*第23話 それを言うなら首だから~
さすが歴戦の強者だ!
太刀筋は抜刀術に似ている。
縮地で間合いを詰めながら抜刀横払い、
袈裟に切り上げてからの勢中切り落とし!
流れるような一連の技。
何人もの敵を屠ってきた必殺の斬撃だ!
まったく手応えが無い・・・
あ・・・ヤバイ・・・
次の一瞬、鳩尾に衝撃が来る。
突き飛ばされて転がる。
息が出来ない!
「うげぇ~!」
ゲロに血が混じっている。
「げひゅ~げひゅ~ごふっ!ぐひゅ~ぐひゅ~」
如意竹刀って言うんだよ~
撲殺専用の武器なんだ!
刃こぼれとか関係ないから何人でも殺せるよん!
これでもかなり手加減したんだよね~
内臓を突き破るくらい簡単だもん。
なんだかんだ口は悪いけど優しいんだよ。
サーシアだったらとっくに殺してるよん。
「そんなもんでアタイが殺れると思ってんのか?」
そうだよ?
だから切りつけたんじゃないか。
なに言ってんの?
そうだよねぇ?アゴネ・・・
あ!逃げた・・・
うわぁ~すんげぇ~逃げ足!
カールス・ロイスみたい~
仲間を置いてきぼりだ!
「あはははは!清々しいくらいだねぇ。」
ルルベロが大喜びだよ。
実はさっきから退屈してたんだよね。
モモが勝つに決まってるから。
イワンなんか寝てるよぉ~
よだれ~~~
「大将が逃げたぞ?てめぇらはどうする?」
「いや我らはただの付き添いですので。」
「いつもの事ですし・・・」
危なくなったらサッと逃げる。
でもしつこく粘着して勝つまで何度も
何度も何度も何度も・・・
それがアゴネス流なんだそうな。
「そうか、諦めない奴なんだな。
てめぇらも帰って良いぞ。
あいつに言っとけ、逃がさねぇからな。
ケツの穴を洗って待ってろ!」
首だから~!
それを言うなら首だから~!
如意竹刀を突っ込むつもりかな?
けっこう太いよ?それ。
いきなりはやめてあげてね
切れちゃうから~
***
精霊の名を騙る悪霊が現れた。
放って置けば災いを呼ぶであろう。
ただちにこれを成敗せねばならぬ!
国中に号令が発せられて、数十万の軍団が編成された。
何重にも防衛線が張られて迎え撃つ体制が整った。
「おい、うちの大将ずいぶんと慎重だな。」
「あぁ、いつもはもっと攻撃的なのにな。」
「あの鎧みたか?」
「あぁ、動けるのか?あれで。」
アゴネスは守りに徹した。
分厚い防衛線を突破するうちに、やがて疲れが来るだろう。
そこを包囲して仕留める!
鎧も新調した!
かなり重たいけれど頑丈だ!
特におしりには二重に鉄板を入れてある!
一応きれいに洗った・・・
「チャーン様!斥候から報せが来ました!
第一防衛線に悪霊が現れたと!」
「うむ!いよいよだな!」
おや?その青年は確か南部砦から来た
伝令役の・・・ラマルンだったかな?
随分と小ざっぱりして、良いベベ着せて~
ほぉ~
そうかそうか~
まぁ~頑張りたまえよ。
***
「さてっと~そろそろ行くかな~」
「時間は充分にあげたからねぇ。」
「ルルベロもやるのか?」
「私は見物してるよぉ。イワンを置いてくのは心配だしぃ。」
「そうだな、間違って巻き込まれたら怪我するしな。
ちゃんとお守しとけよ。」
「うん、任せといてぇ。」
どんどん過保護になってるな。
馬鹿な子ほど可愛いって言うしな。
当のイワンは、すっかり懐いた例の鹿に跨っている。
マリョータと名付けて可愛がっている。
たしか前に飼ってたイクアナもマリョータだったんじゃなかったか?
知らんけど。
「イワン~もうすぐ始まるよぉ。こっちにおいで~」
「はぁ~い!」
五歳児かっ!




