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第126話 おきばりやす

さっきまでの嵐は夢か幻か・・・

穏やかにいだ海原に浮かぶ大きな板。

男がしがみついているのは貴賓室の扉だ。

夢でも幻でも無かった。


おんやぁ~まぁ!

しぶといねぇニクやん。


「くそっ!何もかも海の底じゃ!

なんだあの嵐は!運が悪いわい。

しかし放り出された所に扉があって助かった。

ラッキーじゃったのぉ。

どっちじゃ!」


セルフツッコミしながらプカプカしていると、

突然足首を掴まれた!


「んわっ!なななんじゃ?」


海面からヌっと出た水かきの有る手。

そして片方ちぎれたひれのある顔。

魚人だ!


「よぉあんた、せっかく助かったのになぁ。

ついてないねぇ」

「はぁぁぁ放せっ!は、放せっ!」

「悪いねぇ、見逃すわけにゃいかねぇんだよ。

ジャニス様の仕事にケチがつくからねぇ」


「や!やめ!やめ!うわっ(ズルッ)がぼがぼがぼ(ブクブクブク)


見事な彫刻の施された大きな扉だ。

太陽をかたどった金細工が陽光に輝いている。

海流に乗って沖へ沖へと漂って、いつか

どこかの岸へたどり着くのだろうか。

それともこのまま朽ち果てるのか。


水平線の彼方には虹の橋があると言う。


***


「重ねて問う、異存はあるまいな?」

「二言は無い、すべて了解した」

「では怪我が治り次第、調印式を執り行う」

「うむ、任せる」


タルパ村の救護院でベッドに横たわるのは、

体中をギブスで固めたニソシールだ。

話しの相手はカイザル。

ジェバー教の自治区域について、取り決めが

まとまったところなんだ。


足首の骨が砕け、あちこちの靭帯じんたいが断裂して、

精魂尽き果てたニソやん。

「あてのだんさんの話し、聞いとくれやすか?」

と言われて素直にうなずいた。


サーシアもルルナも後は好きにしなさいと、

そう言って帰って行った。

実は上空からずっと観察してたのよね。

悶絶盆踊もんぜつぼんおどり大会を見てゲラゲラ笑ってたの。

もう充分満足したし、お祭りが終わったので

興味が無くなったの。


ジェバー教の支配地域をジェバラード自治区

として確定し、独自の信仰を認める。

周辺地域との交流や交易を妨げない。

住民の宗旨替えを許可する。

異教徒を弾圧しない。

祭壇の管理は精霊教に委ねる。

ジェバー教信者にも生活魔法を付与する。

等々、双方に配慮した条約が締結ていけつした。


ジェバー教は教義を変更したよ。

魔王アズラが改心してジェバー神と和解し、

義兄弟の契りを交わしてアズラ神になった。

今後は共に力を合わせて民を守るんだってさ。

一神教から多神教になったってわけね。


途中経過は強引だったけど最後は政治的に

決着した形だね。

カイザルの面目もこれで保てるってもんだよ。

良かった良かった。


「感謝するよジャニス、そなたのおかげだ」

「そんな、お礼やなんて水臭そおすえ」

「これでダモンが変わってくれたら良いが」

「その事どすけど・・・」

「ん?何か気がかりでもあるのかい?」

「サーシア叔母様がどない言わはるか」

「姉上は私が説得するよ、今の体制ではいずれ

限界が来る。

理を尽くして話せば分かってくれるさ。

そなたは賛成してくれるかい?」


「へぇ、もちろんどすえ!おきばりやす!」


***


呼び出されました~

サーシアの本拠地カイエント城~


『オバルト国王に御成りなさいな』

いきなり~

「オ、オバルト?ですか?」

『えぇ、そうよオバルトですわ』


オバルト王国。

かつて世界最強の勢力を誇った国家。

前世のサーシアの祖母はオバルト王家の

姫君だったんだ。

そして母も王室の血を引いていた。


「山間部と平野部を分離します」


細かい理由はルルナが説明した。

ダモンを変える事は出来ない。

でも広大な平野部を治めるには転換は必要。

だったら、いっそ分離してしまおう!


平野部の版図はんとは、オバルト王国とほぼ同じだ。

ダモンはオバルトの自治領として半独立する。

新統領にはオランが就任し、ログアード辺境伯

を復活させるんだ。


ちなみにダモンってゆーのは民族名なの。

そこを治める統領がログアード辺境伯なのよ。

サーシアは辺境伯家のお姫様だったの。


『王都はターターリニに作りなさいな』

「あぁ、ちょうど良いですね」

「エルベ集落の北に在る湖ですよね?」

『えぇ、アナマリア様もお喜びになりますわ』


アナマリアとゆーのはね。

オバルト第二王朝の開祖フリーデルの母でね。

サーシアの母パトラシアの親友だったの。

前世の話しね。


『大急ぎで資金を集めませんとね!』

「目ぼしい有力者には姓を授けましたからね。

同じ餌ではもう釣れませんよ?

今度はどうやって集めますか?」


『国旗をデザインして差し上げますわ!』

「それはぁ・・・」

『あら、駄目かしら?』

「どうせパンツを描くんでしょう?」

『あら、駄目かしら?』


やっぱりなっ!

ろくなデザインじゃねぇと思ったよ!

ところがこれが大評判~

なんせ「青きパンツの聖女」だもんね。

国旗にその紋章が入るのは栄誉なんだとさ。


***


そして2年後・・・


ターターリニを王都としてオバルト王国が

建国された。

同じ年、ムーランティス大陸ではカイエントを

盟主とした連合国家が誕生した。

ムーランティス帝国だ。

初代皇帝にはイワンが即位し、イワン大帝と

呼ばれる事になった。


「ねぇサーシア」

『なぁに?イワン』

「終わったら釣りに行こうよ。

新しいルアーを作ったんだ!」

『まぁ、それは楽しみですわね!』


「さぁ、戴冠式が始まりますよ!」

『えぇ、わかったわルルナ。

行きますわよイワン』

「うん」



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