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第139話 カエル亭会談

「なんやとぉ!もーいっぺんゆーてみぃ!」

「王はお会いになりません!お帰り下さい!」

「ウチを誰やと思てけつかるんじゃ!」

「ち、力の聖女様です・・・」


なんとまぁ!聖女様を門前払いってか!


「ほぉ~それが分かっとってからに、

帰れっちゅうわけやな?ワレェ~

え~度胸しとるのぉ~ワレェ~

オモロイやないけ~ワレェ~

笑~らわっしょんなぁ~えぇ~ワレェ~

コラァッ!ボケ!アホ!カス!ウンコ~!

チンチン引っこ抜いてケツの穴にブチ込ん

だろかぁっ!おんどりゃぁ~!

よぉ~~~ワァ~~~レェ~~~!」


「ひぃぃぃぃ~~~~」


「ふん、これな木端こっぱ役人相手にしても

らちがあかぬぞぇ。」

「そやな、押し通るでぇ~」

「はいなぁ!」


バチバチと火花で威嚇しながら、サナと

トモエが城内を闊歩かっぽして行く。

怖くて誰も止められないね。


「待たれよ!聖女殿!」


ひょろっと背の高い、しかし良く通る声と

鋭い眼光の男が立ち塞がった。

身なりからすると高位の者だろうね。


「なんやお前は?」

「宰相を務めております、クライドと

申します」


ハイラム王国宰相クライド・ダラン。

戦士隊時代のバズローの部下だった男だね。

長年の冷や飯生活に自棄やけを起こしそうだった

バズやんを支え続けて来た忠義者だ。

王が即位すると一番に宰相に取り立てられた。

互いの出世を喜び祝杯を挙げたんだ。


「宰相かいな、ちょうどええわ。

バズローに取り次いでんか」


王を呼び捨てに出来る立場なんやぞと、

殊更に強調して言い放つ。


「陛下は体調が優れませずせっておられ

ましてな。

謁見えっけんは御遠慮して頂きたい」


なかなか肝の据わったやっちゃなぁ。

顔色ひとつ変えないね。

普通はチビっちゃうよ?

それに”謁見”って言ったねぇ。

聖女の方がくらいは上だよ?

忘れたの?

聖女に承認されて王になったんよ?


「病気やてかいな」

「さよう」

「面会も出来んぐらい悪いんかい」

「・・・さよう」


”面会”って言われて露骨に嫌な顔したな。

腹に一物を忍ばせている感じだね。

でもなぁ~

病気だって言われたらなぁ~

無理やり押しかけるのはなぁ~

ちょっと気が引けるよねぇ。


「ほいだら国政なんぞよーこなさんやろ。

今は誰が采配さいはいしとるねん」

「私が陛下の代理を仰せつかっております」

「ほな、お前にゆーたらええんやな?」

うけたまわりましょう」


話し合いは平行線のまま、同じやり取りを

繰り返すばかりだよ。

政策の決定は、あくまでも王が行うと言うの。

自分はそれを遂行するだけだとね。


「それを取り消せっちゅうとるんや!」

「陛下が回復されましたらお伝え致します」

「今、伝えて来いや!」

「体調に差し支えますのでな」

「ガキの使いかっ!」

「王の使いでございますよ」

「うまい事ゆーやないかいっ!」


力押しじゃぁ駄目かぁ~

こんな時にミコが居たらなぁ~

チョチョっと脳をハッキングして~

「お願いねっ!」

みたいな?

「はいはぁ~い」

的な?


のらりくらりとかわされてしまったよ。

結局、王の体調が回復したら連絡するって事で

誤魔化されてしまったんだ。


「なんや調子狂うわぁ~」

談判だんぱんは苦手じゃ」

「今日はこのへんにしといたるわ!」

「仕切り直しじゃわえなぁ」


穏便にって言われてるからね。

まぁ初日だし、いきなり殴り込みってのも

ちょっとねぇ。


「腹へったな、えぇ時間やし、そこいらで

飯でも食うて帰ろか~」

「良しなに~」


暮れなずむ城下町を歩いていると、なにやら

気配を感じた。

誰かが後を付けているね。

そーゆーのすぐ分かるよ。

二人とも武の達人だからね。


「こそこそせんと出て来んかい!」


わざと裏通りに入って人気ひとけの途切れた所で

振り向く。

はたせるかな、男がひとり進み出て来たよ。

身なりは良いから物取りのたぐいでは無さそうだ。


「御無礼をお許し下さい、我が主が是非とも

お話しがしたいと申しております。

力の聖女様」


人目に付かぬ様にと、タイミングを計らって

いたんだってさ。


「話の前に飯やがな」

「心得ております」

「よっしゃ!ほな行こか!」


王都で一番の高級料理店「カエル亭」。

その奥座敷に通された。

裏口から入る念の入れようだ。

相手は誰だ?


「お呼び立てして申し訳ありません。

力の聖女様。

私は第一王子のバサリと申します。

この様な形では御座いますが、お初に御目に

かかりまして光栄至極に御座います」


片膝をつき、左手を胸に当て、右手の拳を

地に添える。

正式な騎士の礼だね。


似合わないねぇ~

太り過ぎだよ君ぃ~

デコンジョウガエルがうずくまってるのかと

思ったよぉ~

カエル亭だも~ん。


「ほぉ、バズローの息子かいな」

「はい、力の聖女様」

「いちいち称号で呼ばんでもえぇわいな。

サナでえぇさかい」

「畏れ多い事でございます」

「かまへんかまへん、堅っ苦しいのは好かん」

「では、サナ様と」

「おぅ」


カエル亭の自慢は、もちろんカエル料理。

プルプルのコラーゲンたっぷり鍋だよん!

食事をしながらの世間話。

まだ独身なんだってさぁ~バサやん。


なんせ棚ぼたで王になったじゃん?バズやん。

それまでは日陰者だったからね。

その息子で見た目がデコガエルだから、

モテるわけが無いのよね。


第一王子になってから、手のひら返して縁談が

舞い込んで来たんだけど、すっかりこじらせて

どうせ地位目当てのロクなもんじゃねぇって。

そー思っちゃうんだってさ。

んで35歳ドーテーの魔法使い。

ちゃんと魔法師の資格も持ってるよん!


「はぁ~腹くちたわぁ~食うた食うた~」

「ご満足いただけましたか?サナ様」

「毎日こんなん食うとるんけ?そやから

太るんやど。

ヘタしたら共食いやんけ~

わははははははははははは~~~~~」


「まさか!普段は小食なんです」

「ウソこけっ!」


ふぅ~~~ん

なんか嬉しそうじゃぁ~ん

サナちゃぁ~ん


「さぁ、ほいたら本題に入ろか」

「はい」

「バズローの事やろ?」

「その通りで御座います」


打って変わって笑顔の消えた目に陰りが差す。

どうやら事態は深刻であるらしい。


「聞かせてもらおうかいのぉ」



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