やっと転生?
「それでこれからわしはどうなるんじゃ?」
お通夜の準備を始めた家族達を眺めながら福太郎が女神に問う
「閻魔様の所に向かうんじゃろうか?」
「それも出来る、福ちゃんがそれを願うなら私が最後までエスコートする。ただ…私から一つ提案があるの、出来れば聞いて欲しいな」
女神が指をピンと立て笑みを浮かべる
「福ちゃんに別の世界で生まれ変わって欲しいの。そこは私が一から育てた世界。全ての生命が私から生み出された世界」
女神の顔が少し赤らむ、これから言う事を恥ずかしがるかの様に、緊張するかの様に
「…そこで、そこでね?もう一度…今度は何の隠し事もない私と、私自身とけっこ…」
「待つんじゃ」
福太郎が話を遮った、お互いの話は最後まで聞く、を暗黙の了解としていた二人にとってこれは珍しい事だった
「話はまだよく分からん、後でもう一度詳しく聞く。そして時代錯誤と言われるかもしれん。もうそんな時代じゃないんじゃろう。それでもその言葉は男から…ワシから言うべきじゃと思っとる」
女神の手を取り、真っ正面から見つめて告げる
「もう一度、新しい世界でも私と夫婦になって頂けますか?」
「…っはい!喜んで!」
その顔はどんな花でも羨むほどの満開の笑顔だった
二人は愛の告白の余韻が冷めるまでしばしイチャイチャした後、話を元に戻した
「それでワシは生まれ変わるんか?」
「うん、そうして欲しいなって思ってる。ちゃんと今の記憶もそのままだよ」
「で、生まれ変わるのは別の世界…と」
「うん、私が神様として崇められてる。さっきも言ったけど私が全部の生き物創ったからね」
「どんな所なんじゃ?」
「そうだね~、一言で言えばファンタジーな世界だよ。こっちで言う人間は居ない。でもその代わりにドワーフやエルフ、ドラゴンやグリフォンみたいな空想上の生き物が沢山いる」
「……指◯物語やハ◯ー・◯ッターみたいな感じか?」
「そうそう!魔法とかもあるよ」
話は逸れるが八重樫家はド田舎である。周りに娯楽施設等何もない。孫が小さな時はそれでも良かった。野山や小川を楽しんでくれた。しかし、大きくなればそうもいかない。せっかく来てくれた孫達が暇をもて余している事に福太郎は危機感を覚えた。
(孫達が来てくれなくなる!)
その対策として福太郎は多数の書籍、動画配信サービス、ゲーム機等を揃える事で少しでも気を引こうとした
その結果、孫達は喜び福太郎はフィクションの知識が増大。
その為、ファンタジー用語も受け止める事ができた。
「ただ少し問題があってね?ちょっと前に戦争があって私…切り倒されちゃってるの」
「そ…そんな危険な世界なのか?」
「もう終わってるからそんなに危なくないよ。それにちゃんと危険に対応出来るだけの力をあげるよ?」
「何でわざわざそんな世界なんじゃ?神様を切り倒すような恩知らずの世界に…」
自分の妻の分身たる木を切り倒す世界に既に好感は抱いていない
「別に切り倒された事については別に恨んだりしてないよ。親離れは生き物の常だよ。ただまだ不安定だからもう少し見ていたいの」
「見ていたいってもう生えて無いんじゃろ?」
「だから福ちゃんが転生してくれるなら一緒に私の種もお願いしようかなって」
「自分で植えれば良いんじゃないか?」
「……それがね?実は…」
女神が目をそらしながら気まずそうに言う
「私、最初のうちは一緒にいられないの…やる事が溜まってて…」
「…なに?」






