6話
「本当にこんなとこに里なんてあんのかよ」
「兄様は少し黙ってて。……ゴメンねうるさくて」
「い、いえ! もう少しで着きますから!」
先頭に立つのはエルフの少女。名前はエリー。
年齢は恐らく僕たちと同じくらいに見える。
なんでもエリーの父が不治の病で倒れてしまい昨日の僕たちの様子を見ていて力を貸して欲しいそうだ。
森の奥深くにエルフの里があるらしく子供だけでは危険なので断ろうとしたら、
「おどうしゃんをだずげでぐだざいいいぃいい」
と号泣された……。
渋々承諾し現在に至る。
(ガサッ ゴソッ)
「ん?」
「どうした~ルイ」
「兄様ッ! 後ろ!」
「うわあっ!」
飛びかかってきた何かを兄様が間一髪で避ける。
「あれはガルムコブラですッ! なんでこんなところに?!」
そこには紫色をした細長い蛇のような生物。
長さ2メートルほどか。蛇と決定的に違うのは額に3つ目の目があることだ。
これはおそらく
「魔獣だな」
兄様がそう答える。
エリーを後ろに隠す形で僕と兄様が木剣を構える。
やっぱり父様か大人の人を連れてくるべきだったか。
後悔が頭をよぎる。
「シャァァァァ-」
「里の入り口はすぐそこです! 走りましょう!」
「分かった! 兄様!」
「ああっ!」
3人で森の中を駆け抜ける。
3つ目の蛇もどきが逃すものかと追ってくる。
「ハァハァっ。あの蛇めちゃくちゃはえーぞ!」
「あっ、あの木の間です!」
エリーが指差した場所にはなにもないように見える。
だが目を凝らすと微かに空間が歪んでいた。
その時--
バシャ
「ぐぅッ」
「兄様!」
歪んでる空間に入る直前、ガルムコブラが吐き出した紫色の液体が兄様の右足にかかってしまった。
「構うな飛び込め!」
僕達3人は無我夢中で歪んでる空間に飛び込んだ。
バサっ
「ハァハァ......村には結界が貼ってあるので魔獣は入って来れないはずです。」
その言葉に僕は安堵する。
「助かった」
「なんだ、、ってお嬢様じゃないですか!また城を抜け出して......って人族!」
門番らしき男性のエルフが僕達を見つけて驚いた様子でこちらに駆け寄ってくる。
「サテンさんこの人たちは私が連れてきた客人です!
それよりこの方がガラムコブラに毒をかけられて......」
(そうだ! 兄様ッ)
兄様の方を見ると右足のつけね紫色に変色し苦しそうにしている。
「結界の周りにガラムコブラが?! やはり結界の効果が弱まっているのか......。話は後からゆっくり聞く。すぐに回復スキルの使えるものを呼んでくる!」
「僕が治します!」
そう言ってエルフの男性を呼び止める。
「治しますってガラムコブラの毒は第二以上のスキルでしか治せないぞ。そんなものを人間のこどもが治せるわけ--」
エルフの男性の言葉を遮り兄様の足に手を当てた。