第103話 見張塔からずっと
「お母様、少しお話があるのですが・・・」
『あら、何かしら?エミール。』
「えっと・・・バビル様の事で・・・」
『まだ子作りは早くてよ?』
「こっ!ち、違います!」
だよね~
さすがに変だと思うよね~
なんだか痩せて来てるし、目の下にクマが
どよぉ~んと滲んでいるもんね。
「どこかお加減でも悪いのかと。」
『あぁ、その事ですのね。』
「何かご存じなのですか?お母様。」
バビルの様子はCIAから報告を受けている。
バッチリ監視中!当然じゃん!
『王太子教育が厳しいようですわね。』
「まぁ、お可哀そうに・・・どうにか
出来ませんかしら?お母様。」
愛娘のお願い~
絶対にイヤとは言わない~
親馬鹿サーシア~
『ではうちで---』
「駄目ですよ!あれしきで挫けるようなら
エミールとの婚姻は御破算です!」
おぉっと~!
ルルナ厳しい~
まぁでもダモンの虎の穴はもっとエグいしね。
実際に何人かは死ぬからねぇ。
あれと比べたら軽いっちゃ軽いけどさ。
「そんな・・・ルルナ伯母様・・・」
エミールだけはルルナを伯母様って呼ぶんだ。
今世で初めて逢ったからね。
他の三姉妹は「ルルナ」って呼び捨て。
サナとジャニスは「お母はん」だね。
「本人が音を上げずに頑張っているのです。
余計な手出しは無用ですよ。
彼の誇りに傷をつけるのですか?エミール。」
「そんな!私はただ心配で・・・」
『ル、ルルナ、エミールは優しい子なのよ。』
「もちろん分かってますよサーシア。
はぁ~、仕方が無いですねぇ。
ジロキチ、エージェントにバビルのサポートを
するように指示しなさい。
内密にね。
本人に気取られてはなりませんよ。」
「チュ~!チュチュ~!」
CIAの諜報網は世界中に広がっているんだ。
ハイラムの行政にも何人も協力者が居るよ。
「ありがとう!ルルナ伯母様!大好き!」
「私も大好きですよエミール。」
『私も大好きよ、ルルナ。』
「私も大好きですよ、サーシア。」
うふっ、いつものやり取りだね~
***
「なんか最近ヒマだなぁ~」
今日の仕事は大通りの雨水溝の修理状況を
確認して報告するだけ。
工事はもう終わっている。
ちゃんとしてるかチェックするだけだから、
めっちゃ楽~。
「いいじゃねぇ~か、ノンビリやろ~ぜ。」
「そうか~?」
「あと三か所見て回って帰ろうぜ。」
「あぁ。」
総務課から保全課に所属が変わって、
随分と仕事量が減った。
しかも二人組でするから効率が良い。
休憩時間の方が多いんじゃないか?
もちろんエージェントが裏で動いたんだよ。
相棒のマルコもその一人だ。
基本的には外回りの仕事だから気を遣う事も
無いしね。
体力を温存出来る。
城に戻ってからの宿題も量が減った。
しっかりと睡眠が摂れるから体調も万全!
すこぶる調子が良い。
そうなるとバルサムは気に食わない。
なぜ配置換えをしたのか?と
問い合わせてみたものの、待てど返事は
帰って来ない。
長官を呼び出しても一向に来る様子が無い。
おかしい・・・
以前なら飛んで来たはずだ・・・
それだけでは無い。
他の者達もどこかヨソヨソしい。
「バルサム殿下、事の次第が判明致しました。」
「うむ、申せ。」
さすがに何か理由が有る筈だと部下に調べ
させていたんだ。
「噂が流れております。」
「噂?」
「はい、バビル殿下の御様子は漏れなく
大聖女様に報告がなされると。」
「身元がバレたのか?」
「はい、周知の事となっております。」
そりゃ~実は王子様で、王太子教育の一環で
働いてるなんて分かったら粗末な扱いなんて
出来ないよね。
「それと・・・」
「なんじゃ!」
「近々にラナエミール様の聖騎士に
任命されるのではないかと。」
「聖騎士に・・・」
そうなったらもう自分の出る幕は無い。
バビルの方が遥かに立場が上になる。
聖騎士の肩書は万人を納得させるだろう。
自分以外には。
そうか、皆バビルに鞍替えしたのだな・・・
よほど大きな失態でも無い限り、立太子は
揺るがないと。
大きな失態か・・・
「飲食店組合と揉めた事があったな。」
「はい、戴冠式の日で御座いました。」
「詳しく聞かせよ。」
なぁ~~~にを企んでるのかなぁ~?




