2話
話は少し過去に戻り、黒い帽子を被った背の高い男が訪れる1年前。
それは僕、ルイ・テーリッドが不思議な力を授かった出来事の話。
母様は小さい頃から目が見えなかった。
生まれつきというわけではなく幼少の頃に森で魔獣に襲われ目を怪我したそうだ。
「私は目が見えなくても寂しくないのよ。あなたたちがそばにいてくれるからね。ふふっ」
母様は目が不自由なことなど気にしてないというようにいつも笑っている。僕はそんな優しい母様が大好きだった。
「でもね、ジンとルイの顔が見れないのは少し残念かな...」
そう言って母様は少し寂しそうにし、僕たちの顔に手を添える。
「くすぐったいよ母様!」
青髪の少年ジンが照れたようにに身をよじる。
「じゃあ僕が母様の目が治るように毎日神様にお祈りするね!」
「ずるいぞルイ!じゃあ俺は父様より強い最強の剣士になって母様を守る!」
兄様が僕に対抗してくる。兄様はほんと負けず嫌いだな。
「父様に勝つなんて無理に決まってるよ」
僕がそう言うと兄様は顔真っ赤にしてやってみなくちゃわからないと抵抗してくる。
「ふふっ、ありがと二人とも...」
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その日から僕は寝る前、神様に
「母様の目を治してくだい」
と毎日お願いし続けた。
そんなある日、夢の中で透き通るような女性の声が聞こえた。
『私の名は***。あなたに力を与えます』
だれ?
とても不思議な声。そして聞いていてとても心地のいい声だった。
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夢で声が聞こえた翌朝。
あの声はなんだったんだろう...
夢なのにはっきりと耳に残っている声。
聞き覚えのない声、しかし決して嫌な感じはしなかった。
力を与えるってなんだったんだろ。もしかして新しいスキルかもしれない。
スキルというのは体内の魔力を使い火や水を発生させたり、身体を強化したりする魔法のようなもののことだ。
「...イ、ルイ!聞いてるのかルイ!」
朝食を食べながら考え事をしていると隣から声が聞こえた。
「...っと、なに?兄様」
「今日は西の森で剣の練習に行こうって話だよ」
西の森か、もしかしたら剣術のスキルを授かったかもしれない。
スキルを試すにはちょうどいいな。
「日が暮れる前には帰ってくるのよ」
「最近だと西の森でも魔物が出るらしいからなあんまり奥に行くんじゃないぞ」
「「はーい」」
母様と父様を家に残し僕たち二人の兄弟は森へと駆け出した。