表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/147

第102話 風に吹かれて

「父上!私は反対です!あ奴は王の器では

ありませぬ!」


声を荒げて父王に詰め寄っているのは

王太子になる筈だった長男のバルサムだ。


「決して私情で申しているのではありませぬ。

バビルが憎くて言うのでもありませぬ。

あ奴の素行の悪さ、資質に難があると

申しておるのです。」


まぁ、確かに優等生では無いよなぁ。

遊んでばかりで学業をおろそかにするし、

下町の不良と徒党を組んで悪さするしね。


剣術や格闘技だけは熱心に取り組むから、

戦士としては使えるかも知れないけれど、

貴族に相応しい教養を身に付けているとは

言い難い所があるわな。


でも仲間には優しいし、義理堅いし、

ちょこっと嘘ついたりする事もあるけど

そんなに悪い奴じゃ無いよ。


「分かっておる、だが大聖女様の御命令だ。

バビルの立太子は決定事項である。

不束ふつつかであるならば鍛え直すまでの事。」


「では、バビルの教育を私にお任せ下さい。」

「そなたに?」

「はい、存分に鍛えて御覧にいれまする。」

「さようか、相分かった、手加減無用ぞ。」

「無論で御座います。」


えぇ~、それは賛成できないなぁ~

潰す気まんまんだよ?きっと。

大丈夫かなぁ~?


***


また寝てやがる・・・


いやね、婚約したんだからお互いに相手を

良く知る為にだね。

定期的に会って親睦をだね。

深めるのが宜しいのではないかと思ってだね。

週末にお茶会を開いているのだよ。


それなのにだ!


席に付いた途端に寝落ちしやがる!

イビキまでかいてよぉ!

毎回こうだよ!


「いいの?ほっといて?」

「うん、いいよ。

きっと疲れてるんだよ。

そっとしといてあげて、パイパイ。」


優しいねぇ~

さすがに最初はムッとしたんだけどね、

無防備にヨダレたらして寝てるのを見てたら

怒るのもバカバカしくなって来てね。

この頃は、なんだか可愛く思えて来ちゃった。


実はさぁ~

かなり無茶な教育を受けているんだよね。

早朝から剣術と体術の訓練でシゴかれてさ。

昼からは社会勉強だって事で役所の雑用係を

やらされてるんだ。

もちろん身分を隠して偽名で働いてるよ。

だから目一杯コキ使われてる。


日が暮れて城に戻ると、ドサッと宿題の束が

置いて在って、明日の朝に提出しろってさ。

図書室にこもって夜中までお勉強~


いやぁ~良くやるよぉ~

その内に体壊しちゃうよ?

だぶんそれが目的なんだろうけどね。


そんでもって

「この様な軟弱者は聖女様に相応しく無い。」

とかなんとか理由を付けて婚約を取り消そうと

目論んでるんだろうね。

ほんで立太子も無し。

当初の予定通りバルサムを王太子にってさ。


見えいてるなぁ~


んで何か?

「私こそ聖女様に相応しい!」

たらかんたら言うつもりか?


やめとけ~

それはやめとけ~

バルサムよ、お前は舐めてるよぉ。

サーシアの眼力を甘く見てるよぉ。

節穴みたいだけど底無しだよ?

一瞬で人を見抜くよ?


なんでバビルを大事な大事な娘の婚約者に

選んだと思う?

それはね、ロンドガリアの名誉の為に

死を覚悟したからだよ。

一切の命乞いをせずに。


それは騎士に最も必要な資質なんだよ。

己の命よりも名誉を重んじる。

忘れて無いかい?バルサム。

聖騎士王なんだよ、ロンドガリアは。


***


「んあ?あ・・・また寝ちまったか・・・」


起きたらベッドの中だった~

次の日の朝ぁ~


エミールが魔法でそっと運んだんだよ。

グースカ寝てるバビルをフワフワと浮かべて

客室の寝台まで運ぶのはいつもの事だね。


『あら、また寝ましたの?』

「えぇ、お母様、うふふ。」

『嬉しそうですわね。』

「べ!別に嬉しくなんかありませんわ!」

『しー、静かに、起きてしまいますわよ?』

「お、お母様が揶揄からかうからです・・・」


まぁ~初々(ういうい)しいこと!


「バビル様、朝食の用意が整って居ります。

皆さまもうお揃いで御座います。」


侍女が呼びに来た。

「おぉ!相分かった!すぐ参る。」

これも、いつもの事。

聖女一家と一緒に朝ご飯を食べてから帰る。


「その・・・すまなかった・・・」

「いつもの事ですわ。」

「次からはちゃんとするから!」

「それもいつもの事ですわ。」

「あいや、すまぬ・・・」


「ふふっ、ごめんなさいましね。

少し意地悪でしたわね。

お気になさらくても宜しいですわ。」


「かたじけない、ではまた週末に。」

「えぇ、お待ちしておりますわ。」


ゲートを通ってハイラムへ戻る。

閉じる間際に吹き抜けた風の中に、

彼女の香を感じた。


もっと会話すれば良かったのにと、

いつも後悔をする。


この週末の休息でなんとか持ち堪えてるけど、

その内に限界が来るよ?

どーしたもんかねぇ。


どーする?サーシア。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ