*第18話 草原の輝き
は~~~るばる~♪来たぜ~♪
北~極圏~~~ん♪
厚い氷に覆われ、人を拒み続けた大陸。
エギ・キキル・デアル。
しかし、もうその名は相応しくない。
見渡す限りの大草原ではないか!
「モモ様ぁ~焼けましたよぉ!」
「またツノトカゲかぁ?たまには他のやつ捕まえろよぉ。」
「いやぁ~無理ですよぉ~」
頭に二本の角が生えている中型のトカゲだ。
狂暴そうな見た目をしているが、
動きがニブイのでイワンでも簡単に狩れる。
北極圏だけあって、この辺りは気候が穏やかである。
夜は肌寒いくらいだ。
大型の爬虫類や狂暴な虫も居ない。
点在する島伝いに避難して来た哺乳類が大いに繁栄している。
人もまた然り。
「他のは素早しっこくて捕まらないですよ。」
「お前が鈍くさいんだろうが。」
「はぁ、すみません。」
じゃぁ自分で狩れば良いのに・・・
「嫌なら食べなければ良いでしょう?モモ。」
精霊だからね~
べつに食事の必要は無いのだけれど、
習慣になっちゃってるからモグモグしないとなんか物足りない。
「いや食うけどさぁ~ルルベロは平気か?最近はこればっかじゃん。」
「私は平気だよ?好き嫌いないからぁ。」
「アタイだって好き嫌い無いよ!でもいい加減に飽きたっつってんの!」
かつてコイントと呼ばれたジンムーラ大陸の
最北地にダモンらしき者達は居なかった。
幾つかの集落に伝わる話をまとめると、
海峡を渡ったらしいと言う事だけ分かった。
さすがにイクアナを連れて行くのは可哀そうだから放してやった。
気候が合わないだろう。
海峡越えは漁民が船を出して呉れた。
モモとルルベロを見た彼らは、地面に頭を擦り付けて平伏した。
彼らにも精霊の伝説は語り継がれている。
空中に浮き、魔法を操る者。
パンツも見えているし間違いない!
腐っても精霊だ!
無契約の状態だから制限が掛けられていて、
使える魔法は少ないが、それでも充分に強力だ。
モモの得意技は竹刀を使った滅多打ち!
ただの竹刀じゃないよ!
破壊力バツグン!
伸縮自在の如意竹刀だ~!
ルルベロは魔法具作りに長けている。
多少のいい加減な呪文でも正常に動作する。
契約者の意図を正確に汲み取り、
細かな補正をかけて具象化するのだ。
職人技だ!
再び人と精霊との絆を結ぶ事の出来る聖女を誕生させる為に、
聖母の番となる血統を持つ男を探していると話すと
協力を申し出て来た。
何人かの若衆が同行を願ったが、邪魔になるので断った。
それならばせめて海峡を越えるまで
送らせてくれと言う事になったのだ。
漁民たちの話しによると、この大陸にはとても大きな部族が居るらしい。
幾つもの集落を従えて勢力を競い合い争いが絶えないそうだ。
「ねぇモモ~、あれ馬だよね?」
「ん?あぁ、馬だな。」
ほぉ~!
此処にはまだ生き残っていたのか~
「人が乗ってるねぇ。」
「あぁ、乗ってるな。」
「槍持ってるねぇ。」
「あぁ、持ってるな。」
「こっち来るねぇ。」
「あぁ、来るな。」
「ツノトカゲ足りるかなぁ~?あと4匹しか無いよ~」
いや飯食いに来るのでは無いと思うぞ、
イワンの馬鹿よ。




