第130話 ポチュレット
かれこれ5分くらいだろうかねぇ。
随分と深い所まで降りてるよこれ。
耳がポワァ~ンってなるやつ~
『まだ着きませんの?』
「後どのくらいで着きますか?」
「もうじきに到着します」
その言葉通りに減速が始まったよ。
足にグッと来るねぇ。
ウンコ出そうになるやつ~
着いたら着いたで長ぁ~い通路をてくてく
歩く。
『歩く歩道くらい作りなさいな』
「それは普通の歩道ですよサーシア。
動く歩道でしょう?」
『結局は歩くじゃないの。でも早く歩ける
のだから早く歩く歩道かしら?
でも普通に歩いて早くなるのだから、
普通に歩いても早く歩ける歩道ですわね』
「だから動く歩道ですって」
何をゆーとるんやお前らは・・・
『まだ着きませんの?』
「後どのくらいで着きますか?」
「あの突き当りの部屋です」
ずぅ~~~っと奥の方にドアが見える。
いやぁ~結構あるな~
遠いな。
「ルルナ、サーシア、ちょっと・・・」
『あら、どうしたの?サリーちゃん』
「なんか変な感じがするわ」
『何が変なのかしら?』
「何かは分からないけど違和感があるのよ」
「確かにありますね、いつもと違う感じが」
『あら、ルルナもですの?』
「何も感じませんか?サーシア」
『そー言えば・・・』
おっ?
『お手洗いは何所かしら?』
尿意かぁ~い!
聞けば目的の部屋の中にあるらしい。
もう少し我慢しろ。
***
部屋の中は客室のようだね。
なかなか豪華じゃないか!
「こちらで暫くお待ちください」
そう言って案内役の女性は退出した。
『私を待たせるなんて良い度胸をしています
わね』
「一体どんな相手でしょうねぇ」
『ねぇ、ルルナ』
「なんですか?サーシア」
『あれ・・・テレビですわよね』
壁に懸けられた大きな黒い板。
どう見てもテレビだな。
いや、テレビかどうかは分からないけど
いわゆるモニターなのは確かそうだな。
テレビとモニターの違いなんてサーシアには
分からないから、テレビでいーけどね。
「あぁ、違和感の元はこれですね」
『なぁに?』
「電気ですよ、照明が。この施設は電気で
稼働しているようですね」
『まぁ!電気なんて懐かしいですわねぇ』
この世界の照明と言えば魔法具だからねぇ。
パショナル印のね!
「懐かしんでいる場合じゃないですよ」
『あら、どうして?』
「誰がどうやってこんな技術を開発したのか、
それが問題です」
『そーよねぇ、魔法があるのにわざわざ電気
なんてねぇ』
「そーゆー問題じゃありませんよ」
『どーゆー問題かしら?』
もういいよ~お前は考えるなよ。
いざって時に暴れたら良いからさぁ。
さっさと用を足して来いよ。
『ちょっとお手洗いに行って来るわね』
「気を付けてくださいね、サーシア。
何があるか分かりませんから。
一緒に行きましょうか?」
『独りで大丈夫ですわよぉ、心配性ねぇ』
まぁ、ドア一枚の向こうだからねぇ。
何かあったとしても、すぐに対応できるしね。
『ルルナ!大変ですわ!』
「ど、どうしたんですか!サーシア」
『ポチュレットですわよっ!』
ポチュレット。
それは用を足した後にお湯が出る便器だ。
「何を隠そう、あそこもキレイ」のやつだ。
前前世、まだ地球に居た頃に使ってたのと
ほぼ同じスイッチがあったんだ。
もしや?と思って押したらシャワ~って出た!
「電気の照明とポチュレットですか。
まるで地球の文明とそっくりですね」
「えぇ、その通りです」
え?
今の誰?
ふいに声のした方を見るとテレビに女の人が
映っている。
「マリー!あなたマリーじゃないの!」
サリーちゃんが驚くのも無理は無い。
祭壇が停止した後で精霊達は、待機組と
帰還組に仕分けられた。
マリーは帰還組だったんだよ。
その采配を行ったのはサリーちゃんだ。
実体化を解除して観念世界のネットワークに
吸収されるのを確認した筈だ。
なんで此処に居る?
『あら、サリーちゃんのお友達かしら?』
「友達と言うわけじゃないけど・・・」
サリーちゃんはこの世界で最初に現れた
人型精霊の内の一柱だ。
一方マリーは大災厄後に生成された精霊。
大先輩と新人ちゃん~
みたいな?
最近の若い精霊は~
的な?
「久し振りですね先輩」
「この大陸に聖女は居ない筈よ。
どうやって実体化したの?」
精霊が実体化するには契約者が必要なんだ。
人型精霊なら相手は聖女じゃないとね。
「実体化はしてませんよ」
「え?でもそこに居るんでしょう?」
「これはただの映像です。私に実体は
ありません」
「どう言う事?」
「話せば長くなりますけど良いですか?」
おぅ!聞こうじゃないか!
『長いの?じゃぁ結構ですわ~』
なんでやねん!
「一応聞きましょうよサーシア」
『聞きたいの?ルルナ』
「状況を把握しないと駄目ですよ」
『仕方が無いですわねぇ。その話、
面白いの?』
「さぁ、どうでしょうか・・・」
『退屈するのは嫌ですわよ、自信が無いなら
BGMとか効果音とか入れなさいな。
テロップとかも使うと良いわよ』
「はぁ・・・やってみます・・・」
テレビかっ!




