chapter1 ガチャ発見と自己嫌悪
なんとなくで書き出した緩い小説です。適当に続編やろうかと思ってるんで、気長によろしくです。
僕の名前は 綾見 麗愛【あやみ れいあ】…こんな一人称だが、一応華のJK?やってます。学年は2年生、委員会は生徒会に入っていて、書記次長を担当させていただいてる身です。この前は学校で前期生徒総会を開いたところ、新しいプロジェクトも生徒会として提案、新しい彼氏と交際スタートするなど、そこそこ充実した生活です。そんな僕ですが、実は少し前まで外見に大きなコンプレックスを抱えていたんです。ニキビができがちなオイリー肌、太くて乾燥しがちな脚、幾ら努力しようと治らない髪の毛の脆さなどなど、もう生きていたくないレベルでした。ですが今は、大好きな彼氏に可愛い、愛してるよ、と大切にされる毎日を送っています!え?どうやってそんな生活を手に入れたかって?
…じゃあ、君にだけ教えてあげるね。
~生徒会室~
「おつかれさま~めちゃめちゃ疲れたなあ」
生徒会室の澄んだ空気に元気な声が響き渡る。今日は新プロジェクトの提案準備をしていた。資料がかなり必要だったため、僕も体に堪えた。会長ならば尚更のことだろう。
「会長、お疲れ様です。…幸也【こうや】も」
幸也ってのは、、、僕が気になってる人だ。小、中学校とずっと同じ学校の同じクラスで仲良くやってきた。小学5年生の二学期、ひょんなことで僕の生きる理由になった、大切な人だ。好きな人に因縁つけるとフラれた時につらいとかいうけど、正直どうでもいい話だ。元から実らない恋だというならば、希望を持つことですら許されないのだから。
「おつかれ。もう仕事も終わったし、麗愛は帰っていいと思うぞ」
「え、あ、うん、ありがとう幸也も一緒に…」
「俺は結弦【ゆづる】と帰るからいいよ、じゃあな」
まあ、そりゃそうか、だって、幸也と結弦、、、幸也と会長は両想いなんだから。校内でも有名な話、周りもくっつけようと必死だ。そんな最中、僕にあの二人はどうだとか、告白の手伝いしてやれよとか、野次馬が絡んでくる。正直うっとうしい話だ。こっちの気も知らないで。
「じゃあ、さよなら」
僕は逸早く会室を出た
もう、この部屋に居たくはなかった。
もっと僕がかわいくて、愛される人間だったらよかったのに。生まれた意味が分からなくなっていく。
~帰路にて~
僕は一人、暗い夜道を歩く。あたりを照らす月明かりがきれいなまっすぐな一本道、、、だと思ってたんだけど
「ここどこ?!?!?!??!?!??!?」
気が付いたら僕は、知らない農道のようなところに出ていた。ここは確かに田舎ではあるが、こんなに暗くてたこ足のように別れた折り重なる道は、出会ったことがない。ここは確実に帰路から外れているのだが、何故だろうか、突然目の前の道が一本に溶け込んだ気がしたかと思えば、その一本道だけが赤く、めらめらと光って見えた。まるで引き寄せられるように僕は徐に歩き出した。視界が暗くなっていく。
だが、どうしよう何故か心地よい感覚なのが、逆に気持ち悪い。吐きそうだ。
視界がついに闇に落ちた。
次に視界が戻った時には、無数のガチャガチャの中にいた。暫くその中を歩いていると、桃色のガラスで作られた一段と目を引く台があった。レトロな作りで可愛いらしい丸いフォルムがなんとも好みだ。商品補充用の蓋が上部についていて、その下に丸いガラス球、その中にたくさんの景品が入っている。だが、なぜかカプセルの部分だけ霞が掛かって見えない。まあそれは気にしない。ガラス球の下部にはハンドル、代金の投入口と景品受け取り口のついたプリン型の台座がある。色は、ガラス球は上が濃い桃色で、下のほうに行くにつれて無色透明になっていく、グラデーション加工が施されている。上部の蓋とプリン型の台座は金メッキが施されていて目を引く。場所の雰囲気自体は古いにおいがするのだが、メッキが少しもはがれていない、綺麗な状態で置かれている。よほど大切にされていたのか、人気のない台なのかはわからないが、なぜか僕のことをずっと綺麗なままで待っていてくれたような気がした。うれしい気持ちが胸を走る。こんな気分になったのは久しぶりだ。
「やってみようかな、いくらだろ、、、うあ、5万円、、、ガチャにそれは、なあ、、、」
無いとは思ったのだが、財布の中を漁ってみた。
「…ウソ、ちょうどぴったり有った、、、」
やっぱりここに僕はずっと呼ばれていたんだ!はやる気持ちを抑えながら5万円分のお札を右の古びた両替機に入れ、百円玉に変えた後、震える手で小銭を落としながらようやくガチャの中に小銭を入れ終えた。口の中にたまった唾液を飲み込みながら金色に輝くハンドルを右に回す。そこに後悔はない。
「ガッチャン」
鈍いような金属のこすれる音がしたかと思うと、手のひらと同じくらいの大きいカプセルがころころとガチャの中から姿を現した。プラスチック製で、本体のガラス球と同じデザインだ。これまた愛らしいので、開けたらとっておこうと思った。早速カプセルを開ける。5万円もしたのだ、壊さないように、、、と思ったら、案外ぽこっとすぐに空いたので、少し驚いたが、細かいところまで拘っているのが分かり、うれしくなった。中から出てきたのは、何かをくるんだ薄い水色の紙。ずっしりとした重みがあり、ドキドキしながら紙を開いてみると、透明の液体が入った小瓶が出てきた。丸くてつるんとしたフォルムが目に新しい。栓の内側の方の部分は、桃色に近いようなすみれ色をしていて、金属特有の輝きを放った部分がある。さらに、外側が無色透明なガラスで厚く包まれているせいか、不純物が一切含まれていない純真無垢な天然石のような感じもしていてきれいだ。水色の包み紙をもう一度確認すると、《美人ガチャ》【このガチャは、一度つけると12時間、つまり半日程度美人に化けられる香水のガチャとなっています。ラインナップはございません。今引き当てられたその香水こそ、あなた専用に作られているものなのです。同じものは一つとして入っておりません。一つ一つ系統の違う美人に化けられるようになっています。さあ、あなたもお好みの美人に化ける、夢のようなひと時を過ごしましょう】
胡散臭い。話が曖昧だとも思った。だが、一度信じても損ではないだろうと思った。小瓶の栓を開ける。最初にふわっと香ったのは、甘い女性らしい香りだった。その後は、柑橘類の香りがした。レモンやグレープフルーツというよりかは、まだ青くて小さな、えぐみのない爽やかな蜜柑のようなにおい。心がきゅんとするようなその香りの虜になった僕は、存分に香りを楽しむと、右手首の内側に香水を付けてみた。今度は、甘い香りよりも蜜柑のような香りが際立った気がした。だが、体には何の変化もないようだった。
「やっぱりそうだよな、」
少し肩を落としながら息を吐くと、目の前に広がる光景は自宅の玄関だった。いつの間に、と思ったのだが、手の中にはあの香水瓶が入っていた。まだまだあのさわやかな香りが残っている。夢じゃなかったのが、うれしかった。家に入ってから、すぐに変化があった。
「ただいま」
「あら、おかえり、、、って、どうしたのよ、その顔!?!?!?!?!?!?!可愛くなってない!?!?!?!?!?!」
母さんに言われて、はじめて気づいた。やはり、あの香水には説明の通りの効果があったのだ。僕は取り敢えず、変に勘繰られないようにと思い、誤魔化すことにした。
「メイク頑張ってみたんだ。」
「可愛い?」
「可愛くなったわね、パパにも報告しないとね!」
「ありがと、じゃあ、部屋戻るわ」
僕は高ぶる胸を抑えながら階段を駆け上がり、焦ったように部屋の鍵をかけてクローゼットの中の鏡を引っ張り出し、自分の姿を見た。そこには見たこともない美人がいた。濡れたように艶やかなカラス色の長くて綺麗な髪、きめ細かく、蝋のように白く、それでいて頬は血色よく桃色に色づいていて、おとぎ話のお姫様のような見た目になっていた。体形は手足がすらりと長く、ほんわりと胴体の上下に膨らみがあり、お腹の辺りはするりと細いのがなんとも美しい。こうなっては、いてもたっても居られなくなり、僕は部屋のクローゼットにあった上品な薄いすみれ色のワンピースを着てみた。何時か綺麗になったらと思って買ったものだ。前に着た時は似合わなかった。それもそのはず、荒れた肌に不格好な体系では、上品な服など似合っている方がおかしいのだから。でも、今は違う。今だけは美人になっているのだから。恐る恐る姿見を覗いた。やはり、似合っていた。嬉しくなった。これなら、自分を愛してくれる人ができるはずだ!僕はうれしさのあまり飛び跳ねそうな胸を抑え、明日の学校を楽しみに眠りについた。
どうでしたでしょうか、ほかのSNSもやってます。(YOUTUBE,Twitter,Instagram,tiktok)こちらの物も、MIYAでお願いします。ではまたどうぞ。