泣いているイリュパーを慰めている内にね、
その・・・なんかそーゆームードになっちゃってね・・・
親指で涙を拭いてあげたりなんかしてね、
見つめ合ったりなんかしちゃってね、
顔が近いよ~なんて感じでね、
目を瞑ったりなんかしちゃってね、
唇が薄っすらと開いてたりするのよね。
でっ!
朝まで一緒だったわけよ!
しちゃったわけよ!
詳しくは書かないけどさぁ~!
朝早くからシーツ洗ってんじゃねぇ~よ!
ごめんなさいとか言いながら幸せそうな顔してんじゃねぇ~か~!
ハニーも何所へ行ってたんだ!
お前が目を離すからこうなったんだぞっ!
まぁ最初の子じゃなきゃ駄目ってわけでも無いから?
前の時も三番目の子だったし?
カイザには悪いけどNTRでダモンの男と子作りして貰ってだね。
で、サーシアを産んで呉れたら良いけどね。
え?
倫理的にどうかって?
そんなこと知らないわよっ!
人類の存亡が掛かってるのっ!
この時代、近親でも子作りするのっ!
NTRくらいで騒ぐんじゃないわよっ!
「怒らないんですか?」
そ~言えばやけに冷静だな?ハニー?
計画の大幅変更をしないといけないんだよ?
「それがね~もうすぐ着くよ~ってモモに知らせようと思って
行ったんだけど~何所にも居無くてさぁ~
あちこち探したらキキル大陸に居てね~」
「モモ?キキル?」
あっ!そ~だった~~~!
ダモンは消息不明だったぁ~~~!
忘れてたぁ~~~!
モモの調査報告によると、どうやら種族としてのダモンは
消滅したかも知れないとの事だった。
バラバラに散逸した血筋は相当に薄まっているだろう。
仮に子孫を見つけ出したとしても、もはやダモンとは呼べない。
むしろチャーフの血統が残っていた事が奇跡的だったんだよね。
え~っと~
どうなるの?これ?
システムの判断は可能な限り再現性を高め、
サーシアの誕生に備えよとの事であった。
取りあえずは旅を続け、ダモンの地へ。
せめてそこで産めって事らしい。
昔のダモンとは全く環境が違うけど、座標が重要なんだそうだ。
でもあそこは今、毒蛇の巣窟だよ?
十二支達が追い払えば良いけれど、爬虫類と蟲のフンだらけだよぉ。
お掃除が大変!
「じゃぁ!カイザとの結婚を認めてくれるんですね!」
「認めるもなにも~私に止める権限は無いよ~」
まぁこうなったら成り行きに任せるしか無いよね~
そもそも完璧に再現なんて想定は始めからしていないんだし。
じゃぁ何の為?
簡単に説明するとね。
iPhone のアプリをAndroid にインストール出来ないでしょう?
逆もそう。
ちゃんとOSとアプリの規格を合わせないと動かない。
普通は肉体と人格が共に少しづつ成長して形成されて行くのだけれど、
サーシアの場合は、すでに出来上がっている人格を丸ごと転写して生まれるわけ。
相性が悪いと肉体か精神か、あるいは両方が拒絶反応を起こすかも知れない。
とは言ってもサーシアは最初から人格が破綻しているようなもんだから、
精神的には考慮する必要は無いかもね~
でも肉体が拒否したら?
流産や死産もあり得るよね。
もし今回が駄目だったら次はいつになるやら。
実はね。
前回も結構な回数を失敗しているんだよ。
本人は知らないから、ここだけの話しね。
ようやく見つけた器がチャーフとダモンの間に出来た娘だったんだよ。
さてと~
ぐだぐだ言ってもしょ~がないから、とっとと行きますかねぇ。
この広い大平原を抜けたその先、ラーアギル大山脈へ。
ダモンの地へ!




