7話
「よい、通せ」
「なりませぬ! 国王陛下っ! 人族に頼るなど! 何をされるかーー」
「構わぬ、やれることはもう全て尽くした。それに、私が死ねばこの里も時期に滅びる」
エルフの里はエルフの王家が結界をはることで森の中でありながら安全を確保してきた。
妖精魔法 第三魔術 幻影結界ーー通称、結界。
行使すれば外敵から見えなくなるだけでなく里の入り口からしか入れない。
しかも周囲に魔獣を寄せつけず感知されない。
1度の発動で1年ほど持つが術師が亡くなれば消滅してしまう。
「里の周りに魔獣が出現する頻度も多くなってきた。結界の効力が弱まっているのだろう。私の命ももう風前の灯火。まさかこのような形で自分の余命を知ることになるとはな......ごほッ」
「国王......」
そば付きの執事が悲しそうに俯く。
「もっとは早く手を取り合うべきだったのかもしれないな……」
ベットに横たわりながら考える。
結界は王家しか行使することができない。
スキルには分野が存在し、治癒魔法や水魔法、火魔法と無数に存在する。
いくら魔力量が多くても適正がなければ第一のスキルすら発動しない。
それは血筋など様々な条件が存在するが幻影結界が属する妖精魔法を扱えるのはこれまで王家のみ。
恐らくこの魔法は親が扱えなければ子も扱えないというように継承されていく継承系の魔法なのだろう。
王家のみが扱えるスキル妖精魔法。
それ故に王家は皆から大切にされ愛されてきた。
「せめてエリーが大きくなるまで生きれれば......」
エリーの魔力量ではまだ第三以上のスキルは行使できない。
「すべて私の責任だ......」
コンコン
「失礼致します。人族の少年とエリーお嬢様をお連れしました。」
「ご苦労」
扉が開き入ってきたのは王家の世話役のメイド。
その後ろに娘のエリーと白髪の少年。
あの少年がガラムコブラの毒を一瞬で治したという......。
微かな希望が頭をよぎる。
「はぁ。また抜け出したのかエリー」
「ご、ごめんなさい。お、お花を探しに」
「......生命の花か」
生命の花ーー緑色に輝きどんな傷や病でも直してしまう幻の花。
遠い昔、長寿で子ができにくいエルフのためにと里を訪れた賢者が渡したという幻の花。
1000年ほど前に沢山受け取ったはずの花ももう残っていない。
エルフは寿命が長いが当然、怪我もするし病気や風邪もひく。
なのでその花はエルフたちにとって命綱のようなものだった。
だが、それももうない。
花が尽き王家の者が亡くなることも増えていきとうとう残されたのは私と娘のエリーのみ。
「そ、それにね、この人ならお父さんの病気を直せると思うの!」
エリーがそういい私は緊張した面持ちの少年の方を向き声をかける。
「君が」
エルフは病気や怪我に敏感。故に回復薬や治癒魔法は発展している。
里でもっとも優秀な治癒師が使えるのは第五のスキル。
私を治すということはそれ以上のスキルを扱わなければならない。
とても目の前の、それに人族の子が治せるなど到底信じられなかった。
一縷の望みに託すしかないか。
「名前はなんという?」
「る、ルイです!」
「ルイくんか。では、お願いできるかね。」
「はい!」
そう言い。少年が私の頭の上に手を当てる。
そしてその手から緑の光が放たれた。
ーー暖かい。この光は。この暖かさ。どこかで。。。