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屋敷ダンジョン編④ お猫様落ちる


「魔法に不可能はない」


 テレサ様は僕の持っていた魔石詰め合わせバッグを受け取ると、中身にいっぱいに詰まった魔石を取り出し握りしめる。


 すると、魔石が離散し、霧のように周囲に溶けていった。


 これが世界の恒常性を下げるというやつだろうか。


 魔法を使いやすく、世界を改変しやすくするという。


 いくつかの魔石を世界に溶かしたテレサ様は、バッグの横に詰めていたヌイグルミを取り出す。


 前に見たクマも含め、新たにキツネとタヌキが加わっている。


 森の仲間たちって感じだ。

 

 そんなアニマルズの影が、揺れるように広がって行き、そして具現化していく。


 黒い影が三体並ぶと、今度は闇の森の仲間たちといった雰囲気になる。

 

 前回ほどの大きさはないが、その分は数でカバーか。

 

 テレサ様は三体を同時に操り、囲むようにして時間差で猫に、ミャカエルに襲いかかる!


「みゅだみゅだー!」


 ミャカエルは再び爪を振りまわし応戦するが、影は切っても切ってもくっついて、まるで意味をなさない。


 影魔法に切断は無意味なのか!


 もしかすると、メイド光線によって弱らせ空に吹っ飛ばしたのは、かなりの好手だったのかもしれない。


 メイドに刀という謎親和性コンボで挑んでいたら、結構大変だったかも。


「みゃにー⁉︎」

「このまま囲んでフルボッコにする。これぞ最強の戦術」


 囲んで殴る。


 単純かつ非道だが、事実として強い。


 色々と身内のゴタゴタのことでその名声を下げるものの、実力はマジですごかったと噂の、あの新撰組もやっていたと聞く。


 そうじゃなくても包囲殲滅は戦の基本。


 テレサ様はバトルにおいてはリアリストだった。


「卑怯すぎんみゃ!ええい、これでどうみゃ!」


 ミャカエルはそう叫ぶと、一瞬の残像を残し、消えるようにして空を舞った。


 僕はメイド視力により見えているが、テレサ様は見えていない!


 本体をそのものを狙いに行ったんだ。


 何かを使役する相手に、非力な本体狙いは最善の策のように思える。


 この猫、賢い。


 馬鹿っぽい喋り方なのに。


 しかし、黙って見ているわけにもいかないので、飛んでくる猫に合わせて僕も飛び、ミャカエルをバレーボールのように叩き落とした。


「み゛ゃー⁉︎⁉︎⁉︎」


 ミャカエルはそのまま錐揉み回転しつつ高速で落下し、床に埋まるようにして激突、そしてそのままうごかなくなった。


 ……やりすぎたかもしれない。


『今のはメイド技術その62〝はたき落とし〟ですね。あれを食らっては、あの猫、もう生きてはいないでしょう』


 そこまで⁉︎

 

 しかも、あんな雑な打ち落としに名前まであるの?


『メイドとはたきには切っても切れない関係がありますからね。ええ、テレサ様の影魔法のようにです!』


 ああ、なるほど……とは納得できないよ!


「クロ……私がやるっていった」


 恨みがましい声が部屋に響く。


 うっ、テレサ様の鋭い視線が。


 に、睨んでいても可愛い……可愛いだけに罪悪感が。


「で、でも、テレサ様の危険を無視するわけには……」

「勿論、私も死にたいわけじゃない。けど、これは私が魔術師として大成するために、必要なことだから」


 ごもっともな意見にただ頭を垂れる。


「それに私も絡めてやっつけないと、あんまり意味がない。ダンジョンの主を魔術師が倒すことで、相手の敗北心から支配権を強制的に移すから」 


 なるほどー!これは大失敗!


「申し訳ありませんでした!」

 

 深々と頭を下げると、テレサ様はそんな僕の頭を撫でて言った。


「ううん、助けてくれたこと自体は、超嬉しかった……ありがと」


 テレサ様は、珍しく顔を赤らめていた。


 いや、顔をずっとフードで隠していただけで、案外いつもそうだったのかもしれない。


「はい、それで、その、どうします?」


 床に埋まったミャカエルは死んだようにその動きを止めている。


 ほ、本当に死んじゃったのかな……。


「ダンジョンの主はダンジョン内では割と死なない。起き上がるのを待とう」

「起き上がるのを待ってどうするんですか?」

「起き上がるのを待って……もう一回戦う」


 どうやらミャカエルは床に叩きつけられ大ダメージを負った上に、再度勝負を挑まれるらしい。


 リスキルかな?


 そして、ミャカエルを眺めながらテレサ様が体操座りで待つこと30分。


 ミャカエルが目を覚ました。


「いやー、悪い夢を見たみゃー。なんか高速で動くメイドに、虫みたいに叩かれる夢だったみゃ」


 すいません……それ現実です。


「猫さん、もう一回勝負しよう」


 テレサ様が真っ直ぐにそう言うと、流石にミャカエルは慌てた。


「みゃっ⁉︎えっ、戦う流れみゃ⁉︎いや、みゃ、みゃー調子わるいから」

「じゃあ、何時ならいい?」

「時間置いてくれれば、みゃんでもいいけど……えっ、待ってくれるのかみゃ?」


 ミャカエルは驚いてその猫目を丸くしている。


 テレサ様、随分とお優しい


 戦法はリアリストでも、姿勢は紳士的なのだろうか。


「その方が貴方、屈辱的でしょ?」


 非常に蔑んだ顔と強烈な言葉を言い残して、テレサ様はその場を去った。


 後にはミャカエルの悔しそうな叫び声が響くだけだった。


 ダンジョン乗っ取りの為とはいえ、かなりのどSだ。


 こうして、第一回目のダンジョン探索はボスを発見して撤退という形になった。


 僕のミスのせいだけど、帰り際、何故かテレサ様は嬉しそうだった。


「クロ、私の顔見ても驚かないんだ」


 テレサ様はそう言って、にこやかに笑った。


 そう、全裸になった時から混乱して、意識しないようにしていたが、テレサ様の顔は特徴的だった。


 想像通りの愛らしい顔だちはまあ当然なのでおいておくとして、赤い目に、赤い髪、そして尖った耳。


 とてもじゃないが、メアリさんの子供とも、ロザ様の妹とも思えない。


 けれど、別にそれはどうでもいいことだった。


 だって、全裸の方で動揺してましたからね!!!!


『いばらんでください。まあ、私も同意見なんですが』


 最低なメイドコンビだった。


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