第101話 バビル
まさかあんな事になるとは思わなかった・・・
戴冠式が始まるまでは特にする事は無い。
始まっても一番端っこで跪いてるだけだ。
呼ばれたら舞台に上がって、終わったら下がる。
「王子様ねぇ~」
バイアスがサーシアの騎士となった後に
生まれた子だから自分が貴族だと言う事は
理解している。
でもそれがどんな意味を持っているのかが、
良く解らない。
「なぁ、統領と王様ってどう違うんだ?」
教育係でもある年配者の侍従に聞いてみる。
バイアスはこれまでもハイラムの統領として
国政を統率して来た。
何が変わるのだろう?
「王位を世襲する事が認められるのです。」
「族長みたいなもんか?」
「すこし違います。」
ハイラムは多民族国家なんだ。
部族ごとに族長が居てね、殆どの場合は
世襲制になってる。
年に一度、全ての族長が集まって会議をする。
統領はそこで選ばれるんだ。
この十数年はバイアスが選ばれているよ。
これからは個人では無く血統で王位を継ぐ。
もちろん精霊と聖女が認めればだけどね。
それと、王は爵位の徐爵を行う事が出来る。
王家を支える官僚組織に貴族位を授けるんだ。
それもまた世襲が許される。
いわゆる特権階級だね。
その代わりに重責が課せられるんだ。
常に結果責任を問われるよ。
失態に対しては必ず処罰が下されるんだ。
言い逃れは許されないよ。
品位を保つ為の生活水準は容認されるけど、
それも程度問題だね。
教会がバッチリ監督するから不正なんかしたら
粛清されちゃうよ。
高級官僚や高位貴族は常にCIAの監視下に
置かれる事になるんだ。
かなりキツイよ?
権力と自制心って相性が悪いからねぇ。
そこで重要になるのが思想教育なんだよ。
「経世済民・滅私奉公」
民を救済する為の政治行政を行い、
公に身を捧げて私利私欲を滅する。
なぁ~んて普通の人間に出来るわけなんか
ないじゃん。
だから「お前は尊い血筋なのだ!」って
洗脳してね。
粉骨砕身させるのよ。
はっきり言っちゃえば生贄だよね~
その代償として決定権を行使する満足感と、
誇り高き自尊心が餌として与えられるんだ。
その目的で貴族を復活させるのよん!
なりたい?
「いずれバビル様にも爵位が与えられて
一門を興す事に成ります。」
「ふぅ~ん、なんか面倒くさいな。」
そんな事よりも出店の屋台が気になって
しょ~がないよ~
大道芸人も居て楽しそうだなぁ~
あいつらも今頃はきっと・・・
末っ子の5人目ともなると大概ほったらかしで
育って来たから遊び相手は下町の悪ガキ共だ。
教会で一緒に魔法を教わっている仲間なんだ。
授業が終わってから暗くなるまで遊ぶ。
「ん?あれはカールじゃないか?」
控室の窓から広場を眺めていたら、仲間の
一人が誰かと揉めているのが見えた。
四対一だ!ヤバイかも?
「ちょっと出かけて来る!」
「いけません!お待ちください!バビル様!」
「すぐ戻るから!」
***
「この野郎!さっさと片づけろ!」
「お前に言われる筋合いは無ぇよ!
ちゃんと許可取ってやってるんだからなっ!」
「ふんっ!知った事か!食い物商売するなら
俺達に許可を取れ!クソガキがっ!」
飲食店組合の連中だ。
本来なら文句を言う資格は無いんだけどね、
縄張りってやつね。
横暴に思えるだろうけど、それなりに理由は
あるのよ。
食べ物商売で一番怖いのは食中毒でしょう?
この地域は観光客相手の商売が中心だからね。
悪い噂が立ったら客足が遠のくのよ。
だから組合が目を光らせてるの。
ヘタな商売されたら迷惑なのよね。
観光客が捨てたゴミの掃除とかも組合が
やってるの。
安心安全はタダじゃないのよ。
カールは役所の出店許可は取ったんだけど、
でも組合に挨拶しなかったのね。
知ってはいたんだけど、面倒くさかったのと
ショバ代をケチっちゃったの。
役所の方も一日だけの屋台だし、それに
まさか組合を無視するとは思わなかったから
簡易チェックだけで許可を出したのね。
まぁ~揉めるわな~
「かまわねぇ!ぶっ壊せっ!」
「何しやがるっ!やめろ~!」
「カール!」
「おぉ!バビル!手ぇ貸せ!」
「おぅよ!」
「何だお前!仲間かっ!」
「まとめてやっちまえ!」
殴り合いのケンカになった!
四対二だけどね、バビルは強いよぉ~
毎日戦闘訓練を受けているからね。
だって聖騎士の家系だもの。
ボコボコにされて組合員達は逃げて行った。
「ざまぁみろ~馬鹿野郎!」
「鼻血出てるぞ、カール。」
「あぁ、ちょっとやられた・・・」
「あいつら何だ?」
「飲食店組合のやつらだ。」
「な!それを早く言えよ!」
「言う暇なんか無かったじゃん!」
「うわ~やべぇ~」
「やっぱマズイかな?」
組合を無視した事を話した。
バビルは頭を抱えて蹲る。
街のシキタリを破ったのはこっちだ。
やべぇぞぉ~
「屋台は諦めろ、逃げるぞカール。」
「くそっ!しょーがねぇか~」
大急ぎで屋台を片付けて、二人で押して
その場を離れた。
「しばらく広場には近寄るな。」
「あぁ、そうするよ。」
「じゃぁな、俺はもう行くぞ。」
「おぅ!助かったよ!バビル。」
さて急がないと間に合わないぞ!
裏の林を突っ切って行くか!
あぁ・・・それが悲劇の・・・
いや、喜劇の始まりだ。
ブリブリブリブリブリ~~~
プゥ~~~
ん?
何の音だ?
ガサガサガサッ・・・
「うわっ!」
下半身剥き出しで白鳥に跨った美少女が居た。
(なんて美しい娘なんだろう
まるで精霊のようだ・・・)
聖女様だよぉ~~~ん
「え?」
「何してんだ?お前。こんなとこで。」
「ひっ!ひぃぃぃ・・・」
「怖がらなくても良い。俺はアベル-----」
「ぎゃあぁぁぁ~~~~~~~~!」
「どうしたの~エミール~?うわっ!痴漢!」
「い、いや、違う!」
「問答無用!チーカマビリビリ~~~!」
「ちょ、ちょっと待ってアギャァ~~~!」
「死ねやぁ!」
ってゆーわけだったのよ。




