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次の人生も女神嫁と共に  作者: 八木杉 ケイシ
8/42

鳥…ではない

 朝日が昇り精霊が作ってくれた寝床から這い出る

 軽く首を動かし昨日自分が耕した大地を見渡した後、右手を額に当て一言呟く


「やり過ぎた…ワシはバカか」


 半径10㎞、300km²以上の畑など地球はおろかこの異世界にも存在しない

 極論、花代の木を植える場所周辺のみを耕せば良かった

 それをここまで広範囲でした理由、福太郎は高揚していたのだ

 体は若返ったが心は92歳のおじいちゃんである

 自由に動く体、痛みなく動く体、いくら欲しても手に入らなかった物を与えられ、更には不思議な力も使える

 これ等を持ってもう一度農業が出来る。否が応にも気分は高揚しようというものだ

 そんな心理状態のまま力を使った結果、ここまで広大な農地が出来てしまった

 つまり、テンション上がってやり過ぎたのである


(こんなに耕してワシは何をする気なんじゃ、一人じゃ管理の仕様が無いじゃろ…いや、昨日の精霊の子の様に植物を操れるなら管理できるか…?いやいや、管理出来たとして何を作りどこに卸すんじゃ)


 福太郎が自問自答していると地面から岩で出来たテーブルと木で出来た椅子が生えてきた


(王様)(食べ物!)(お水!)(ちゃんと沸かした!)(ちゃんと冷ました!)


 見ればテーブルの上にはコップに注がれた白湯とバナナに似た形の赤い果実が乗っていた

 コップに関しては小さく持ちやすくなっており、1日にしてデザインに上達が見られていた


「おお、ありがとう。頂かせてもらうよ」


 果実の皮を剥き食べる

 勿論見たこともない果実だがこの子達が自分に有害な物を出さない、と言う信用は既にしている

 果実は見た目に反して梨の様なさっぱりとした味で美味しかった


「ちゃんちゃんちゃららら♪ちゃんちゃんちゃららら♪」


 健康だった時の日課としていたラジオ体操を自ら口ずさみ行った後、水球を出し顔を洗い風を起こして乾かす。

 この世界にて最高位の精霊の力はずいぶんと庶民的に使われていく


(…耕しすぎたからって何じゃ、すぐに使わなくても良いじゃないか)


 自分の歯でご飯を食べ、体を動かす

 その喜びを噛み締めながら、悩み事を前向きに後回しにする


(今のワシには時間がある、急ぐ必要はない)


 後回しに出来る、そんな事すら幸せだった


「それじゃ行ってきます」

(行ってらっしゃい)(楽しみにしててね)(がんばるよ)(まかせて)(早すぎちゃだめ)


 福太郎は昨日、風ソナーで感知した鳥の所へ行くので精霊の子達を誘ってみたが何かやることがあるらしく断られていた

 どうも福太郎の為になる事らしいので帰ってくるのが楽しみだ

 福太郎が鳥の所に行く理由、それは卵のからとフンである

 卵のからを砕けば有機肥料となる。精霊としての力を使い土に栄養素を加えはしたがそれのみに頼らず、有機肥料も手に入れようという考えだ

 そしてフン、こちらも有機肥料としても使えるが目的はフンの中に入っているかもしれない植物の種を探すこと

 果実を食べた際に種子を飲み込み、それをフンと共に排出する

 その種を手に入れようというのだ

 芽が出て育っているならそれも良し、それを移植するだけだ

 ただこの岩だらけの場所では望み薄だろう


 高速空中走行を行い鳥の巣へ向かう、速度に慣れてきたのか今度はきちんと目的地前で止まる

 近くの岩影に体を隠しながら鳥の巣を覗く

 大きな岩の下がえぐれておりそこを屋根代わりにして巣を作っている


(…なにかおかしい)


 鷲や鷹の様な猛禽類が巣の中で羽を広げ、毛繕いをしているのだがとにかく大きい

 頭は福太郎程度なら丸のみしてしまいそうなほど、広げた羽は5メートル以上ありそうだ


(……怖い、逃げよう)


 今まで農家として害獣、害鳥と戦ってきたがこんな大きさは想定外だ

 踵を返し帰ろうとしたがもう遅かった


「──!!」


 福太郎に気付き勢いよく飛び出し巣の前に陣取る

 その見事な四肢で地面をつかみ今にも飛びかかりそうな程だ

 そう、羽とは別に四肢があるのだ

 鷲の頭と羽、下半身は獅子


「キィーー!!」


 グリフォンだ

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