第119話 カイザルの悩み
サーシアの弟カイザル。
もう20歳になる。
カイザに似てイケメンだ。
ただなぁ~
ちょっと線が細いんだよねぇ~
鍛えてはいるから、結構な筋肉質なんだけど
細マッチョ?みたいな?
いや、充分なんだよ?
ブリーフ・リーくらいの体格だからね。
むしろ普通の感覚だったら、こっちの方が
カッコ良いくらいだよ。
ただ周りの連中がさぁ~
ハルク・コーガンとかブルーザー・デロリー
みたいなやつらだからね。
並ぶと見劣りしちゃうのよ。
遺伝形質だからしょーがないよね~
カイザも細身だったしイリュパーも小柄だ。
ダモンの戦士はモルゴンの移民が主だからね。
北の方の民族は体がデカイんだよ。
元々はコイント族の系譜だからさ。
あいつらデカかったもん。
そこに本来のダモン族の血も交じってると
思うんだよね。
「ここに居られましたか若様」
「あぁ、トリオルか。何用だ?」
「ジャニス様がおいでになっておられます」
「わかったすぐ行く」
サーシアの拠点はムーランティスだけど、
ルルナの本拠地は、ここダモンなんだ。
でもルルナはサーシアと一緒に行動するから
代わりにサナとジャニスとオランが、
ダモンで暮らしてるんだよ。
と言っても、サナとオランは出張が多いから、
常駐してるのはジャニスだけだ。
教会の隣に在る屋敷にすんでいる。
8歳年上のカイザル叔父様がジャニスは
大好きだ!
幼い頃からダモン城に入り浸っている。
面食いなんだよねぇ。
前世も前々世でもそーだったなぁ。
「お兄様!お茶いかがどすか?
今日はムラサメをお持ちしましたんえ」
叔父様とは言わない。
ずっとお兄様と呼んでいるんだ。
その方が距離が近くなる気がするらしいよ。
ムラサメって言うのはね、和風の
ロールケーキみたいなもんなの。
クリームの代わりにアンコを生地で巻いてる。
渋めのお茶に良く合うんだ。
残念ながら小豆は無いから似たような豆で
代用してるんだけどね。
白餡みたいなもんだね。
「ありがとう、では一服としよう」
「来週からデカシーへ行かれるそうどすなぁ」
「あぁ、ジェバー教の残党が暴れてるらしい」
南北に長いジンムーラ大陸の南端、
デカシーランド。
オランの故郷タルパ村の在る地域だね。
キャルランは元気かなぁ?
彼女は精霊教の宣教師になったんだ。
デカシーランド教区を担当している。
今回は彼女からの要請で暴徒化した
ジェバー教信者に対処するんだ。
「お兄様なら、じきに鎮圧どっしゃろ」
「いやいや、そんな乱暴な事はしないよ。
先ずは話し合いだ」
「まぁ!お優しおすなぁ」
「彼らにも言い分はあるだろうからね。」
そう、この優しさが悩みの種なのよ。
今のダモンはサーシアの影響が強すぎてね。
言葉よりも先に手が出ちゃう感じ?
まぁ、調停とか仲裁は教会がやってるから、
ダモンが動くのは相手を潰す時なんだけどね。
カイザルはダモンを変えたいんだよ。
外国との交流も盛んにしたい。
色んな文化や産業を取り入れて、
もっと開かれた穏健で融和的な国に
したいんだ。
ダモン首長国は二つの民族に分かれている。
山岳地帯に棲む北方からの移民とその子孫達。
そして平野部で暮らす元から居た人達。
南部から移住して来た者もいるよ。
人種も風習も考え方も違う。
あまりにも違い過ぎる。
平野部と山岳部には交流も無い。
怖れられているんだ。
「ラーアギルの鬼」
そう呼ばれている。
(このままでは、いずれこの国は分裂する)
エルサーシアやルルナが生きている間は良い。
でも将来は?
カリスマ的な存在が居なくなったら?
聖女と言うだけでは駄目だ。
あの二人は別格だ。
彼女達でなければ十分な統率を保てない。
この異常なまでの戦闘力が暴走したら?
カイザルはそれが恐ろしくてならないんだよ。
まぁ無理もないかな?
サーシアは前世のダモンを基準にしてるから、
今の時代には過剰な戦力だよね。
「どないしやはったんどすか?」
「ん?何がだい?」
「何や難しい顔してはりますえ?」
「いやぁ、それはすまないね。
ちょっと考え事をしてしまったんだ」
「まぁ!何でっしゃろ?」
「大した事じゃないさ、それよりも変わった
味のお菓子だね?」
「お気に召しまへんか?」
「そんな事はないよ、とても美味しい」
ニッコリと笑って見せるけど芝居が下手だな。
「水臭いやおへんか?あてには言われへんの
どすか?」
「あ・・・いや・・・すまぬ・・・」
「言うておくれやす」
「いや、そなたには・・・」
と言いかけてカイザルは、ハッとした。
ジャニスの目に薄っすらと滲む涙を見たから。
(しまった・・・ 今のはマズイ・・・
軽率だったな。
こーゆーところが駄目だな、私は・・・)
カイザルとジャニスは許婚~~~




