*第27話 帰らざる日のために
こんな辛い目に遭うのなら・・・
明日に光が無いのなら・・・
楽しかった思い出が、
これ以上薄れてしまわない内に
死んでしまおう。
今ならまだ笑える。
笑顔のままで死のう。
帰らざる日のために・・・
***
「ねぇイリュパー。」
「何ですか?今更やめたは無しですよっ!」
盗賊のアジトと化した精霊殿に向かう山道を、
ハリマオちゃんに乗って駆け抜ける。
「そうじゃ無くて~今の内に言って置かないとね~」
「何をですか?」
「ゲルダって子、死んでるかも知れないよ?」
「そんなっ!」
「そーゆー場合も有るって考えとかなきゃね~」
「何でそんなこと言うんですかぁ!
今から助けに行くのにぃ!酷いですよぉ!」
なんか・・・泣きそう・・・
でもねイリュパー。
どんなに力が強くても駄目な時がある。
様々な要素に宿る、それぞれの可能性とその確率。
人はそれを「運」と呼ぶ。
絶えず変化し続ける波紋に浮かぶ小舟。
それが命だよイリュパー。
運ばれた先の何所に辿り着くかは誰も知る事の叶わない。
だからねイリュパー。
どうするかを決めて置かなければならないんだよ。
もしそうだった場合の行動をね。
「そんなの・・・分かりませんよ・・・」
「ガウガウ~グルル~~~」
「サーシアなら迷わないよ~」
皆殺しだよね!
「いったい私は何を産むんですかねぇ?」
「じゃぁこうしようよ~
ジロキチちゃんに潜入して貰ってさ~
ゲルダが生きてるかどうか調べてね~
生きてたら救出を優先して~
死んでたら盗賊を殲滅~」
ものは言いようだね。
結局はどう転んでも皆殺しでしょう?
「はい、それで良いです。ジロキチ?」
「うん十二支精霊の子のジロキチちゃん。」
「チュ~~~!」
「わぁ~可愛い~!」
ちょっとだけ癒されたね。
「チュ~チュチュチュ~チュ~」
「お願い!生きていてゲルダ!」
***
近くの岩陰で待つ事しばし、
人相年恰好の当て嵌まる人物は何所にも居ないそうだ。
嫌な予感がする。
胸が苦しい・・・
「で、出かけてるのかな?荷物持ちとか雑用で・・・」
「制圧して聞いた方が早いよ~」
「そうですよね・・・」
「手っ取り早くしなきゃね~
危ないからイリュパーは此処で待っててね~」
攻撃隊として更に十二支精霊を呼び出した。
申のサスケちゃん。
戌のヤツフサちゃんとその分身体の八犬士。
これにハリマオちゃんとハニーが加わって
これでもか!ってくらいの戦力。
攫われた人達を救出するための部隊は
未のラムちゃん。
亥のボタンちゃん。
酉のガンモちゃん。
盗賊が逃げないように追い込むのは
丑のシモフリちゃんと
巳のリンゴちゃんと
午のエドちゃん。
そしてイリュパーのお守役として卯のモチツキちゃん。
ジロキチちゃんもねっ!
オージーちゃんは陸上が苦手だから今回はお休み。
一人は可哀そうだからタツノコちゃんも一緒にお留守番。
「久々にフルバージョンで変身するかな~」
「フルバ~???」
「うん、ちょっと長いからサーシアに怒られるんだよ~
あの子気が短いから~」
「私は何を産むんですかねぇ・・・」
「ある時はキャピキャピのアイドル~!
またある時は優雅な淑女~!
しかしてその実態は~!
ハニーフレ~ッシュ~!!!
エロの戦士!キューピーハニーさ~!」
クイ~ンスペシャル~~~!
極楽鞭秘も装備!
さぁ!
弱い者いじめの始まりだぁ~!
・・・
10人程を助け出した。
殆どが子供だ。
定期的に来る人買いに売っていたようだ。
盗賊は全部で63人。
首領以外は殺した。
その首領も死にかけだ。
体はズタズタに裂けている。
なのに嬉しそうに笑っている。
極楽鞭秘の作用だ。
さぞかし気持ちが良いのだろう。
「ゲルダって娘が居たでしょう?」
「はい~ひひひひ居ました~えへへへ」
「その娘はどうしたの?」
「いひっ!死にました~いひひひ。」
あぁ~やっぱり・・・
「殺したの?」
「うへへ、目を離したらナイフで首を、
あはははは、自分で首を切って~
あひゃひゃひゃひゃ~
もっと楽しんでから売るつもりだったのに
うふっうふふふふ
へらへら笑いながら死にやがった~
あははははははははは。」
辛かったろうね・・・
怖かったろうね・・・
痛かったろうね・・・
悲しかったろうね・・・
本当は生きたかったのでしょう?
間に合わなくてごめんね・・・
「ハニー様、術を解く事は出来ますか?」
「うん出来るよ~」
「解いて下さい!こんな笑顔で死ぬなんて!
絶対に許せない!お前はっ!お前はっ!」
<苦しみ抜いて死ね!>
その言葉は込み上げる涙で言えなかった。




