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勇者に会いに行こう編③ 首輪付きメイド少女


『おや、そろそろルイーゼが描き終えるようですよ』


 ルイーゼの作業は思いの外、早めに終わった。


 頑張って速度重視で描いてくれたのだろうか、まさか一時間足らずで作業が終わるとは。


 どんな人物画に仕上がったのか、僕が興味深々で覗き込もうとすると、ルイーゼは両手を広げてそれを阻止する。


 ルイーゼの表情はは、どこか照れているようなそんな穴の空いた顔をしていた。


『あら、どうして見せてくれないんですかルイーゼ?』


 シロフィーはふよふよと漂いあっさりとルイーゼを通り過ぎてキャンバスを堂々と拝見する。


 幽霊はこういうときに得だ。


『あーなるほどなるほど……気持ちは分かりますけれど、どうせミャカエルが変身するわけですから……それは別にいい? 乙女心は複雑ですねぇ』


 ルイーゼがどんな絵を描いて、どんな弁明を言ったのか僕には分からないが、シロフィーは一人で勝手に納得したように僕の元へ戻ってくる。


「何だったんですか?」

『本人の希望でとりあえずは秘密です! まあ、ミャカエルの変身で分かりますよ』


 き、気になる……。


 しかし、本人の希望なら仕方がない。


 超特急で無理をして描いて貰ったものだし、これ以上の無理は非道というものだ。


「じゃあ、みゃーは見るみゃ!」


 ミャカエルは意気揚々と僕を尻目にキャンバスを見に行った。


 すごい仲間外れな気分である。


 な、何か怒らせるようなことしたかな……。


 まず初対面から女装姿だったのが駄目だったかもしれない……。


「へぇーなかなか上手みゃ。でも、びっくりするくらいモチーフがわかりやっすいみゃー」

『まあ、完全にオリジナルな人物画というのは難しいですし、先程の会話もありましたからね』


 気になりすぎる会話が目の前で繰り広げられているが、我慢我慢!


 どうやら、モデルとなる人物が存在しているようだけれど、一体誰なのだろうか。


「これなら変身できそうだみゃ! 変身魔法発動みゃ!」


 ミャカエルはキャンバスの前から物のない広い場所へと移動すると、いつも通りの煙と共に変身する。

 

 ……煙の中がどうなっているのか想像とすると、ちょっと怖いな


「みゃみゃーん! これがみゃーの新バージョン! 帰ってきた真ミャカエルパートツーツヴァイオルタみゃ!」


 ごちゃごちゃしたことを言いながら、ミャカエルは姿を表す。


 その姿は……テレサ様程度の身長で黒髪と白髪の入り混じったメイド服の少女だった。


 というか、僕のちっこい版だった。


 何故!?


『直前にしていたクロがかっこよさと可愛さと無敵さを兼ね備えているという話に引っ張られたみたいですよ』


 既にその姿をキャンバスで見て、ルイーゼから事情を聞いていたシロフィーが説明してくれる。


 ルイーゼがクライアントの要望に真摯に応える素晴らしい精神の持ち主なのはよく分かった。


 けれど、こうして小さい自分、しかもメイド姿という光景を見ると、大変に複雑な気持ちになる。


 あろうことか首輪してるしな……。


 何故だろう、首輪は変身魔法の制限と判別のためにあるはずなのに、変身された時の羞恥の度合いが上がっている気がする。


 ちくしょう、どうしてこんなことに!


 ミャカエルがいらぬことを言わなければ!


「みゃーはかなり満足みゃ! 前々から思ってたけどお前の容姿、猫っぽいみゃ」

「確かに二色で構成された色合いは猫にありがちかもですが……」

『性格は犬ですけどね』


 そもそもご主人様を伴うメイドという存在がいくらか犬によっていると思う。


 猫みたいなメイドという存在はそのちょっと生意気なギャップに萌えるところがあるかもしれない。


 今まさに目の前にいるミャカエルはメイドで猫そのものであり、結構な萌え存在かもしれなかった。


「服に別にこだわりわみゃいから、その気になれば脱ぐみゃ」

「ぜっっっっったいに止めてください!」

「みゃっはっはっは! 冗談、冗談みゃ。それくらいの人間の常識は分かってんみゃ」


 ミャカエルは目を細めて猫らしく笑うけれど、僕としては笑えないんだよ!


 ミャカエルはその気になったら本当に全裸になるくらいは厭わないイメージがある。


 そうなったらぶん殴ってでも止めなければ……。


『ルイーゼ、いつまで照れてるんですか。そりゃあかっこよく可愛い存在というオーダーで身近な人を描くのが恥ずかしい気持ちは分かりますが』


 ルイーゼは俯いて顔を赤くしている。


 いや、赤くなってはいないし、むしろ真っ白なんだけれど、僕には真っ赤に見える!


 これがルイーゼ検定一級の力だ。


『モグリもいいところじゃないですか。捏造ですよそれは』


 シロフィーはそう言うけれど、これは捏造ではない! 愛のマジックだ!


『キモいです』


 ぴしゃりと冷たく言い放たれた言葉に、僕の心臓が縮こまる。


 しかし、ルイーゼが恥ずかしがることはないと思う。

 

 そもそもは全てミャカエルの言ったことなのだから。


「ともかく、これで町に行けますね」

「よっしゃ! 勇者をぶん殴ってやるみゃ!」

「殴らないでください勇者を。というか、そういえばそういう話でしたね」


 ミャカエルの人間体を作るという話に気を取られすぎて、すっかり勇者の存在を忘れてしまっていた。


 そう、町に勇者が来ているから買い物ついでに見に行こうと言う話だった。


 ……冷静に考えると勇者をまるで観光名所かのように捉えているのが酷いな。


 テレビの撮影が来ているから観にいこうと話している田舎者みたいでもある。


 しかも、連れて行く猫はその勇者を殴ろうとしているしな……。


「勇者なんてちょちょいのちょいみゃ! みゃーは無敵みゃー!」


 何故かミャカエルが急に興奮し始めている。


 腕とかブンブン振っているし、殴る気満々すぎる。


『無敵のメイドに変身したことで意識が高揚しているようですね』


 また変身魔法の精神作用のせいか……。


 僕そのものになったわけではない上に、そもそも一度僕に変身して失敗しているはずなのだけれど、馬鹿なのでもう忘れているようだった。


 上手くこの精神の変化も利用できるようになったら、めちゃくちゃすごい魔法になりそうなんだけどなぁ……。


 いや、現状でもすごいけども。


「えっと、じゃあ、行きますよミャカエル。変なことしたら、ドゥォップドゥォップしますからね」

「なんみゃそれは!? なんか怖えみゃ!?」


 こうしてリトルクロフィーとなったミャカエルを連れて町へ繰り出す。


 いつも通り不安しかない……。

 


次回町に出る!


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