第124話 怒りのジャニス
夜明けと共に戦闘が開始された。
まるで歯が立たない・・・
聖光威志隊は全滅。
千人近い人数の部隊が、ものの数分で壊滅。
魔法攻撃の凄まじさを思い知る間も無く、
その殆どが死んで行った。
辛うじて生き残った者も重傷は免れない。
ピカッと光ってズドォ~ン!
一発で数十人が吹き飛ばされる。
オラン率いる殲滅部隊ニャーマハーゲン。
鬼人の軍団である。
その後、部隊を分けて領域を囲む様に広く
展開してジワジワとゆっくり進軍する。
わざと逃げる時間を作ってるんだ。
殆どの住民が息を潜めて身を隠す中で、
狂信者たちはトマル島へと逃走した。
実は住民の多くが薄々ながら考えてたんだ。
そろそろ宗旨替えをしようかなと。
でも自分からは言い出しかねてたんだよ。
皆が互いに様子見してたんだね。
そんな所へ他所から流れて来た狂信者たちが、
我が物顔で偉そうにするもんだからうんざり
してたのよね。
そいつらの頭目が神聖教皇とか名乗り出して
えぇ~マジかぁ~って感じ?
内心ではほっとしてるんだ。
あいつらが居無く成れば、すんなり宗旨替えが
出来るんじゃないかってね。
さてその頃、ダモン軍の進撃を知らされた教皇
ニソシールは思惑が外れて慌てていた。
人質を見捨てる事は無いと考えていたんだ。
うん、絶対に見捨てたりなんかしないよ。
「猊下!人質が!人質が逃げましたぁ~!」
「何じゃと!どういう事じゃ!」
「灯台に朝食を届けに行ったら・・・
牢番の兵士が全員死んでいたと・・・
タルパ村の連中も消えていたとの事です」
ほらね!
ちゃんと助けたから攻めて来たのよん!
「し、島への道を封鎖せよ!ダモンを通しては
ならぬ!」
「し、しかし信者たちがまだ・・・」
「かまわぬ!門を閉じ守りを固めよ!」
無駄な事を~
さっさと降参しちゃいなさいよぉ~
あいつが来る前にさぁ~
『島ごと吹き飛ばしましょうかしら』
「駄目ですよぉ~祭壇があるんですからぁ~」
来ちゃった!
トマル島へ渡る道の手前で陣を張る殲滅隊。
お祭り好きのサーシアが見物に来たの。
『面倒くさいのは好きではありませんわ』
「オランがやりますから、サーシアは何も
しないで見ていて下さい」
『退屈ですわぁ~』
「どっちなんですかっ!」
難儀なやっちゃなぁ~
あれ?
オランは?
オランが居無いよ?
指揮官がどこへ行っちゃったんだ?
「サディアス、オランはどうしたのですか?」
「それが・・・将軍はタルパ村に・・・」
「来ていないのですか?何故?」
「あのぉ・・・そのぉ・・・」
部隊長のサディサスが言いあぐねていると、
幕舎に少女が入って来た。
「お母はん」
「あら?ジャニス、何故ここへ?」
おや珍しい。
ジャニスが前線に出るなんて。
カイザルが心配でタルパ村に来てたのよ。
落ち込んでいる許婚を慰めてたのよね。
「お父はん、伯母様に捕まってしまわはったん
どすえ」
「まぁお姉さんに?」
「へぇ、なんや伯母様はお父はんが戦士やて
知らなんだそうどすなぁ。
ほんで、えらい怒らはりましてなぁ。
母の教えを忘れたんか~ゆうて、
そらごっつぅ剣幕どしたえ」
さぁ!進撃開始だぁ~!
って村を出ようとしたとこをキャルランに
見つかっちゃったの。
「あぁ~そー言えば教えてませんでしたねぇ」
『この際ですから引退させましょう』
「いいのですか?」
『えぇ構いませんわ。オランには別の仕事を
お願いしますわ』
「別の?なんの仕事ですか?サーシア」
『ふふ、まだ内緒よ!ルルナ」
何を思いついたんだ?
大丈夫か?
「お母はん、この場はあてに任せとくれやす」
「あなたに?荒事なんか出来ないでしょう?」
「あても聖女の端くれどっさかいに、お兄様に
恥かかされて黙っとーほど鈍な女やおへんえ」
「そう、ではお願いするわねジャニス」
「へぇ、あんじょうしますよってに、
見てておくれやす」
わぁ~怒ってる怒ってる~




