第100話 ルルナのお仕事
結局の所、第三書庫に納められた書物は
すべて特定の研究所によって刊行された
ものであることが判明したんだ。
『トイザンス研究所・・・彼らが・・・』
「ふんっ!いかがわしい。」
ハイラム諜報部の出先機関で大人用玩具店を
装っていた「トイザンス」。
前世では何度も訪問を希望したけど、
ルルナが頑として許可を出さ無かったから、
ついぞ実現する事は無かったねぇ。
『一つの道を究めるなんて素敵ですわ!」
「ロクな道じゃありませんよっ!」
『学問に貴賤は無くてよ?』
「要否はありますよ!」
『必要ですわ!』
「何の為にですか!」
『孤独に負けない為ですわ!』
「孤独と勝負してどうするんですか!」
『孤独と戦う事しか出来ない者も居るのよ!」
もうやめて~
流れ弾が直撃するの~
とっても痛いの~
「ナイナァ~イ!」
ルルナによって厳重に封印されてしまった。
サーシアでも解けるかどうか・・・
他にはどんな研究成果が在ったのだろうか?
当然、アレに関するものも在った筈だ。
いや!それどころかコレも開発されたに
違いない!
ま、まさか・・・ソレを・・・
ソレを実現させたのか?
あぁ・・・惜しいざんす・・・
***
ルルナが今、熱心に取り組んでいるのは
白磁器の復元なんだ。
それも、かつての名窯ロイペ。
ロイヤル・テッペン・ハーゲンの復活!
基本的な製造方法は分かっているんだけどね。
なかなか上手くは行かないんだ。
職人の技術ってさ、殆どが口伝なんだよね。
師匠の技を横目で見ながら真似するのよ。
何度も失敗しながら少しずつ会得して行くの。
一応はちゃんとした理屈があるんだけど、
それよりも肌感覚の方が勝るものなのよ。
ロイペも時代が下ると魔法技術で作る様に
なって行ってね。
値段もお手頃になって買いやすくなったけど、
やっぱり違うのよね。
奇麗なだけじゃ駄目なの。
漂う気品と味わい。
微妙なゆらぎに宿る作り手の心。
それが感じられないとね~
だから製造過程で魔法は一切使わせないの。
うるさいよぉ~ルルナは~
妥協しないよ~
「お茶にしませんか?サーシア。」
『えぇ、そうですわね、ルルナ。』
残念ながらまだ紅茶は復活してないんだ。
そーゆー習慣が根付いて無いのよ。
薬草を発酵させたものはあるんだけどさぁ、
ど直球の薬湯でね。
もう何しても無駄なの。
砂糖を入れようがミルクを足そうが、
強烈に不味いっ!
だからハーブティで一服するの。
茶器はもちろんルルナのロイペコレクション。
秘密基地から持って来たやつね。
遺跡からも発掘されたりするんだけどね、
量産品ばかりでさぁ。
それに殆どは割れてるしね。
ほんっと使うのが勿体ないんだけど、
サーシアに安物の茶器は似合わないってね、
一流じゃなきゃ駄目ってルルナの拘りなのよ。
芸術品の器でお茶を嗜むサーシアを、
美術を愛でる様に眺めるのがルルナの安らぎ。
その為のロイペコレクションなのよ。
『工房の調子は如何かしら?』
「まだまだですね~
知識はあっても腕が伴っていませんね。
歴史の浅さでしょうかね~」
『私達が生きている内に出来ますの?』
「天才でも現れれば別でしょうけど、
百年は掛かるんじゃないですかね。」
『さすがに後百年は生きていませんわね。』
「そうですね、この目で見れないのは残念
ですが、私が死んだ後の工房はパイパイに
頼んでありますから大丈夫でしょう。」
『あら?パイパイに?』
「えぇ、あの子はなかなかの目利きですよ。」
『へぇ~以外ですわね~』
「中華系の魔法少女ですからね。」
『なんの関係がありますの?』
「白磁器は元々中華が本場なんですよ。
景徳鎮とかが有名ですね。」
『ふぅ~ん、そうでしたの。』
「興味が湧いて来ましたか?」
『いいえ。』
「そうですか・・・」
紙コップでも平気だよ?サーシアは。




