*第17話 水槽どうでしょう
いやどんだけおんね~ん!
ちゅうてねぇ~
来るわ!来るわ!
浜を埋め尽くす魚人の群れ。
始祖魚人の姿を一目見ようと集まって来た。
「どうします?ハニー様~」
「壁に映さないとちゃんと観れないから~」
「外は無理ですか~」
「無理だねぇ~」
「地下に大きな水槽が在ったでしょう?
壁に穴を開けたら海と繋がるんじゃないですかねぇ?」
「じゃぁあの子たちにやらせようか~」
「精霊様ですか?」
「うん、海と言えばタツノコちゃんだよ~」
「タツノコ?」
「タツノコちゃぁ~ん出番だよ~」
「ピコォ~ン!」
十二支精霊の辰 タツノコちゃん。
手乗りサイズの可愛いやつだ。
でも今日は海底に穴を開けるから巨大化して貰おう!
「うわぁ~~~!何ですかぁ~~~!」
これが龍とゆーやつだよ~イリュパー!
ほぉら見てごら~ん
お髭が長いねぇ~
鼻の穴が大きいねぇ~
「じゃぁお願いね~」
「ピコピコ~ン!」
ザッブ~~~ン!と海に飛び込んだタツノコちゃん!
水中でピィーンと真っ直ぐになるとギュルギュルと回転を始める。
ドリルだっ!
削岩ドリルだぁ~~~!
ガリガリガリガリ~~~!
バリバリバリバリ~~~!
地下の水槽前ではイリュパーが今か今かと待っている!
待っている!
待っている・・・
待っているよ?
「結構かかりますねぇ。」
「あれ~?これくらい楽勝の筈だけど~?」
「ここの場所おしえましたよねぇ?」
「うぅん、私は教えて無いよ~イリュパーが教えたんじゃないの~?」
「どこ掘ってるんですかぁ~!」
その頃、海中の大鍾乳洞にて・・・
「ピコーン?ピコピコーン?」
***
なんやかんやでやり直し~
今度はうまく行った!
海と地下水槽がトンネルで繋がった。
入口側と出口側の2か所。
映像を水槽前の壁にループ再生して置き、
魚人が入口から出口へと移動しながら始祖様の姿を見るのだ。
もちろん内容はクライマックスの場面だ!
ガラス越しに手を合わせ見つめ合う。
そしてリチャードが呪文を唱え、ナイエルが光に包まれる。
もう釘付けだ!
みんなガラスに張り付いて見て居る。
水中だから判らないけれど、涙がチョチョギレているだろう。
「はい~!次の列と変わって下さい~
出口は右ですよ~押さないで~
もう一回みたいひとは一番後ろに並んで下さいね~」
手際良くさばいているが、とにかく多い。
とても1日では終わりそうに無い。
日が暮れた所で一旦は終了して、また明日と言う事にした。
結局、数万の魚人が押しかけて来たので、
10日ほどかかってしまった。
***
イリュパーとセイレンはすっかり仲良くなった。
毎日のように会いに来る。
魚人語も解析が完了したらしく理解できる。
ハニーの通訳が無くても会話が成立するよん。
「もうすぐ行っちゃうの?」
「うん、ジンムーラ大陸ってとこへ行くの。」
「東の大陸?」
「知ってるの?」
「うん、あっちにも集落があるからね。親戚が住んでるよ。」
「へぇ~そうなんだぁ。」
「海流に乗った方が楽だよぉ。案内してあげるよぉ。」
「わぁ~ありがと~」
魚人の案内役とは心強い!
出来上がった筏は、なかなか立派なものだ。
ど真ん中に家が建っている!
バルコニーまで在るではないかっ!
そこまでしなくても・・・
島民が張り切って作ったんだね~
「お気に召しましたでしょうか?聖女様。」
「せ、聖女?様?」
島民はすっかり精霊の信者となって居た。
そしてイリュパーを聖女として崇めたのだ。
後の時代に精霊教発祥の地として、
インスタン島はモスクピルナスと並んで二大聖地となる。
「いつの日か島に戻って来て下さい。我らはいつまでもお待ちしております。」
「うん!また来るよ!約束する!」
あぁ・・・
なんか目頭が熱くなって来た
また逢う日まで、しばしの別れ。
そう言えば精霊歌にもあったな、
「股あう日まで」
いや歌わないよ!
そーゆーのはサーシアが生まれてからね!
さぁ!いよいよ出発だ~!




