*第25話 北へ
かつてバルドー帝国の都として栄えた大河シアラムの河口。
今は小さな漁村が在るだけ。
残念ながら此処に遺跡は無い。
都が在ったのに?なんで?
実はね、バルドーの都はサーシアの逆鱗に触れて塵に還ってしまったのだよ。
以来、呪われた地として復興もされないまま誰も寄り付こうとはしなかったんだ。
全てが忘れ去られた今、ようやく漁村として再び人の暮らしが戻って来たんだよ。
嵐が多くて潮気が強いから農作には向いていないけれどね。
飲み水には困らないし、海の幸は豊富だし暮らしは充分に成り立つよ。
「私も行きたいのは海々だけど、ほら、私達ってお肌が敏感でしょう?
陸の上は苦手なのよね。」
魚人だからねぇ。
「じゃぁ此処でお別れね、セイレン。
あなたが案内して呉れたから、とっても快適だったわ!ありがとう!」
「また会える?」
「えぇ!必ず!」
いち早く悪天候を察知して上手に避け、海流に乗ってのスムーズな船旅だった。
尽きないおしゃべりで退屈もしない。
「男が胸を見ても知らないフリをするの。
バレバレなんだけどね、指摘しちゃ駄目よ。
ちょっと前かがみになってあげるの。
そしたらイチコロよ!」
「ふぅ~ん、そーなんだぁ~」
「逆に胸を見ない男は信用できないわね。
プライドばかり高くて自分勝手なのよ。」
「へぇ~、なるほど~」
すっかり耳年増~
名残は尽きないが、そろそろ行こうか。
手を振り、振り返り、また手を振る。
今度会う時は子連れかな?
なぁ~んて!
「何をニヤケてるの~?」
「なんでもなぁ~い!」
***
「ポールアンカ!ダイアナ!」
「ニールセダカ!オーキャロル!」
「ロネッツ!ビーマイベイベー!」
またこのパタ~ンか・・・
翻訳が済むまでハニーに通訳して貰うか。
実は斯く斯く然々でと事情を伝える。
「エルビスプレスリー!ハウンドドッグ!」
なんか面倒くさいので三日が経ちました!
翻訳完了!
別にいいじゃん~~~
当初の計画よりもかなり南へ来てしまった。
取りあえずはシアラム沿いに北上だな。
源流となるデンデス山脈を越えれば、かつてのオバルト王国。
これからの移動はハリマオちゃんの背中に乗って行く事にした。
「エドちゃんでと思ったんだけど~
サーシアしか乗せたくないって言うから~」
「ガウガウ~グルルル~~~」
「エドちゃん?」
「うん午のエドちゃん。」
「ウマってなんですか?」
「パカパカ走るやつだよ~」
「???」
説明へたくそ!
まぁ~でもハリマオちゃんには乗り馴れてるしね!
「聖女様が生まれたら、是非またこの村にお越しくださいね!」
「うん、約束するよ!」
河沿いに点々と集落があるそうだ。
遺跡も幾つか在ると言う。
そのひとつには祭壇が在る筈だから現状を見て置こうかとゆー事になった。
***
速い速い!
さすがハリマオちゃんだ!
本当はもっと速く走れるんだけどね、
イリュパーが風圧に耐えられないからねぇ。
漁村を出発してから3日目。
早くも中流域に差し掛かっている所だ。
この調子だと10日もしない内にデンデス山脈を越えるんじゃないかな?
「あっ!人が倒れてる!ハリマオちゃん!止まって!」
街道脇に行倒れている人が!
若い男だ!
「あ、あのぉ~生きてますか~?」
「う・・・ゲルダ・・・」
「酷い怪我・・・なんとかしないと。」
「ガンモちゃぁ~ん!次の集落までどれくらいある~?」
上空からナビゲーションしているんだよん!
「コケッコケッコ~!」
「そこまで連れて行きましょう!」
「じゃぁお願いね!シモフリちゃん!」
「え?誰?」
「ンンンンンモォ~~~!」
「で!でかっ!」
十二支精霊の丑、シモフリちゃん。
高さはハリマオちゃんと変わらないけど太さがハンパじゃない!
大迫力!
ものすご~く重たそうだけど、やっぱり少し浮いている。
精霊だもんね。
スイスイと滑るように進む。
広くて柔らかい背中。
サーシアも絶賛した乗り心地!
まぁ見た目がアレだからねぇ、もっぱらエドちゃんに乗ってたけど。
近くの集落に着くと、最近始めたハニーの精霊パフォーマンスをかます!
盛大にファンファーレを奏でて、ギラギラと輝きながら舞い降りる。
これをやると話がスムーズに進むんだ。




