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伝説のメイド現る編③ 美少女女装メイド爆誕!


「ちょっと待った!一つ問題点がある」


 ルイーゼの冷たい視線(目はない)によって気付いてしまった懸念事項がある。


 これは、今後の進退を分ける重要案件だ。


『なんですか?』

「メイド服を着ていないと技術を受け継げないってことは、常時メイド服を着た変態として行動しないといけないけど、そんな変態を雇うやつはいなぁい!」



 すっごい馬鹿馬鹿しいが、割と深刻な問題だと思うよ僕は!


 シロフィーもこの説破(せっぱ)は予想外だったようで、目を丸くして驚いていた。


『おお…変態なりに考えるじゃないですか』


 もはや変態という評価が不動のものになりつつあるのは、大変に不愉快なのだが、訂正するのも面倒なので、受け入れて話を進める。


 変態と呼びたければ呼ぶが良い。時代を作ってきたのはいつだって変態なんだ。


「屋敷を出てから丁度良い女性を探して、メイド服を着て貰ったらどうだろう?」

『すいませーん、私、呪いの装備なもので、脱ぐことは出来ても、捨てたり譲渡することはできないんです』

「それ呪いっていうか、大切な物扱いだよ。進行不能を防ぐ為のやつ」

『それにそんなに心配しなくても、大丈夫ですよ。クロフィーはメイド服が大変お似合いです。似合いすぎて、逆にキモいです』

「キモいんじゃ駄目だよ⁉︎」

『すいません口が滑りました!実際、女性にしか見えませんよ。すごい女顔ですよね』


 確かに僕は一応は中性的な顔付きをしている。


 幼き頃には、姉と幼馴染の女によって、よく着せ替え人形の様に弄ばれていた。


 そんな幼少期がトラウマになったのか、隠すためにわざわざ前髪を伸ばして顔の影にしてるほどのコンプレックスである。


 多分、普通に顔見られてたら粗暴なやつらによってとんでもない目に合っていた可能性もあるので、正しい判断だと思う。


「人のコンプレックスに変態まで付け加えられると、さすがの僕も傷つくんだけど?」


『いえいえ、今は喜びましょう。あなたが変態で女顔だからこそ、我々はメイドとして生きていけるのです。ねっ、ルイーゼ。あなたも思いますよね?美少女ですよね、クロフィーは』


 ルイーゼは恭しく頷く。心なし笑顔に見えるので、多分嘘ではないのだろう。


 しかし何故だろうか、彼女の穴の空いた顔から、感情が読みとれる様になってきた……。


 これが愛?


『そういうわけで、男だって言わなければ大丈夫。バレませんよ。私の百八あるメイド技術(スキル)その13『隠蔽(キャク・レイル)』によって、さらにバレにくくなります』


「そのスキルメイドにいる?」


『いりますねぇ。しかも何と今なら!メイド技術その3『武芸百般(イーロイ・ロデキル)』とその20『メイド光線(メイドビーム)』が付いてきます!』


 絶対いらないと思う。


 なんだよメイド光線って。


 いらないと思うけど、でも、僕には必要だ。


 異世界から来た身としては、強力な能力が手に入るのは、変態の汚名を被るリスクを考えても、なお魅力的で、喉から千手観音が出るほど欲しい。


 断る理由は変態と呼ばれる以外にないように思える。


「うんじゃあ、よろしく頼むよ」


 結局、ほとんど考えずに受け入れてしまった。


 実際のところ、今の僕に選択肢なんてないのだから、仕方ないのだけれど。


『では、決まりってことで。ひとまず、その鬱陶しい前髪を切っちゃいましょうか』

「すまないけど、この話はなかったことに……」

『なりません。どんだけ前髪が好きなんですか。ルイーゼ、ばっさりいっちゃってください』


 気が付けば、どこからか鋏を取り出したルイーゼがすぐ横に迫ってきていた。


 もはや、僕の前髪の命は風前の灯火で、髪の毛ほどの活路もない。


「せめて、半分!半分だけのこしてくれ!」

『いやいや、半分だけ残したら変すぎるでしょ。全部いっちゃった方がいいんですこういうのは』

「僕の世界では流行ってるんだよ!大丈夫!僕を信じてくれ!」

『あなたの世界?』


 あまりの危機的状況につい口が滑ってしまったが、そういえば、異世界から来た話をしていなかった。


 しかし、いろいろと面倒な説明なので、勝手に心を読んで察してくれないだろうか。


『思考を読めるのは表面的なものだけですよ。うーん、よく分かりませんが、その辺は後で聞くとして、ルイーゼ。クロフィーがそこまで言うんじゃ仕方ありません。試しに半分でやってみましょうか』


 ルイーゼは従順に頷き、僕を鏡の前に連れ出すと、伸び放題だった髪に躊躇なくハサミを入れていった。


 一瞬、美容師さんと何とか話したくない癖で寝たフリをしそうになるが、そういう場面ではないので、我慢する。


 サクサクと切り進められて、気が付けば、鏡には片目隠れのメイドさんが映し出されていた。


 しかも、髪の一部が白くなってしまっている。


 えっ、いつのまに⁉︎白髪のメイドさんに取り憑かれたから⁉︎


 なんか心なしロングヘアーにもなってない!?


『私とのメイド同化、略してメイ同化が進んでいるのでしょう』

「メイ同化⁉︎自我とか大丈夫⁉︎」

『あくまで見た目だけです。安心してください』


 全く安心できない……。


 けどもう脱ぐわけにもいかないしな……。


 メイドって怖いな……。


 しかし、この神秘的な髪色のせいなのか、同化とやらでいくらか容姿が変化したせいなのか、元々女顔の僕はとんでもない美少女に進化していた。


 我ながら好みのタイプだ。結婚してくれないかな。


『なるほどー!なかなかアリじゃないですか。これは新時代のファッションの兆しを感じます』

「自分で提案してなんだけど、メイドがこんな奇抜な容姿で大丈夫かな……?」

『私たちが目指してるのは、ただのメイドではなく、伝説のメイドですので。それになんだかんだ言っても、美人なメイドってのは、主人にとっては嬉しいものですよ』


 確かに見栄の為に置いているのであれば、メイドは美人であれば美人であるほど、効果的であると言えるかもしれない。

 

 男の身としては、中々つらいものがあるが……いや、女の身でも普通につらいかもしれないな。


『ともかく、これで契約は成立しました!これから貴方は完全無欠の美少女(男)メイドとしてやっていくのです!』

 

 改めて言葉にされると、なかなか辛いものがあるが、仕方ない。

 

 奴隷同然の暮らしよりは、メイドの方が百倍増しだ。


「うん、これからよろしくね。シロフィー」

『よろしくお願いしますクロフィー、いやさクロ!』

「どっちも違うからね?」


 でも、まあ、この世界で元の名前のままだと、違和感があるのも事実だろう。


 暫くは、彼女のいう名前で過ごしてみるとしよう。


 僕とシロフィーは冷たい握手を交わした。


 普通に触れるんだなこの幽霊。


 僕に取り憑いてるから僕は触れるとか?


「それじゃあ、さっそく屋敷を脱出しようよ。正直、ここはちょっとトラウマになってしまって、あんまり長くいたくないんだよね」


 お忘れかもしれないけど、少し前まで命の危機だった場所である。


『何をおっしゃいます。なんの知識もなくメイドとして外に出るおつもりですか?ここからはお勉強の時間ですよ』

「えー」


 言われてみれば、確かにメイドの技術を持っていようとこの世界の知識は皆無なのだから、そのまま外に出てもただの不審者だ。


 しかし、勉強という単語を聞くだけでちょっと嫌気が差してしまうのは僕が劣等生だからだろうか。


『常識なくしてメイドなしです。ビシビシ行きますよー!』


 こうしてメイド生活初日は先輩からの教育で始まった。


 なんかバイトの初日みたいだ……。 



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