*第22話 あいでんてて~
自分が何者であるのか?
自我同一性。
それをアイデンティティと言うそうだ。
存在証明とも訳すらしい。
ラテン語のidem:同じ が語源だとか。
「私は〇〇である。だから△△で□□する。」
つまり、自分の行動に対して明確な規範を持っている状態である場合に、
アイデンティティが確立している、または自我同一性が有ると評価するそうだ。
思うに究極的には単なる「糞タレ」である。
「私は糞タレである。だからトイレでウンチする。」
自我同一性の極地だ!
でも普通はもっと高尚な理由付けを求める。
贅沢な生き物だからねぇ、人間は。
そのくせ楽をしたがる。
理由付けをする上で最も安易なのが、ステレオタイプに染まる事だ。
国籍、民族、性別、職業、身分。
こう在るべきだと言う固定観念のままに、それ以上に考える事を放棄するのだ。
だって考えるほどに解らなくなるからね。
どうせ辿り着く先は「糞タレ」なんだから。
悩むだけ悩んで結局はミミズと大して変わらないなんて嫌だもんね~
ほら!見てごらんよ!
キラキラと輝く既製品が棚に飾られているよ!
お値段もお手頃じゃん!
わざわざ手作りするなんて時間の無駄だよ~
馬鹿にされるだけだよ~
買っちゃおうよ~
みんなそうしているよ!
確かにそれも一理あるんだ。
社会とはそうして成り立っているからね。
ある程度の規格内に収まっていないと管理なんて出来やしないもんね。
でもね。
分かって欲しいんだ。
既製品がどうしても合わない場合もある。
苦痛で堪らない事もあるんだよ。
だから手作りするんだ。
恰好悪くてもね。
馬鹿にするのは勝手だけれど、お願いだから邪魔しないでおくれ。
***
「てめえの事情なんか知るかっ!
精霊に子孫なんか居ねえんだよっ!
人間と子作りなんかするか!
馬鹿じゃね~のか?
蒼き狼だぁ?
動物精霊は白と相場が決まってんだ!
たわけた事ぬかしやがって!
ブチ殺すぞっ!この野郎!」
モモちゃん怖ぁ~い。
気の毒なアゴネスちゃん顔面蒼白じゃん。
自尊心をグチャグチャに踏み潰された~
もうね・・・
最初はニコニコだったアゴネスちゃん。
五千人の隊列を組んでやって来たわけよ。
いっぱいお土産持ってさぁ~。
てっきり喜んで貰えると思ってたんだよね。
精霊の子孫なんだから身内みたいなもんだ!
って考えていたんだ。
「よく来たな子孫よ!会えて嬉しいぞ!」
みたいな?
「そなたに祝福と力を授けようぞ!」
的な?
色々と妄想がパンパンに膨らんでいたのよ。
ところが~だ。
「精霊にケンカ売るとは良い度胸してるじゃねぇ~か!」
いきなりそー言われてさ。
「へ?」ってなったわけだ。
そりゃそ~だわさ~
そんなの想定外だわさ~
で、言っちゃったんだ。
「蒼き狼の導きにより参上致しました。
争うなどは微塵も心に在りませぬ。」
子孫ですよアピールしちゃった!
あぁ~~~
駄目だこりゃ~~~
てかりや長吉くらい駄目だぁ~~~
プチンって音が聞こえた・・・
モモのこめかみから・・・
あれ、何が切れるんだろうね?
そこからはブチ切れたモモに一方的に罵声を浴びせられて全否定~
あいでんてて~崩壊~~~
何故かテレテンサはウットリ~
これはマズイ・・・
どうにか冷静さを取り戻したアゴネスは、
己の立場が危うくなった事に気付いた。
国をまとめるにはカリスマ性が必要だ。
蒼き狼は、その象徴として機能している。
今更、違いましたでは済まないのだ。
どうする?
「そなたは真に精霊であるのか?」
「なんだぁ~?イチャモンつけるのか?」
「精霊を騙る悪霊ではあるまいな。」
「はぁ~あ?」
そうかぁ~
そーゆー方向に行くのかぁ~
看板を下ろさないって事なんだね?
あくまでも精霊の子孫であると。
「そなたが精霊ならば証を見せよ!」
宙に浮いて、パンツ丸見えだけでは納得できないと言い出した。
悪霊でもそれくらいする筈だと。
「ふん!そんな必要は無い。」
「出来ぬと申すのか!」
「必要が無いと言ったんだよ。」
「やはりそなたは悪霊なのだな!」
「だったらどーするんだ?」
「成敗してくれようぞっ!」
うわぁ~
モモに思いっきりケンカ売った~
爆発するぞぉ~
あれ?
笑ってる?
モモが微笑みを浮かべて静かに言った。
「やってみなよ。」
喧嘩上等!愛羅武勇!




