死後の再開
何話か連続で投稿したと思います
「川は川でも天の川と言った感じじゃのう」
仏教徒である福太郎は死後は当然三途の川に行くと思っていた
しかし今居るところは満点の星空、そこに光輝く一本の道といった風情である
(ここを進めばええんじゃろうか)
輝く道に歩を進める、自然と笑みが零れていた
(体が軽い、目もよく見える、健康な体とはこれほど良いものだったか)
進んだ先に一人の女性が立っているのが見えた
絶世の美女と呼んで差し支え無いだろう、その美しさは満開の桜を連想させる
もし街中を歩こう物なら男女問わず視線を惹き付ける事は間違い無い
そんな美女が微笑みを称え、道に立っている理由は一つだ
福太郎をずっと待っていたのだ
そんな美女に若い頃の福太郎なら声をかける所か近づく事すら出来なかっただろう
しかし、福太郎は気負い無く話しかける
歳を経たからだけでは無い
良く知った相手だ、緊張する必要など無い
「美人になったなぁ、あの世ではそんなに変わるのか?わしもいけめんになるんじゃろうか」
美女は首を振りながら答える、揺れる髪すら美しかった
「ううん、本当の姿に戻ったって感じかな」
「ふぅむ・・・何で別の姿だったんじゃ?」
「この姿だと福ちゃんがまともに話も出来ないって分かってたからだよ」
福太郎は思わず苦笑した
「違いない、こんな美女がお見合いに来たら一言も話せんかったじゃろう」
「でしょう?」
「だが勘違いせんでもらおうか。いつもの姿も美人であったし、わしはドキドキしっぱしじゃったぞ」
「知ってる、私も福ちゃんの隣でいつもドキドキしてたよ」
「知っておる」
この程度の睦言、この夫婦にとっては日常茶飯事だった
仲睦まじさここに極まれり
そして二人の間に少しの沈黙が訪れ
「・・・お疲れ様、福ちゃん」
「少し待たせてしまったな、花代」
二人はお互いを抱き締めた
存分に再開の喜びを体で表した後、花代が切り出した
「でも良く判ったね?この姿、面影とか無いでしょ?」
その場でくるりと一回転する、そんな動作さえ舞いの様に美しかった
「何十年も連れ添った最愛の人じゃ、分からない訳がない」
少しドヤ顔だ
そしてようやく、むしろ最初に聞くべき事を口にした
「で、何で本当の姿とかあるんじゃ?」
「・・・今から色々衝撃的な事を言うけど頑張って受け止めてね」
花代は神妙面持ちで語りだした
「実は私は神様で、庭の木は私の分身で、花代は更にその分身です」
「・・・なるほど」
したり顔で頷いてはいるが、反射的に返事したに過ぎない
享年92歳のおじいちゃんには当然理解しきれていなかった