*第24話 そこをなんとか!
数十万の兵士たちが、みんな空を見上げている。
青い空と白い雲。
ほら!見てごらん!
あの雲はカメさんが交尾してるみたいだね!
な~んて呑気な状況では無いのだよ。
剣も槍も意味ないじゃ~ん。
弓矢も届かないよぉ~。
防衛線?
相手は精霊だよ?
仮に君たちの言う悪霊だったとしてもだ、
てくてく歩いて来るわけが無いでしょう?
瞬間移動だって出来るんだよ?
わざわざ飛んで来たのはサービスなんだよ。
分かり易い様にキラキラ光りながらね。
嫌でも理解するから。
無理だって。
「あはははは!あの間抜けな顔~」
ルルベロは大喜びだ!
「みんな怪我しなくて良かったですね~」
「そうだねぇ。イワンは優しい子だねぇ。」
もう養子にしちゃえば?
システムに申請してみたらどう?
案外に通るかもよ。
「さぁ!私達も行こうか!」
「え?危ないですよ!」
「大丈夫だよぉ、向こうからは
見えないからぁ。
離れていれば見つからないよぉ。」
光を屈折させているんだ。
前に説明したけれど、未契約の状態で
魔法の影響下に置くのは危険だから、
周りの空気の密度を調節してるんだよ。
ルルベロは制御系の魔法が得意なんだ!
職人タイプだね。
***
「せ!戦況はっ!前線はどうなっている!」
「それが・・・まだ何の報せも・・・」
「どう言う事だ?接敵したのだろう?」
「その筈ですが・・・」
「まだ混乱してんじゃねぇ~のか?」
「乱戦になったのか?伝令も出せないのか?」
「いやぁ~どうして良いか分かんねぇんだろ。」
「万人長は何をしているのだ!」
「空を見てんじゃねぇか?」
「空?なんで?」
「・・・・・」
「えへっ!来ちゃった!」
「ぎゃぁぁぁ~~~!!!」
鎧が重たくて逃げれない~
「ほれほれ~」
「うわっ!うわっ!うわ~~~!」
そんな大層なもん着てるからだよぉ。
いつもはもっと軽装で機動力重視なのに、
恐怖心で判断を誤ったんだね~
「ちゃんと奇麗に洗ったかぁ~?」
「ま、ま、待ってくれ!話をしよう!」
「何の?」
この大陸では争いが絶えない。
国として纏まっていなければ守り切れない。
「もはや私だけの問題では無いのだ!
たのむ!見逃して呉れ!」
おしりを手で隠しながら懇願する。
貞操の危機一髪!
経験しちゃう?
要するに人心を掌握する為の金看板が
欲しいと言うわけだ。
「駄目だ、精霊の子孫なんて認めねぇよ。」
「そこをなんとか!」
「じゃぁ、こーゆーのはどうだ?」
モモが妥協案を提示した。
「なるほど!それならば異存は無い!」
おしりを手で隠しながら同意した。
そんなに怖がらなくても~
モモの提案はこうだ。
蒼き狼を封印する代わりにモモが
精霊のお墨付きを与えるのだ。
王権神授説ならぬ王権精霊授説だね!
精霊が認めた支配者。
つまり「王」の誕生だ!
この世界で初めての国家は、期せずして
この世界で初めての王国となるのだ。
「王?ですか?」
「そうだ、精霊の祝福と共に在る。
それが王だ。」
逆に精霊との絆を失えば、その地位も
失うと言う事だ。
あくまでも権威は精霊に帰属するのだよ。
「今日からてめぇはチャーンでは無く、
アゴネス王と名乗れ。」
「アゴネス王・・・」
後の世に「鉄板王」と呼ばれる事になる、
モルゴン帝国始祖アゴネス王。
その鎧のお尻に二枚の鉄板が入っている。
何故そんな所に?
様々な説が在るが真実は謎とされている。
なぁ~んて事になるかどうかは知らな~い。




