第114話 裏では色々とね~
領土や自治権が絡む国際問題が話し合いで
解決するなんて事はほとんど無いよね。
現実はそうでしょう?
結局は武力衝突に発展しちゃうのよね。
ましてや、ついこないだまで部族社会だった
地域に王国を樹立させるとなれば、
凄まじい殺し合いになるに決まってるよ。
何年も何年もね。
そうしてやっと出来た王国内には、その後
何世代にも渡って怨念が渦巻くのよ。
だから武闘会なの。
精霊と聖女が君臨する精霊教会っちゅう
超ド級の権威が仕切る大会で決着をつけるの。
そうすれば誰もが納得できるのね。
これが最善の方法だったんだってね。
戦争で負けたら植民地にされて奴隷だもの。
大会で負けても領土は維持されて、
おまけに貴族の身分まで保証されるんだから、
弱小部族にとっては渡りに船だよ。
もしかしたらワンチャンで上位に入れるかも?
強豪部族にしても自慢の戦士を投入してさ、
或いは金に物を言わせて強者をスカウトして
戦わせれば良いのだから異存は無いしね。
アリーゼが反対しなかったのは、
そーゆー理由なんだ。
ジェーンには勝って欲しいけど、負けても
平和的に王国が成立するならそれで良いとね。
さて、一年なんてあっとゆー間に過ぎる。
ジェーンと四人の闘技者はダモンの虎の穴で
特訓を受けて、ちょっとはマシになったんだ。
最初は自信満々だったけどね。
初日の訓練でヘコミまくってたなぁ~
ってゆーかダモンが強過ぎるんだけどね。
なんせ教官は人型精霊だからねぇ。
常駐のサリーちゃんでしょう。
ハニーとかモモとかトモエとかの武闘派が
入れ替わりで指導するからね。
一応、お客さん扱いだから随分と手加減した。
死んじゃったら困るからね。
まぁ骨折くらいは仕方が無いよね。
***
「いよいよだな、闘士の仕上がりはどうだ?」
「申し分ありません。」
「大金を払ってるからな、そうでないと困る。」
声の主はキャシデ族の族長コルテス。
不安が顔に出ているね。
「大丈夫ですよ!タムキン兄弟の強さは
別格です。
コルテス様の出番は無いでしょう。」
兄タムシンと弟イムキン。
金さえ払えば人殺しも請け負う荒くれ者だ。
元はどこぞの国の兵士だったらしい。
武術の腕前は確かだね。
「ゴパッチの優勝だけは阻止しないとな。
奴らでさえなければ、どこでも良い。」
「準備は万端ですよ。ご心配なく。」
「あぁ。」
族長になってまだ日が浅い。
それも降って湧いたような相続だったから、
部族内での地位は安定していない。
もし今回の話しが無かったら、反乱が起きて
いたかも知れない。
運が良かった。
キャシデとゴパッチは昔から敵対している。
とっても仲が悪いんだ。
奴らに天下を取らせるわけにはいかない。
その為には他の部族とも協力しないとね。
ニバホ族とチョロキ族、そしてルー族が話に
乗って来た。
三者ともゴパッチが嫌いだ。
カラマティにも打診したけど返事は無かった。
対戦相手は当日のくじ引きで決まるけど、
四部族のどれかには当たるだろう。
経済的に裕福なキャシデが資金援助して
有力な闘士を雇って分配したんだ。
もちろんキャシデと当たった場合は、
わざと負ける約束になってるよ。
八百長だね。
あぁ、言っとくけど不正じゃ無いよ?
だって禁止して無いもの。
模擬戦争だって言ったでしょう?
同盟を組むなんて当たり前だよね。
政治力も実力の内だわさぁ~
***
「一番人気はゴパッチか、配当はどうだ?」
「へい、戻りは二割です。」
「大穴はカラマティだな。」
「へい、二百倍の配当になってますね。」
どこが勝つか?って話は大抵の場合に賭け事の
対象となる。
バフェロ族のビルがそれを見逃す筈は無いよ。
大会の開催が決まるやいなや、賭場を設けた。
まったく抜け目の無いやつだな。
この手の賭場はバフェロだけじゃ無いよ。
世界中から注目されてるからね。
各国各地で大小さまざまに開設されている。
でも見物がてらに現地で楽しみたいって
観光客が賭けるからさ。
バフェロの賭場が一番賑わってる。
やっぱり軍事力に勝るゴパッチが本命だね。
対抗はキャシデ。
バフェロ、ニバホと続いている。
ギリギリ可能性が有るかも?って事で
カラマティにも買いが入ってるんだ。
配当率で言うと、カラマティよりもっと高い
倍率の部族も在るんだけどね。
どう転んでも勝ち目は無いから無視無視~
「よし、カラマティに金貨三千枚、
ゴパッチに五百枚だ。」
「さ、三千枚!大丈夫ですかい?」
「あ?馬鹿か?お前は。」
「へ?」
「胴元は誰だ?」
「へい、ビル様です。」
「外れてもどうせ戻って来るだろうが。
配当を下げるんだよ。」
うわぁ~汚ねぇ~
胴元が賭けちゃ駄目じゃん!
大穴への賭け金が増えれば配当が下がる。
その分、他の配当が上がるから一番人気にも
ある程度の上積みをして抑制するんだよ。
もちろんバレないように代理人を使うよ。
札売り場でわざとらしく買うんだ。
何回かに分けてね。
みんなが張った賭け金の額と配当率は、
掲示板に張り出されているよ。
「あぁ!そーかぁ~!」
「少しは頭を使え。」
いやもう、はなっから優勝する気なんか
これっぽっちも無いじゃん。
でもそれなりに強い戦士を用意したから、
伯爵くらいはイケるだろうね。
それで充分って感じかな?
それよりも金だ!
これからの世の中は武力じゃねぇ!
金だ!
金が総てだぁ~~~!
ゲバゲバ!銭ゲバ!ピィ~~~!
***
「機は熟したぁ~!」
「おぉ~~~!」
「我らこそがドーモンの覇者ぞぉ~!」
「おぉ~~~!」
「パワァ~~~!」
「うおぉ~~~!」
中谷筋肉君ですっ!みたいな奴らは、
もちろんゴパッチ!
政治も金も関係ねぇ!
力だっ!力こそが正義だっ!
筋肉は裏切らないっ!
「よしっ!行くぞっ!スクワット1000回~!」
「ッシャァ~~~!」
もう好きにしろっ!




