*第2話 精霊のお告げ
固まった・・・
大人も子供も男も女も固まった・・・
どっちか良く判らない者も・・・
「なんだ・・・ありゃ~?」
「と~ちゃん、あれ浮いてるよぉ。」
「あぁ・・・浮いとるな・・・」
イリュパーの後ろをフワフワと浮かんで奇麗なネェ~チャンが付いて来る。
パンツ丸出しで・・・
「あの~」
「なぁに?」
「他に着る服は無いんですか?」
「え?なんで~?」
「だってパンツが・・・見えてますよ。」
「チラ見せは精霊の基本だよぉ~」
「いやそれモロ見せですから~!」
かつての貴族社会ほどでは無いが、この世界にもそれなりの節度がある。
下着を見せるのはやはりハシタナイ。
「えぇ~久し振りに人前に出たから張り切ってサービスしたのに~」
***
五千年かけて精霊遺伝子を再構築して来た。
人には見えていないが、実はそこいら中に下級精霊が満ちている。
大抵は肩や頭に乗っかっている。
家の中にも居る。
壁に張り付いている。
床に転がっている。
屋根の上にも居る。
じぃ~っと見ている。
ボクはここにいるよぉ~~~!
精霊は人が大好きだ!
そうやって人の傍に居る事で親和性を高めて来たのだ。
やっとハニーの様な強い存在感を持つ人型精霊を認識できる段階まで
到達したのである。
だが人型との契約は無理だろう。
そこまでは熟成されていない。
現段階では下級精霊との契約がやっと成立するレベルだ。
下級精霊も契約さえすれば見える様になるだろう。
だが致命的な不都合が生じている。
精霊遺伝子の構造が以前とは違う。
再構築される過程で変異してしまったのだ。
これでは契約が出来ない。
現状の遺伝子構造に対応する為には、
サンプルを祭壇で分析しなければならない。
しかし今の人類には祭壇が反応しない。
つまり分析が出来ないのだよ~
どうするよぉ~?
システムは物理世界に対して直接的に関与する事が出来ない。
精霊を介して誘導するしかないのだ。
そこでシステムはエルサーシアの復活を決定した。
これから生まれる彼女には現状の遺伝子と共に
そのデータベースには以前の遺伝子構造の記録が残されている。
それを仮想的に発現させれば祭壇を稼働させる事が出来る筈だ。
その後で祭壇に解析させれば変異した精霊遺伝子にも反応するようになるだろう。
そして彼女の子孫が増える事で人類は再び進化の軌道に乗る。
***
「仕方がないなぁ~それじゃ~レディハニーに変身するね~」
そう言うとハニーはクルクルと回転しながらコスチュームチェンジを始めた。
キラキラと光に包まれながら素っ裸になりスルスルと現れた布に覆われて
ドレス姿に変わった。
「なんで今するんですかっ!みんなが見てる前でっ!」
男連中の多くは鼻をつまんで上を向いている・・・
「パンツ見せるなって言うから~」
「裸を見せるのはもっと悪いですよっ!」
「怒りっぽいね~イリュパーは~」
「誰のせいですかぁ~~~!」
とかなんとか言いながら~
やって来ました族長の家!
遺跡の一部を再利用した石造りの立派な建物だ。
「懐かしいなぁ~ここ図書館だった所だよ~」
「トショカン?なんですか?」
「い~っぱい本が並んでるとこ~」
「ホン?って何ですか?」
「い~っぱい文字が書いてあるんだよ~」
「木簡とか石盤とかの倉庫ですか?」
「倉庫じゃないよ~図書館だよ~」
「だからそれが分からないんですって!」
「イリュパー!そ、そいつは何だ!」
外がやけに騒々しいなと様子を見に来た男。
どっしりとした髭面の大男だ。
ギヤマン族の長、ランバーン。
イリュパーの父親である。
「父様!この方は精霊様です!」
「せ!精霊?精霊ってあの精霊か?」
「その精霊です!」
「はぁ~い!精霊のハニ~でぇ~っす!」
軽いなぁ~こいつ・・・
これでも序列第一位なんだよなぁ~
他にもしっかりしたのが居るのだけれど
ルルナの後継者として指名されたから~
大丈夫かなぁ~?
客間に通されたハニーは族長一家に厳かに目的を告げた。
凛と背筋を伸ばして一同を睥睨する。
先ほどまでとは打って変わって威厳に満ちている。
やれば出来る子だ!
「イリュパー、貴女は近い将来に双子の聖女を産むでしょう。
姉にはルルナ、妹にはサーシアと名付けなさい。」
「わ、私が聖女様を!」
「それは真で御座いますか!」
「えぇ、貴女は聖母となるのです。」
「そんな・・・どうしよう・・・」
「光栄な事ではないかイリュパーよ!」
我が娘が聖母となる!一族の誉だ!
「あのぉ~それでぇ~そのぉ~」
モジモジと指をこねてイリュパーが顔を真っ赤に染めている。
可~愛い~~~い!
「なぁに?」
「相手は誰でしょうか~?」
「それを探す旅に出るのです。」
「旅に?」
「大丈夫です。私も一緒に行きますから。」
行き先は海の向こう。
ジンムーラ大陸。
北方ラーアギル山脈の麓。
「その者、青きパンツを履きて金色の野に降り立つべし
失われた精霊との絆を結び、ついに人々を真理へと導かん」
「おぉ~!精霊様のお告げじゃぁ~!」
「ありがたや~ありがたや~」
盛大にパクリやがったぁ~~~