*第15話 チンコマスの影
「これで終わり?うわぁ~~~この後が気になるぅ~~~」
エイガノッコスの魔法紙は研究員リチャード・ゲライスの残した、
魚人ナイエルの記録映像だった。
前半は淡々とした、いかにも研究ですよと言う内容だったので、
さっさと早送りで飛ばした。
だが中盤から次第に可愛らしく成長し、彼女の表情が豊かになって来ると、
リチャードの態度に変化が現れ、後半からはまるで恋愛ドラマの様になって行った。
映像はウイルス魔法を発動させた所で最後だった。
箱の底にあった日誌も、その前日までの記述で止まっていた。
成功したにせよ失敗に終わったにせよ、
そこから先はもう記録する必要が無くなったと言う事だろう。
「ガラス越しに見つめ合う所なんか泣けちゃいましたよぉ~」
「そう?」
「え?グッと来ませんでしたか?」
「ん~~~?別にぃ~」
「え~~~信じらんな~~~い!
ハニー様は恋愛した事が無いんですか~?」
「アリーゼの事は愛してるよ~」
「それは契約者だからでしょう?」
「そうだよ~」
「そーゆーのじゃ無くてぇ~」
いやいや、イリュパー。
精霊はね、特に人型はね、契約者だけが大事な存在なんだよ。
それ以外の人間には興味が無い。
精霊は契約者が死んだ時にだけ、一粒の涙を流すんだよ。
そーゆーイリュパーだって7歳上の兄が初恋の相手だったじゃん。
それっきりじゃ~ん。
「おい、ありゃチンコマスだよな?」
「あぁ、チンコマスだ。」
なんだ?その下品な固有名詞は?
一緒に映像を見ていた島民がザワついている。
聞けばインスタン島の沖合に小さな島が在るそうだ。
年に一度、その島に魚人が繁殖の為に海から上がって来ると言う。
互いに干渉しないのが、昔から暗黙の了解だそうだ。
「わぁ!成功したんだ!良かった~!」
と・・・いう事は?
あれか?
したのか?リチャード。
子作り・・・
大災厄から五千年。
子孫が生き残るほど沢山したのか~
それとも他の人にもウイルス魔法を使ったのか?
もう今となっては解らないな。
とにもかくにも、魚人が居る。
「逢いに行きましょうよ!ハニー様!」
好奇心の塊だなぁ~イリュパーは~
「良いよ~」
***
その島の周辺海域に詳しい漁師の兄弟に案内を頼んだ。
何度もチンコマスと遭遇していて、互いに見慣れているから
警戒されないだろうと言う事だ。
沖合で漁をする為の船だけあって、結構大きくて頑丈そうだ!
「わぁ!立派な船ですねぇ!」
飾り彫りが施されて彩色も鮮やかに化粧されている。
「おっ!ねぇ~ちゃん、解るかい?」
「えぇ!今まで見た中で一番に恰好良いです!」
「そうかっ!一番かっ!わははははは!」
「ねぇ~ちゃん、見る目あるじゃねぇ~か!
この船はなぁ、死んだ親父の形見なんだ!
俺と兄貴のよぉ~夢のゆりかごだぁ~」
いよっ!兄弟船!
「そう言えば~アリーゼの精霊歌にも兄弟の歌があったなぁ~懐かしい~」
「精霊歌ってなんですか?」
それ聞いちゃう?
「聖女が民を祝福して歌うの~」
表向きはね~
でも実際には下らない替え歌じゃん!
まだ誰も精霊言語《日本語》の意味が解らなかった時代には問題なかったけれど、
後々にはサーシア達の作った精霊歌は全部封印されたよん。
映像記録も歌集も見つけ次第に回収されて、
精霊教総本山の奥の院の地下に!
厳重に!
サーシア直系の聖女にだけ継承が許され、
三日三晩を地下神殿に籠り歌い続ける。
精霊達の厳格な審査を通過して、”精霊の歌い手”として認められる。
そうして大聖女の代理として聖女筆頭となる。
あぁ、そうそう。
ちなみに大聖女の称号はサーシアだけ。
エルサーシアただ一人。
だって精霊王ルルナと契約したのはサーシアだけだもの。
それも、もう遥か遠い過去の話し。
「聞きたいですっ!ハニー様!」
「そう?じゃぁ~歌っちゃお~かな~」
歌うの?
まぁ歌詞の意味は解らないだろうから、大丈夫かな?
『への32番~ 兄弟ホモ~』
はぁ?今なんつった?
パァ~パ~~~ン♪
パラララ♪
パァ~ラ~ラァ~ン♪
パァ~ラ~ララ~♪
パララ~ラァ~ン♪
『胸の~~~♪
筋肉~~~♪
ピンクのぉ~乳首~~~♪
ふたつ~~~♪
並んで~~~♪
勃って~い~る~~~♪
兄~弟~ホ~モ~は~♪
親にも~内~緒~~~♪
背~は~低いが~~~♪
チンコは~デカい~~~♪
俺と~兄貴のぉ~よぉ~♪
薔薇の~花~園ぉ~さぁ~~~♪』
ジャァ~~~ン♪
「意味わかんないけど、なんか凄いっ!カッコイイ!力が湧いて来ました!」
「でしょ~」
そりゃ封印もされるわなっ!




