*第16話 愛の奇跡
「居ませんねぇ~」
「まぁ~時期外れだぁ~な。」
「それならそうと早く言って下さいよぉ。」
「いやぁ~悪い悪い!ねぇ~ちゃんがあんまり褒めるからよぉ~
嬉しくてつい忘れちまったよぉ!」
「せっかく来たんだし島に上がって飯でも食うか!
この辺はオタチ貝とかウケ海老とか美味いのが居るからなぁ!」
どうもこの島の連中はネーミングセンスにクセがあるな・・・
「そ~ですね~」
波の浸食で出来た洞窟の奥が入り江になっている。
小舟に乗り込み、オールで漕いで砂浜に付ける。
外から差し込む光に海面が青く輝いている。
「わぁ~!きれ~い!」い い ぃ ぃ
洞窟内にイリュパーの声が反射する。
「わっ!」わ わ ゎ ゎ
「おもしろ~い!」い い ぃ ぃ
「がお~!」お お ぉ ぉ
「ぱぁ~!」あ あ ぁ ぁ
<キュ~~~!クルルルル!>
え?
「え?」え え ぇ ぇ
居た!魚人だぁ!
「居た!チンコだぁ!」あ あ ぁ ぁ
こ、こらっ!略しちゃ駄目!イリュパー!
チンコマスだから~
<クワカカカックルックルッ!>
「いやぁ~ごめんねぇ~」え え ぇ ぇ
「チンコの言葉が分かるんですか?ハニー様ぁ!」あ あ ぁ ぁ
だから略すなって!
「デート中だったみたい~」い い ぃ ぃ
<キュ~~~キュルルル~~~>
なんでも前々から狙ってた年下のオスを無理やり連れ込んだらしい。
子供さえ出来れば、それを口実に番になる様にと迫るつもりだったとか。
「え?でも時期外れだってぇ。」え え ぇ ぇ
うんうん、そう言ってたよね。
<クルルル~ピュ~キィ~~~>
「だってさ~」あ あ ぁ ぁ
年に一回、各々の集落から独身者が集まって婚活をするそうだ。
<キュルピィ~カルルル~~~>
無理やり連れ込んだやつが自由恋愛か?
それはそうと、あちこちに集落が在るほど繁栄しているのか!
ゲライスの目指した方向も、あながち間違ってはいなかったわけだな。
彼女の名はセイレンと言うそうだ。
彼氏と別れたばかりで淋しいらしい。
<キュルルピィ~~~!カルルル~!
クワックワッ!キュ~~~!>
二匹で仲良くナマコを食べている所を目撃したんだと。
お互いに両端から齧って最後に接吻し、
しばらく抱き合っていたらしい。
恋魚同士でする定番の行為だそうだ。
<ピュルルキュルルルクワァ~!
キュ~~~ララピィ~~~!
キュルルキュルルカカカカカカ!>
うわぁ~拗らせてるなぁ~
<キュピキュピキュルルルルル
ピョロロチュルルピ~ヒョロピ~>
怖ぁ~い。
こいつ怖ぁ~い。
「が、頑張ってね・・・」
イリュパーも引いてるよん。
<キュ~ピロピュイ~>
「いやぁ~実はね、斯々然々で。」
遺跡での経緯を説明してナイエルとリチャードの子孫に
逢いに来た事を告げた。
<クヮカカカルルルピ~>
遠い昔、魚人の祖先は人間だったが、
ある日魚人となった少女と、
少女に恋をして自ら魚人となった男が、
人の世界を捨てて海を棲みかとした。
それがカリトン族の始まりだと言う伝説があるそうだ。
チンコマスは人間が付けた呼び名であって、
彼らは自分達をカリトンと称している。
<キュルラキュルラキ~!>
だよね~自分達の御先祖様の映像だもの~
3日後にみんなを連れて遺跡の裏の浜に来る
と言い残して、セイレンは帰って行った。




