1話
とある森に二つの影があった。
「早くこい!ルイ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!兄様...」
青い髪の毛の活発な少年の名前はジン・テーリッド。年齢は9。
そのあとを追いかける息絶えだえの白髪の少年の名はルイ・テーリッド。年齢は8。ジンの1つ下である。
二人の手には木刀が握られている。
「なに弱音吐いてんだよ。今日こそ俺が勝つからな!」
「兄様はほんと諦めが悪いよね...ハァハァ」
「弟よいい事を教えてやる。諦めなければまだ負けていないのだよ、ハッハッハー」
「それすごい屁理屈じゃない?まぁ今日も勝たせてもらうけどね」
弟のルイはセンスがいい。物覚えが早い少年で何事もそつなくこなす。
しかし、
「くッ」
(兄様の剣、最近また早くなってる気がする)
最初に二人の兄弟が森に訪れたの1年前。
最初の頃はルイの圧勝だった。
しかし、兄のジンは1年間毎日諦めることなくルイに挑んでいき最近ではジンの勝ちそうになることが増えてきた。
それは兄としてのプライドがそうさせるのか、はたまたただの負けず嫌いなのか。
二人の少年が木刀を打ち合ってしばらく経つと茂みから人の気配がした。
「やっぱりここにいた。二人ともまだやってるの?日も暮れたし早く帰らないとだめだよ」
木の影から1人の少女が姿を現した。
髪は美しい金色で目は透き通るような青色、そして耳が尖っている。エルフだ。
エルフと人間は仲が悪い。
それは昔人間たちがエルフたちを奴隷にしていたという過去があるからである。
しかしとある出来事があり少年たちとエルフの少女にはわだかまりはなくいつも3人で遊ぶほど仲がいい。
「エリーじゃないか...そうだな日も暮れてきたしそろそろ帰るかルイ」
「うん」
「明日はわたしもいれてね!」
「おう、わかったよ!」
「またね、エリー!」
◇◇◇
「「ただいま母様!」」
「お帰りルイ、ジン」
出迎えてくれたのはルイと同じ白い髪の長い綺麗な女性、ルイとジンの母親である。
名前はマリン・テーリッド。
「父様は今日も遅いの?」
父の名前はラウス・テーリッド。
この村1番の実力者で村の門番をしている。
といっても村の人口は100人ほどの小さい村なのだが。
「そうね、今日も遅くなるって言ってたわ」
トントン
不意に家の扉を叩く音が聞こえた。
「あら?こんな時間に誰かしら、はーい」
日暮れ時に訪ねてくる人なんてだれだろうと疑問に思いルイは扉の先を見つめた。
「どうも、こんにちは。ここに何でも治すことのできる少年がいると聞いてね。」
立っていたのは背が高く黒い帽子に長い黒髪、そして吊り上がった目が特徴的な背の高い男だった。
後にこの時のことをルイはとても後悔することになる。